グッドナイト・マミー(2022) 落ちを知ってから2度見たくなる系

 




2022年
(2014年オーストリア「Ich seh, ich seh」リメイク

ナオミ・ワッツ

★すごく面白いのでできればネタバレなしで見ることをお勧めします!!

あらすじ

幸せな家族

ベッドに入る双子の男の子に綺麗なママが子守歌で寝付かせている。
それを動画に撮るパパ。
なんてことはない日常だが幸せが詰まっている。

ママ

しかしそこから大して時間が経っていないのに、両親は離婚していた。
双子のエリアスとルーカスは、パパの運転でしばらくママが住む田舎の一軒家に向かっている。
エリアスは車中で久しぶりに会うママに絵を描く。
双子がママを挟んで手を繋いでいる。

パパはママに会わず、玄関前で帰って行った。
よほど仲違いをしたようだ。

田舎とはいえ、家はモダンで裕福なことがわかる。
辺り一面野原だが側には大きな納屋もあった。


出迎えのないまま双子は家の中でママを捜す。
するとカーテンを閉め切った薄暗い部屋の中で「手術をしたばかりなの」と言って頭をネットで覆った姿でいた。
「こんな姿見せたくなかった。パパには言わないでね」
病気ではなく、メンテナンスをしたと説明をし、顔の整形だとわかる。

ママは部屋にいる双子にプレゼントを持って、改めて声をかけてこの家で暮らすルールを伝える。
「静かにして欲しい。人を呼ばないで。日光が良くないからブラインドを下ろして。ママの部屋と納屋には入らないこと」
それと自分たちの部屋の鍵は閉めるな、とその後何度も言われる。

エリアスは車中で描いた絵を渡すが、一人になったママはその絵を見ると嬉しそうではなかった。

異変

夜になり子守歌をねだるが、もう卒業だと歌ってくれなかった。
双子はママの態度に違和感を持つ。
「ずっと会ってなかったから嫌いになったのかな?」

翌日、双子は外で遊んでいると納屋にたどり着き、ダメだと言われたが窓から侵入する。
ロフトに上がるとおもちゃなどがあり、子供が遊んでいた痕跡を見つける。
壁の黒い染みが気になった。

双子が窓から外に出るとママが来ていて叱られる。
一人責められたエリアスはルーカスだって、というがママはそれ以上きかず、外出禁止を言う。
双子だけになると、エリアスはあの染みは血だ、とルーカスに言った。

その夜、染みの夢を見たエリアスはおもらしをしてしまう。
部屋の外に出ると、ママが電話をする声が聞こえた。
「困ったわ。いつもルーカスと一緒なの。納屋にも忍び込んだし、何かに気づいてる。
これ以上耐えられない。ケリをつけたい。あの子に消えて欲しい。いつまでそんなフリを続けろと?」
途中で気配を感じると、電話を止めて子供たちが寝ているか確認した。

その後も双子にとって顔を覆った女性がママとは思えなくなっていく。
忍び込んだ寝室では、プレゼントした絵がゴミ箱に捨てられているのを見た。
タバコなんて吸っていなかったのにこっそり吸っていた。
鏡の前で音楽に合わせて、ナイティをまくり上げて身体をくねらせている。
宣材写真(職業は女優だと分かる)と今のママは瞳の色が違う。
ルーカスは「パパに電話しよう」と提案する。

しかしこの電話がママを切れさせ、スマホは押収されディスポーザーで使い物にならなくされた。
「嘘をつくとこういうことになるのよ」
スマホには幸せな頃の動画が残ってたのに。(冒頭に流れた子守歌を歌う動画)

悪夢

マスクの下が気になるエリアスは、なんとか見ようとするが気づかれていた。

そんなエリアスの態度にママもヒステリックになっていく。

「優しくしてあげた。あなたを理解しようとした。あなたに合わせてきた。何でもやってあげた。なのにそっちはそんな態度なの? 母親の私に」

そしてとうとう言ってしまう。

「ママじゃない!」

エリアスはシャワーの下に連れて行かれ、ママと言うまで許されなかった。

その夜からママの皮膚がはがれて皮膚のないママの悪夢を見るようになる。

エリアスがうなされているとルーカスがここは危険だから逃げようと提案し、嵐の夜に家を抜け出す。

助け

なんとか人家に辿り着いて助けを求めるが空き家だった。

ペットの出入り口から侵入し、そこで寝ることに。

またエリアスが悪夢を見ていると、人感センサーで気づいた州警察の2人組がやってきて保護される。

双子は「ママが別人だ」と訴えるが、警官はママの待つ家に送っていく。

そして家の前で待っていたのはネットを外して素顔になったママだった。


警官2人も家に入り、規則だからとママに事情を説明させた。

子供たちはあくまで整形した別人で、警察も騙すつもりだとこっそり盗み聞きをする。

するとママは涙ながらに「現実と空想の境目が消えるからどうしていいかわからない」と打ち明けた。

警察は子供の想像力は一時的なものだ、と特に不審に思わず帰ってしまう。

男の警官はママのファンだとも伝えた。

警官が帰るとママは子供部屋にやってきて、嵐の中捜しまわったと言う。

そのために包帯を3日前倒しにして外した。治ってて良かった」

だが双子は寝たふりをして何も答えない。

「いいわ。いつか私を愛する」
部屋に戻るとママは一人で泣いた。

反撃

双子はママが寝ている間にガムテープでベッドに拘束した。

朝になりママが起きると、「(本物の)ママはどこ?」と脅す。

「ほどいてくれたらもう怒らない。全部許す」

エリアスが宣材と目の色が違うと証拠を突き付けると、ママは「カラコンなの」とバッグにいつも入れていると説明する。

それでもエリアスは堰を切ったように今までの積もった思いをぶちまける。 「ママなら絵を破いて捨てない。子守歌も歌ってくれる!」 するとママは泣きだした。

その姿にエリアスは少しやりすぎなように思った。だがルーカスに言っても手を緩めることを許さない。ルーカスはあの女は危険だからあのままにしてパパのところへ行こう、と荷造りを始める。

エリアスはカラコンのことが気になり、一応真偽を確かめようとするが先にルーカスがバッグを見つけて「なかったよ」と言われる。

それを自ら確かめようとすると、ルーカスが不機嫌になりあんな女のことで喧嘩したくない、とカラコンの話は終わりになる。

そしてルーカスはエリアスにママの口を塞がせた。


家を出る直前、州警察の2人が再び訪ねてくるが、ママは留守だと嘘をついて追い返す。

そしてママを拘束したまま家を出るが、どうしても気になるエリアスは忘れ物をしたと言って一人で戻った。

ルーカスの嘘

エリアスがママのバッグを調べると、ママの言う通りカラコンが入っていた。

ルーカスは嘘をついていた。

するとルーカスもやってきて「それには理由が……」と言い出すが、エリアスは無視をしてママを解放しに寝室へ向かう。

「本物のママだった!!」


解放されたママはエリアスを叱ることなく抱き合った。

エリアスはママに泣きついた。

「ルーカスがおかしくなってると思う」

だがママはそれにはうろたえず、見せたいものがあるとエリアスを納屋に連れて行く。

いつの間にかルーカスは姿を消していた。

真実

陽が沈んでいたのでママはランプを持って納屋に向かった。

2人でロフトに上がるとママが黒い染み、血の理由をエリアスに説明する。

それはエリアスがルーカスを銃で撃ち殺した痕だった。

「あれは事故だったからあなたは悪くないの」

弾は入っていないはずだったのに、入っていた。

だがエリアスは自分が双子の兄弟を殺してしまったことを信じたくなく、その事実を封印し、あの日からずっと空想のルーカスを見ていたのだった。

それは周囲も知っていて、エリアスのためにルーカスが存在するように合わせていた……。

そしてエリアスはママの口から聞く真実をやはり受け止められなかった。

気が付けば動転して、ロフトからママを突き落としていた。

慌ててママに駆け寄るがママは動かない。そしてママが持っていたランプの火がみるみる藁に燃え移っていく。

エリアスの新しい世界

納屋から逃げ出したエリアスはあまりのショックに這いつくばって嗚咽した。

だが顔を上げるとそこにはママとルーカスが立っていて、エリアスを暖かく迎えた。


おしまい


かんそう

これはリメイクされるのがわかる、よくできたお話です。落ち知っちゃったので元の作品は見ていません。あと元が気にならない程完成度が高いというのもあります。

最初ノーインフォで見たので、フツーに「ママに何かある!」って視点で見てました。
こういう「実は……」系、大好きなんですけどこの作品は見ている最中の「クエスチョン」と真実、そして落ち、すべてが説得力があって細かくて本当に良くできていると思います。

からくりとして「ママ」を女優にしたこと、双子の一人がすでに死んでいるのにそれを受け入れてないエリアスが前提になっていることが伏せられていること、など設定そのものがちりばめられたヒントの存在を気づかせないようにしているんですよね。

私が最初にアレ?って思ったのは、家に来た時に渡したプレゼントが1つだったことで、双子とはいえ一つ? あんな豪邸に住んでて? もしかして双子に差をつけてる? って引っかかりました。でも最後まで見るとここが大ヒントだったんですよね!
ママがルーカス見てないなーっていうのも双子なのに差をつけてるんだ、酷いママ! って思ったんですけど、いないからだった!
こういう伏線ちっくな仕掛けは注意して見返したら他にもいろいろ見つかりそうですよね。

だけど初見ではもちろん勘違いしたまま、ママの不気味さがすべてをミスリードしていきます。
また、話が進むとルーカスは控え目で、叱られるのはエリアスばかりで、どちらかと言うとエリアスにだけ厳しい? みたいな印象に。
そこで双子といえば一人は邪悪なのも定番?ですから、これママじゃなくて実はルーカスがやべえ奴で、それが離婚の原因だったり? みたいな深読みに変わっていきましたw
(だからママはルーカスにあまり接しないんだな、でもジュース用意したり、要所ではルーカスの名前を出してちゃんと存在を認めている)
そんなミスリードにまんまとはまっていき、だんだんルーカスがエリアスを操る黒幕みたいになっていくので、ママとエリアス逃げて! になるんですよね。

で、最後のコンタクトの嘘でやっぱり~ルーカス!!ってなってからの大どんでん返し!!!
めちゃくちゃ面白かったです!!

邪悪、というのはしっくりきませんが、エリアスこそが最初からイカれていたんですね。
ルーカスの死を受け入れない。生前のルーカスをほとんど知らないので、あのキャラクターまでもがルーカスなのか、それともエリアスに都合の良いルーカスなのかはわかりません。
またただの兄弟ではなく双子にしたところも説得力を増しています。まだ子供とはいえ、片割れを失うことで狂ってしまうのは仕方ない。
そして今度は母親殺しに。
エリアスがまた空想の家族を増やすのは、当然かもしれませんね。

エリアスはまだママの子守歌が欲しくて、悪夢を見たらおもらしをする少年で、恐らくルーカスの見た目とズレがないのでルーカスを亡くしてそう経っていないんだと推測しています。
これがエリアスがどんどん歳をとった場合に、空想のルーカスとママはどうなるんだろうって考えちゃいました。
まあ、ルーカスは双子だから自分のその年齢のままを反映すればいいけど、ママはきっと今のママのままでい続けるのかなーって。

私たちは、整形をしたばかりのダウンタイム?で病人のようなママしか見ていなかったんですが、イマジナリーになった瞬間、さわやかなスタイルのママになっていたんですよね。
それはきっと幸せな家族だった頃のママで、女優感もない。

そもそも納屋が事故現場ということは、家族で田舎暮らしをしていたのか、避暑地だったのか。もしかしたら事件の前から父親とは不仲だったのかもしれないし、事件そのものがそういった背景の元にあったのかもしれない……。
あの子守歌の動画は実は唯一の幸せな思い出で、現役の女優だったママとはあまり一緒にいる時間がなかったのかもしれない。
「ずっと会ってなかった」という台詞があるんですが、それも女優という職業がいろんな想像をさせてくれます。事件をなかったことにしているエリアスにとって、事件のせいで会えてなかったという事実はないので、もしかしたら日頃から母親は家を空けることが多かったのかも。
壁にメットガラとか授賞式に参加するようなママの写真が飾ってあるんですが、それが事実ならママは一時期は売れっ子女優だったはず。
(実際、警官が写真撮りたいと言うと、まだファンがいたのね、と言っていた)
でもママは息子の死で病んで表舞台から離れた、という感じではなく、何かにすがるように大がかりな整形をし、鏡の前でまだ自分がイケてるか? 踊ってチェックしていたようにも見えます。
その様子を盗み見た時に「ママじゃないかも?」ってなるのは、エリアスにとって女優のママはママではなく、子育てに集中して欲しいっていう思いがあってもおかしくはない。
そう考えると、エリアスにとってはイマジナリーに逃げるしかなく、これからは常にママと一緒でよかったねぇってなりますね。
これはメリバなのかハッピーエンドなのか。

ミスリードとして悪夢のシーンにホラーな表現があるんですけど、それすらなくても良かったかもって思うくらい、すべてに理由があるよくできたストーリでした!


(ホレイショ/Movielog)
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