二ンフォマニアック2(2014) タイトルを無効化するほどの結末!
©Magnolia Pictures
2014年
監督ラース・フォン・トリアー
監督ラース・フォン・トリアー
キャスト:シャルロット・ゲンズブール、シャイア・ラブーフ、ウィレム・デフォー他
(U-NEXTで視聴)
★二ンフォマニアック1からのつづきです
あらあらすじ
理想的な審判
ジョーは、何を話しても性的なテーマから離れた話にすり替えて、納得や理解を見せるセリグマンへの違和感の正体を突き止めた。
「大抵の人間はこういった話をすると興奮するのに、あなたは違う。理解できないからね。経験がないのよ」
「大抵の人間はこういった話をすると興奮するのに、あなたは違う。理解できないからね。経験がないのよ」
セリグマンはそれを認めた。
「私は性欲がない人間だと思う。十代には処理をしたが、どうってことなかった。性的な本も読んだが、文学的に楽しんだだけだった。だから君の聞き手として役に立つだろう。先入観なく、君が悪い人間かどうか審判できる」
ジョーは話を続ける。
トラ
性感はないが、主導権を得ることで性欲を取り戻したジョー。性感がなくなると、安らぎと居心地の良さを求めた。
そんなジェロームとの平穏な生活の中で油断をし、妊娠する。
性器がすぐ使えるようにと帝王切開で男児マルセルを出産した。
マルセルに対しても「私の愛は報われない」という感情を抱き、よい母親とは言えなかった。
マルセルに対しても「私の愛は報われない」という感情を抱き、よい母親とは言えなかった。
出産後も性欲が落ち着くことがないジョーに、ジェロームは手に負えなくなっていく。
「僕はトラを飼っている。トラを満足させるには餌を与えないと」
遠まわしに、他で男を見つけろと言われてしまい、結局昔の性活に戻っていく。
美人で淫乱なジョーに、男たちは簡単に集まった。
ジェロームは自分で言いだしたはずが、嫉妬に駆られていく。
ジェロームは自分で言いだしたはずが、嫉妬に駆られていく。
冒険
ジェロームが長い出張に出ると、ジョーは変化を求めて冒険欲を沸かせた。
あえて言葉の通じない人種を選んでも満たされず、ガチサディストKのSMクラブに紛れ込む。
あえて言葉の通じない人種を選んでも満たされず、ガチサディストKのSMクラブに紛れ込む。
性行為はなし、Kがマンツーマンの支配者となりセーフワードのない世界。
最初はジョーはマゾヒストではないと見破られ、門前払いを受けていた。
それでもジョーが通い続けると、Kはジョーをマゾヒストとして受け入れた。
この時はじめてセリグマンは、ジョーの行動に理解不能を示した。
だが、すぐにジョーが受けた緊縛の方法に興味が移り、脱線していく。
サディストK
回を重ねるごとにジョーは物のように扱われ、与えられる痛みに性的興奮を覚える。と、同時に夜家を空けることで少しは子供のことも気になってはいた。
シッターはそれほど当てにならない。
そん嫌な予感が的中し、ジェロームが留守中に帰宅をし、マルセルが一人で家に残されていることを知ってしまう。
しかもベビーベッドを出てベランダいるところを保護していた。
ジェロームは、二度と夜外に出るな、するなら離婚だと告げる。
だが、息子の前で泣き崩れるジョーを見てジェロームは察した。
「別れの挨拶なんだな。出かけたいんだろ?」
ジョーはSMクラブへ駆け込み、割り込みまでしてプレイを求めた。
「別れの挨拶なんだな。出かけたいんだろ?」
ジョーはSMクラブへ駆け込み、割り込みまでしてプレイを求めた。
そこでKにクリスマスプレゼントだと手づくりの鞭をもらうと、自らシリを出す。
「入れて欲しい」
それは叶わないが、鞭で打たれながらオーガズムを取り戻す。
「入れて欲しい」
それは叶わないが、鞭で打たれながらオーガズムを取り戻す。
その日以来マルセルには会っていない。
匿名で毎月送金はしている。
匿名で毎月送金はしている。
しかしそんなマゾ生活も、次第にサディストであるKに哀れみを感じ、決別した。
サディストが上位に居ると思われがちだが、むしろマゾヒストの方が奉仕されて当たり前という立場にいると気づいたのだった。
ジョーは、なんとか自分が悪い人間だと認めて欲しいが、セリグマンは何を聞いてもそうは思わない。
そしてありとあらゆる側面を自分が持つ知識で、説明してジョーを納得させようとした。
タブー
職場でジョーがセックス依存症だとウワサになり、分析医から依存症の会を勧められる。
そしてまた妊娠が発覚し、即座に中絶を求めた。
だが簡単に対応してもらえず、待ってられないと麻酔なしで自宅で自ら中絶処置を行う。
元々医学の道を目指していて知識はあった。
そしてまた妊娠が発覚し、即座に中絶を求めた。
だが簡単に対応してもらえず、待ってられないと麻酔なしで自宅で自ら中絶処置を行う。
元々医学の道を目指していて知識はあった。
中絶の下りについてはセリグマンが口を閉ざすと、ジョーは批判する。
「中絶となると女性だけの問題のように、扱われる。男性が罪悪感を持たずに済むから」
さらに腹立たしいのは議論の価値もないように扱われることだと言う。
「そもそも私はタブーは害悪だと思ってる」
依存症の会
会に参加することで、ジョーは初めて自分の問題に向き合い、生活の中から性を連想させるものを取り除いた。電話などの連絡ツール、春画、家中の突起を覆った。
そして欲情したら我慢して抑える。
結果、3週間と5日、性行為を断つことができた。そのスピーチをしようと立ち上がるが、鏡の中に幼少期の自分の幻覚を見る。
すると用意した原稿を破り捨て、本音をぶちまけた。
「私はアンタたちとは違う。色情狂。そんな自分が好き」
すると用意した原稿を破り捨て、本音をぶちまけた。
「私はアンタたちとは違う。色情狂。そんな自分が好き」
闇へ
ジョーは完全に闇に紛れることを選び、噂に聞くL(ウイリアム・デフォー)を訪ねた。
Lはジョーの適正を一発で見抜き、借金の取り立てを任せられる。
Lはジョーの適正を一発で見抜き、借金の取り立てを任せられる。
そこで過去の知識が役に立った。性体験、ロープでの拷問。
様々な知識でどんな男の性癖も見抜き、弱味を握る。
その手腕はLにも気に入られ賞賛されるが、それほど若くはないのだからと後継者となる右腕を持つよう言われる。
「いざという時に自分の身代わりに刑務所に入ってもいいという、不幸な子供を見つけて親代わりをするんだ」
P
その候補者で15歳のPを紹介される。そしてジョーは自分で産んだ子にもしていない、親の真似事を始めた。
ジョーの親の知識は父親だった。
そしてPが成人すると一緒に住んだ。
その頃は長年のツケで陰部が痛むせいで性行為はしてなかった。時折、発熱もした。
すると寝込むジョーに、Pは心配しながらも好意があることを伝える。
ジョーも愛してるというと、家族の愛ではないと言う。
ジョーは寝込みに迫られると完全に拒絶できず、Pと関係を持つ。
そのうち、Pがジョーが近づいてきた理由を気にしたので、ジョーはLに言われたことをそのまま打ち明けた。
ショックを受けるだろうと思いきや、Pはそのおかげで出会えた、とジョーの仕事を理解し手伝うと言った。
再会
ある夜、Pの案内で取り立てに行くと、そこはジェロームの家だった。ジョーは、一人でやってみなさい、とLだけにやらせる。
ちらっと見えたジェロームにまだ心が動かされた。
1人で仕事を済ませたPは上機嫌で帰宅した。
それからPは6回ジェロームに取り立てにいくことになった。
ジョーはPが行く度に、戻るまで落ち着かなくなった。
そして最後の取り立ての夜、帰りが遅いのが気になりジェロームの家に行くと窓越しに
裸のPがジェロームといちゃついているのを見る。
そして最後の取り立ての夜、帰りが遅いのが気になりジェロームの家に行くと窓越しに
裸のPがジェロームといちゃついているのを見る。
ショックを受けたジョーは、2人と同じ町にはいられないと未練を抱えながら山に登った。
家に戻ると、Pから取り上げていた銃を持って外に出た。
そこでPとキスをするジェロームに遭遇し、思わず銃口を向けるが(安全装置のせいで)撃てずに銃をしまう。
するとジェロームに殴り倒され、Pの目の前でボコボコにされた。
するとジェロームに殴り倒され、Pの目の前でボコボコにされた。
Pは終始冷たい目でジョーを見ていたが、ジョーが倒れるのを見ながら下着を脱いで、ジェロームを誘う。
その光景は、ジョーがジェロームに処女をささげた時と同じだった。
Pは、倒れているジョーに放尿(pee?)し、ジェロームと去って行った。
これがジョーが道に倒れていたことの顛末だった。
その時、夜が明け、部屋の中が明るく照らされる。
セリグマンは、これまでのジョーの物語を最後にまとめた。
そしてジョーはすべてを話したことで自分がするべきことがクリアになった。
「セクシャリティを排除する。どんな困難にも立ち向かうわ」
そして心から思った。
「人殺しにならなくてよかった」
セリグマンは、これまでのジョーの物語を最後にまとめた。
そしてジョーはすべてを話したことで自分がするべきことがクリアになった。
「セクシャリティを排除する。どんな困難にも立ち向かうわ」
そして心から思った。
「人殺しにならなくてよかった」
セリグマンが安全装置について説明してくれた。
結末
ジョーは、安心したのかやっと眠りにつく。
「起きたらまた先の話をしてもいい。息子を探すのもいい」
「起きたらまた先の話をしてもいい。息子を探すのもいい」
セリグマンが優しく声をかけ、出て行った。
ところが、朝になるとセリグマンはジョーの寝ている部屋へ行き、ジョーの布団をめくって裸の尻を揉みながら下半身を出してヤろうとする。
気づいたジョーが抵抗してもやめる気配はない。
「大勢とやったくせに」
ジョーは銃に手を伸ばし、今度こそ安全装置に邪魔されず発砲した。
おしまい
かんそう
最後のオチがめちゃくちゃラース節って感じでした!ぶっちゃけ、ジョーの物語は1と比べると少し退屈に感じました。
というのももうジョーが病気なことは1で分かっているのでほぼほぼその再現ドラマの尺が長いだけになるんですよね。
ジョーが裏稼業に入るまでの特にSMクリニック?みたいなところに通うあたりは、見ててキツさもあって「あれ?これ1だけでよかったパターン?」って心配になりました。
でも最後まで見て、ほんとこれだからラースってさぁ……の完敗気分に。
ずーっと長い長い前振り? 感覚的にはジョーの物語がほぼ前座。
やっぱり肝はセリグマンだった!
ジョーという強烈な存在でなんとかその異臭を隠そうとしていたけど、隠しきれてないというか匂わせありまくりでしたからね。
また1を見て「セリグマン何者よ?」って思わされたタイミングで2の冒頭でジョーが代弁してくれてるのも、凄いタイミングで!
ジョーの再現ドラマの長尺の言ってしまえば「もういいよ」ってなるのを、セリグマンの反応がアクセントとなって、最後まで見るかって思わせてくれていたと思います。
しかも、「なるほどね」って一旦セリグマンを信用させてのあの落ち!
見事なジェットコースター体験でした。
見終わって改めて分かるのは、ジョーには衝撃的な部分が沢山ありましたけど、あくまで性に翻弄されているだけで倫理観などは実はしっかり持っているんですよね。
だからこそ「私は悪人」とずっと言い続けている。
列車の中で出会った男性が妊活のために誘惑に抗っていると知って、あえて搾り取ったのをずっと罪悪感として持っている。
不倫での家庭崩壊、育児放棄、すべて無関心でもなく、「私はひどい人間」と自覚している。
そんなジョーにまるで寄り添っているかのように、無垢な存在のように見せかけていたセリグマンが実は自分の欲をふつふつと煮えたぎらせていたなんて。
いつから? なぜ?
最初からジョーのこれまでの相手のように振る舞うのではなく、むしろ光が見えたところで闇に引きずり戻すような行為の残酷さったら。
この映画、前半は確かに「二ンフォマニアック」で収まっていますが、2はもはや別のタイトルの作品になってませんか?
問題はジョーじゃなくて、セリグマンの方ですよね?
でも、あくまでタイトルを尊重して考えると、セリグマンがこれまで童貞を守って?
静かに生活していたところへ、ジョーが、ジョー自身が招いた結果として道に倒れて、セリグマンと出会ってしまった。
あそこで大人しく救急車を呼んでもらっていれば、セリグマンを殺すことはなかった。
やっぱりジョーの生き様「二ンフォマニアック」が招いた結末であることには変わらないんですよね。
それにしても長い~~!
何度も見るような作品ではないけど、色情狂のジョーの性活を淡々と事務処理のように見せたラースらしい笑いもあったし、見て良かった!