2017年4月24日月曜日

ディア・ハンター



ディア・ハンター 〔BLU-RAY DISC〕

1978年作品

ロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、ジョン・サヴェージ、ジョン・カザール、メリル・ストリープ

あらすじ:小さな村にベトナム戦争が与えた大きな影響。



ピッツバーグ郊外の小さな町クレアトン。
同じ製鉄所で働く仲間、マイケル(ロバート・デ・ニーロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーブン(ジョン・サヴェージ)が徴兵でベトナムへ行く事になる。

スティーブンはそのパーティーで同時に結婚式も挙げていた。
そんなお祝いムードに感化されたのか、ニックもリンダ(メリル・ストリープ)にプロポーズし、受け入れられる。

そして、最後の鹿狩りに行くが、中でも一番男であるという事に拘っていたマイケルは、男らしく鹿を仕留めてご満悦だった。

その後、戦場で3人は再会するが、揃って捕虜となってしまう。
捕虜を遊び道具としていたベトナム兵は、ロシアンルーレットを強要して苦しませて楽しんでいた。
ただでさえ戦場、捕虜という極限状態の中での、ロシアンルーレットは、見ているだけでも精神を疲労させる。
まして、銃声を耳にしたら……。
だが、マイケルは冷静にこれを好機と捉え、ベトナム兵を油断させて脱出する。
堂々と銃を持たされているのを利用したのだった。

逃げる途中で、マイケルとスティーブンは川へ落ちてしまい最初にニックだけが助かる。
その際にスティーブンは足を負傷するが、マイケルが最後まで見捨てる事なく、最終的には2人とも逃げ出す事が出来た。


それから、町に出ていたニックは、またしてもロシアンルーレットに出くわす。
賭博としてロシアンルーレットが日常的に行われていたのだった。

ニックは金儲けできると参加を呼び掛けられるが、一度は断るもその光景を目の当たりにして何かが蘇ったのか、突然参加者の銃を奪い自分に引き金を引く。
そこを偶然マイケルが見ていて、ニックに声を掛けるがニックは気づかぬまま去って行った。


それから2年。
音沙汰のない年月に死んだと思われていたマイケルが故郷に戻った事で大歓迎される。
周りが英雄扱いすればする程、マイケルの精神との温度差があるようで、戸惑いを隠せないマイケル。
もうマイケルは以前のマイケルではなかった。
その証拠に、鹿狩りへ行ってももう鹿を仕留める事が出来ない。
明らかに覇気がなくなっている。

だからなのか、自分でももがいているのか、以前を取り戻そうとやっきになるのか、一生懸命今は側にいない友人を探し始める。

まず、足を負傷したスティーブン。
退役軍人病院にいることを見つけ出す。
彼は、一生車いすの生活だと言われていて、病院にいたほうがむしろ都合が良いだろうに、無理やり家に戻そうとする。

そして彼の元に、ベトナムから謎の入金がある、ということからもう一人の消息不明者ニックが生きていると確信。

ニックと言えば思い当たるのは、ロシアンルーレット賭博の会場。

だけど、この時点でニックが生きているのであれば、自分で戻ってくる事が出来るはずだろう。
でも戻ってきていないのだから、察しがつくはず。
なのに、わざわざ探しに行かずにはいられないマイケル。

それもそのはず、友人の中でも特に真の男として認めていたのがニック。
マイケルにとってニックというパーツがないと、完全にはならないのだろう。
生きていた、という事がわかっただけでも相当嬉しいはずだろうが、なのになぜ戻らないという疑問も同時に沸き、そしてそれを許せないのだろう。

そしてロシアンルーレット賭博会場で、何のためらいもなく引き金を引けるようになっていたニックと再会する。
完全に精神を病んでいたのだ。
しまいには演技なのかもしれないが、会いに来たマイケルを忘れていた。

普通なら、ここで諦めるか、力づくで連れて帰るかのどちらかだろう。
だが、マイケルは何故かロシアンルーレットの対戦を申し込む。

そして、目の前でニックを失った。

おしまい

かんそう:

個人的解釈ですが、最後マイケルはもう自分が死ぬつもりだったんだと思います。

無理やり自分達が一番キラキラと輝いていた時に、戻そうともがいて、友人を故郷に集めようとしていましたが、中でも最も認めていたニックの、完全にイカれている姿を見てもうそれは無理なんだ、と諦めた。

ロシアンルーレットをやるからには、両方生き残るという事はないはずですから。
ニックが、今生きていると言う事でこれまでの強運を感じ取ったんでしょう。
ニックに帰る気(元の生活に戻る気)がないという事も顔を見て、はっきり認識したんでしょうね。
もう元には戻れない、とも言えますが。
自分がしている事の空しさを。
で、戻れないならマイケルに戻る所なんてない、と思ったんじゃないのかな、と。

所が、結局良くも悪くも持ってるのはマイケルだった。
それまでの強運はマイケルがいなかったからのもので、ニックはあっさりマイケルとの対戦でその力関係を知る事になってしまった。

というか、ニックもどこかでわかっていたのかもしれませんね。
だから、もう故郷には戻らない(マイケルの側には)という事でもあったのかも。
決して嫌いとかではないんですけどね。

マイケルの側にいては永遠に2番目の男にしかなれない。

いろいろ疑問はあって、ニックは本当にイカれてしまったのかな、と言う部分ですが、スティーブンに送金していたという事実から、なんとなくマイケルを避けているのではないかな、と思いました。

もしかしたら、戦後の最初の遭遇、ロシアンルーレット賭博に手を出した夜も、ひょっとしてニックはマイケルに気づきながらも、気づかぬふりをしていたり……とか。

マイケルは、ある意味足を負傷したスティーブンの命の恩人でもありますが、ニックはたまたま先に助かってしまっただけで、そういう機会が与えられなかった。

いつでもマイケルが一番男らしい、という環境に実はちょっと不満だったのではないかと。
だから、スティーブンに送金が出来る生活能力がありながらも、マイケルに連絡を取ることはなかったのではないか……な。
なんて。

本作は、戦争が若者に与える負にしかならない影響を描いている作品だと思っていますが、同時に男としての生き様、男の友情も色濃く描かれていると思います。

マイケルは結局、仲間の中で1人まともに生き残ったと言えますが、それは決して彼にとっては幸せではない。
むしろ、ただ生き残ってしまったというだけで、彼が拘り続けた「男らしさ」を失ってしまっているのですから。
しかも自覚せざるを得ないまま、この先生きていかなければならない……。

以前のマイケルなら、何かあっても這い上がる事が出来る男らしさを持っていたと思いますが、友人を目の前で、しかも半ば自分のせいで失った今、どうでしょうかね……。

戦場でもその外でも、ロシアンルーレットという非日常的な要素がかなり印象的にフィーチャーされていますが、戦争をアピールするよりもロシアンルーレットって怖いよね、になってしまいそうなのは、ちょっと懸念になりました。

すべて戦争のせい、いろんな価値をおかしく狂わせるもの、と私は受け止めました。


さて、基本怖いので戦争映画は見ないのですが、本作を見たきかっけは大好きな「シンプソンズ」でした。

シーズン8 エピソード168
ホーマーのバート改造計画/Homer's Phobia


ある日、バートが友人のジョン(ゲイ)と仲良くしているのを見たホーマーが、バートもゲイになってしまった! と勘違いから、なんとか男らしくしようと空回りする、というエピソードでした。

「製鉄所」「鹿狩り」がそのまんま登場して、ディア・ハンター・ネタが使われていたので、一度見てみようと。

ちなみに、シンプソンズの中では、製鉄所で働く人は皆ゲイ、男だけで森に行くなんてゲイみたい、とポップな扱いにはなっていましたがw


実際、見て思ったのは不快感による後悔でした。
でも、楽しい戦争映画なんてあり得ないはずですもんね。
そして、それが戦争映画としては、正しいと思うので、この不快感をぶつける場所はどこにもないんです。

そして、本作から約30年になる2017年、今だに戦争がなくなっていないという事実にも、恐ろしさを感じます。
こんなに悲惨でしかない事が、こうして長く言われ続けているのに。


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