2017年10月17日火曜日

何がジェーンに起こったか?



ロバート・アルドリッチ 何がジェーンに起こったか? DVD

何がジェーンに起こったか?

1962年 モノクロ

ベディ・デイヴィス、ジョーン・クロフォード


あらすじ:


事故で車椅子生活になってしまった元人気女優の姉とその事故を起こした妹。
お互い憎しみ合いながらも姉妹という絆は永遠に切れず……。




ハドソン姉妹


妹のジェーンは、幼い頃に「ベビー・ジェーン」として歌と踊りで大人気だった。
その時姉のブランチは、まるで妹が光なら姉は影と言う感じで、暗く地味だった。
家計を支えていると自負しているわがままな妹に、複雑な思いを抱いていた。

2人は成長するとその立場を入れ替える。
ブランチは、女優としてブレイクし人気者に。
一方ジェーンは、女優としては大根で、アル中で過去の栄光にすがるだけの厄介者になっていた。

そんなある日、2人は家の門を出る所で自動車事故を起こす。
映像からは足元しか見えず、2人の女性の見分けは判断できない。


数年後


事故の結果、ブランチは車椅子生活になったまま年老いていた。
アル中はもちろん、精神的にも崩れ始めているジェーンがブランチの面倒を見ていたが、とても献身的とは言えなかった。

何かと世間がブランチに注目する事を嫌がり、車椅子のブランチを2階の部屋に押し込んで世間から遠ざけていた。

すべてブランチに奪われる。
ジェーンは、事故の事もあり自分は嫌われ者で皆ブランチの味方だ、と思い込んでいるようだった。


ブランチの頼りは通いのメイドのエルバイラだけだった。
エルバイラはジェーンの気がおかしい事に気づいていて警戒をしていた。
早く施設に入れた方がいいと、言い続けていたがブランチはジェーンに同情するのかなかなか話せないでいた。

ブランチはそもそも屋敷の売却を考えていた。


ジェーンの奇行


ジェーンはアル中で気がふれていたが、ズルかしこさもあった。
酒屋にはブランチの振りをして酒の注文をした。

ブランチが勝手に部屋で電話をしないよう、1階の電話の受話器を上げて置いた。
(昔の家電話の仕組み)


エルバイラに急かされてやっとブランチが屋敷の売却の話しをすると、妨害したいジェーンの奇行がエスカレートしていく。

食事には、ブランチの可愛がっていた鳥の死体を入れる。

電話が使えないブランチは、留守中に隣人に助けを求める手紙を書いて投げようとするが、それも戻ってきたジェーンに見つかってしまう。


ある日、ジェーンは新聞に「ピアノ演奏者募集」の公告を出す。
年老いたジェーンの幼少の栄光など、今は誰も知らないのに名前を聞かれると「私よ」とドヤ顔で答えた。
あのベビー・ジェーンよと笑う顔はしわしわで化粧も白く浮きまくり不気味だが、ジェーンの中では人気絶頂の少女のままのつもりなのだろうか。


事故の話し


なかなかジェーンに状況を理解してもらえないブランチは事故の話しを持ち出す。
さすがのジェーンも、自ら起こした事故の話しは耳が痛いようで、「その話はしないという約束」になっていたようだ。

それでも、ブランチは車椅子生活をしている事を主張するが、ジェーンは「だからなんだっていうの」と開き直る。
同情に訴えても無駄だった。


ブランチは車椅子ではジェーンに対して、何も出来ない事に涙を流す。

そして新たに運ばれた食事の蓋は怖くて開けられず、空腹にも苦しむ事に。
もう大丈夫だろうと、何度目かの食事で蓋を開けると、ネズミの死骸が置かれていた。
驚くブランチにジェーンは大笑いした。


エドゥイン・フラッグ


ジェーンが新聞に出した広告に、エドゥイン・フラッグという男が応募してきた。
いい歳なのに母親と同居するエドゥインは、金が欲しいだけなので気味の悪いジェーンにも適当に調子を合わせ、気に入られる。

ジェーンはベビー・ジェーンの頃と同じヘアスタイル、衣装を着て歌い踊り、普通の感覚であれば不気味以外の何物でもなかった。

上機嫌になったジェーンは誘って食事に出かける。

ブランチは出かけた隙に、ジェーンの部屋に行き、食べ物を漁った。
ドレッサーの引き出しにチョコレートを見つけてむさぼるが、その下には女優時代のブランチのサイン入りのブロマイドがあった。
顔はマジックで塗りつぶされており、ブランチのサインの練習をしていた。
奥から小切手帳が出てきた。

ジェーンはブランチのサインを偽造して金を自由に使っていたのだった。

車椅子に縛られるブランチとは反対に、ジェーンを縛る物は何もないのだ。


階段


ブランチはすでに部屋の電話を取り上げられ、ジェーンの留守中になんとか1階の電話を使おうとする。

車椅子から降りて、手すりを利用して少しずつ階段を降りる。
転がりながら、やっと電話を使い医者を呼ぶとそこへジェーンが戻ってきてしまう。
怒ったジェーンは、ブランチに暴力を振るい、ブランチのふりをして「さっきの話しはなかったことに」と医者を遠ざけてしまう。
別の先生に頼みますから、と言われれば疑われない。

ますます孤立していくブランチ。

その頃、暇を出されていたエルバイラは、機転を効かせ再びブランチの様子を見ようと、屋敷に向かっていた。

ところが、運悪く出かけるジェーンとすれ違い、その場で「引っ越すから解雇」と言われてしまう。

しかし、ジェーンを信用しきらないエルバイラは、帰るふりをしてジェーンが出かけたのを確認して屋敷に戻った。
合鍵で入り、ブランチの部屋に鍵がかかっているのをみて不信に思い、必死でドアを開けようとする。

そこへジェーンが戻ってくる。
ドアを開けないと警察を呼ぶとエルバイラが脅すと仕方なくドアの鍵を渡す。

エルバイラが鍵でドアを開けると、ブランチはベッドの上で手を縛りつけられ、猿ぐつわをされて監禁状態になっていた。

エルバイラが驚いていると、ジェーンは後ろからトンカチで襲った。
ジェーンは、エルバイラの死体を車椅子に乗せて運び出す。


ゴシップ


エドゥインの母親がゴシップでジェーンの事故の話しを知ったと騒ぎ始める。
姉をわざと轢いた妹。
そして、文無しだと。

しかしエドゥインは母親の言う事を信じない。
本人に会って尋ねるという。
妹になくても姉は金持ちだろう、と。

ジェーンは死にかけてる姉をその場に置き去りにして3日も行方をくらました。
見つかった時はゆきずりの男とホテルにいた。

母親は、ジェーンの酷さを訴えて引き留めようとしてもエドゥインは聞かなかった。


エルバイラの捜索願い


いよいよエルバイラの捜索願いが出た事で、警察からの電話にジェーンが怯える。
ブランチに救いを求めてすがるが、また気分が一転して突然どうでもいいわ! と開き直る。

ジェーンはブランチに近寄って言う。

「楽しい暮らしが夢だったのよ
なのにエルバイラのせいであんなことを。

ホテルの時と同じ、私があんたに怪我させたと言われた。
警官がこづいて私をひっぱたいたわ。
自分の姉にそんなことをした覚えないのに」

それからジェーンは嘘つきだとより周囲から孤立するようになっていた。

ブランチは思い切って何かを話すと言い出すが、「もうやめて!」とジェーンが興奮し出して打ち切られた。


発覚


そこへ家のベルが鳴る。

エドゥインだろうと、ジェーンが喜んで出ると警察官が目に入り、一気にテンションを下げた。
エドゥインをうろついていた不審な男として突き出すが、知り合いだと言う事で何事もなく警官は帰って行く。

ジェーンはエドゥインにゴシップの事を言われたのか、お金は払うからいじわるしないで、と言う。
仲直りに飲みましょう、ととっておきのジェーン人形をプレゼントした。

エドゥインは人形を持って車椅子で遊んでいると、2階の物音に気づいて見に行く。
すると、ブランチが監禁されているのを見て驚く。

「死にかけている」

エドゥインは、慌てて飛び出して行った。

ジェーンは、バレてしまったのでブランチを連れて家から逃げ出し、ずっと行きたかった海岸に辿り着いた。
もう朝になっていた。


真相


新聞の一面にはエルバイラの死体が発見されたとある。
2人が姿を消した事もジェーンがブランチを連れ去ったとニュースになっている。

何も知らないジェーンは、動けないブランチを毛布でくるんで砂浜に寝かせて、1人無邪気に砂遊び等をしていた。

警官が、ジェーンの車を発見する。


ブランチはジェーンに最後の助けを求めた。
「医者を呼んで」
「ダメよ」
即答され、ブランチは死を覚悟する。

そして言い掛けていた伝えたい事を話し始める。

それは、事故の真相だった。

実は、自動車事故はブランチがジェーンを轢こうとして起こしたものだった。
パーティーで、ジェーンに物真似をされ笑い者になっていた事が引き金だった。
門を開ける為、車を降りたジェーンを見てブランチは門に突っこんだ。

しかし、気づけばジェーンは車を避けて無事で、自分は背骨を折っていた。

そもそも酔っ払いのジェーンに、車が運転できる状態ではなかった。
でも、酔ったおかげで、事故の記憶もほとんど残っていなかったから、ブランチはジェーンの罪悪感に付け込んだ。

なんとか車から這い出しブランチが轢かれたようになり、恐怖で逃げ出したジェーンが犯人になったままで。

「美しかったあんたはそれから醜くなった。
それも私のせいよ」

ジェーンは真実を知ると一瞬、素に戻ったのか
「私達無駄に憎しみあっていたのね」
と微笑む。

その後、完全に自分を幼いベビー・ジェーンだと思い込んだようで、アイスクリームを買いに行く。

アイスクリームを持って歩いている所を警察に見つかると、「姉は映画スターになるのよ」と無邪気に答えた。
事件の主役の発見に、ヤジ馬が集まると注目を浴びてうれしそうに踊った。

警察がブランチを見つけた時、ブランチはもう動かなかった。


おしまい


かんそう:


ずっと気になって見たかった古い作品ですが、ドラマのベースになった事で無料放送され見る事が出来ました。

「フュード/確執 ベティ vs ジョーン」は、エミー賞ノミネートなどで話題になっています。
ドラマは1話だけ見ましたが、映画の単純なドラマ化ではなく「この映画を撮る事になった裏側」のストーリーのようで、それもかなり面白そうに感じました。

映画を観ていると、良くできている事がすごくわかります。
ドラマを見るのであれば、原作は見て置いて損はないと思いました。


ドラマに関係なく見たいと思っていた理由は、古い作品ですが単純にシナリオが良くできているような印象を受けたからです。

実際、見てみてその期待は裏切られませんでした。

またそれ以上に、モノクロの映像による狂気に見応えがありました。


まず最初に姉妹の関係性が判り、そして問題の事故が起きます。
そこのシーンがわざと、どっちが加害者でどっちが被害者かわからないようになっています。

流れから見て、「妹が姉を嫉妬で殺そうとしたのか」「姉が邪魔な妹を消そうとしたのか」どちらとも取れるようになっていますが、おそらく誰もが「ジェーンがブランチを殺そうとした」と考えると思います。
私もそう考えました。

でも、顔が割れたジェーン人形が現場に落ちてるので、逆かなぁ、という考えも捨てきらないんですよね。
(これは最後の真相を知ると、しっくりくるようになっています)

そこからすぐに現在の時間に戻って、ブランチが車椅子なのを見て誰もが「なーんだやっぱりジェーンの仕業か」とすぐに納得すると思います。

物語上も「姉を殺そうとした妹」という体で進んで行きます。
実際、ジェーンの狂気はあちこちに垣間見れます。

でも冷静に考えると、車椅子のブランチの世話をしながら2人で暮らしているのも、またジェーンなんですよね。
ここは、なんだかんだ姉妹という絆の深さなのかなぁ、と思いながら見ていたのですが。

途中、ジェーンが小切手のサインを真似たり、姉の声色を真似て好き勝手に生活している事がわかると、寄生する明確な理由を得た気がしてまたしても「ジェーン悪し」になってしまうのですが。
この辺が本当によくできているなぁ、と。

それが最後のブランチの告白で、いろいろと腑に落ちるんです。

ジェーンはわがままな所はあったけど、姉に危害を加えるような子ではなかった。

むしろ、幼い頃にジェーンの影に隠れざるを得なかったブランチこそ、狂気を身に秘めていたんだ、と。

誰もがブランチにずっと騙されていたのでした。

妹を車で轢こうとした上、失敗すると自分が被害者のように見せかけて、そう世間とジェーンに信じ込ませていた。

むしろ世間体がよいブランチこそ、サイコパス的な怖さがあったんですね。

何よりジェーンは、あの一件から気が狂ってしまった。
自分のした事に受け止めきれずに。
やってないと言っても、誰も信じてもらえず、いつしかやったと思い込まされ、そしてそれを悔やんだ。

本当はジェーンにはなかった姉に対する暴力性を、ブランチに植え込まれていたとも言えるような。

とはいえ、人気子供タレント時代のジェーンを見てると、クッソ生意気なのがわかりますから、結局は似た者姉妹で、2人がいがみ合いながらも一緒に暮らし続けていたのは、家族だからに他ならないんですよね。

見た目のままに心も腐っていたジェーンと、見た目には心に抱える闇を出さなかったブランチ。

私には、ブランチの方が怖いな~と思えました。

子供の頃ブランチは、母親に「もし将来あなたがスターになったら、妹やお父さんにやさしくするのよ。忘れないでね」と釘を刺されていました。


その時にブランチが見せた表情と言葉「死んでも忘れないわ」には、実は闇が感じられるのですが、事故のエピソードですっかりふっとばされるんです。

最後砂浜で息を引き取ってしまうブランチを可哀想に思う中、あの表情を思い出すとそれが自分で招いた結果だったんだ、と気づきました。



0 件のコメント:

コメントを投稿

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...