2017年11月12日日曜日

神様メール



神様メール/ピリ・グロワーヌ[DVD]【返品種別A】

2015年作品

ベルギー、フランス、ルクセンブルグ合作

ピリ・グロワーヌ、ブノワ・ポールブールド、カトリーヌ・ドヌーブ、フランソワ・ダミアン、ヨランド・モロー


あらすじ:


神様は存在した。
ただし、とっても性格が悪く、傲慢で人間にイジワルで。

そんな神が父親である娘は、嫌気が差して新たな使徒を集める為、神のパソコンをいじってから地上に家出をして……。





神はブリュッセルに住んでいる、人を苦しむのを見て楽しむ嫌な奴だった。
神はパソコンを使って、戦い、災害、災難、数々の不快の法則を作り続けた。

家族は妻の女神、息子は有名なJC(イエス・キリスト)、そして10年家に閉じ込められている娘のエア。

神は人間にはもちろん、家族にも高圧的だった。
仕事部屋である書斎は鍵を掛けて誰も入れないようにしていたが、ある日ドアが開いていた。

エアは、こっそり書斎に入り神のパソコンを見て、父が人を苦しめているのを知った。

書斎に入った事がバレると、鬼のように神は怒った。
エアは、父を痛い目に合わせてから家出をしようと決意する。


家出


エアは兄であるJCに相談して、使徒を見つけて世を正す事にする。
女神であるママは、日頃から使徒は18人必要だと言っていた。

理由は野球が好きだから、なのだが12人いる使徒にあと6人足して18人にすることを目指す。

もう1度、父の書斎に忍び込んで適当に使徒候補を選ぶ。
そして、パソコンを操作して全人類の余命をメールで一斉送信した。

これまで余命などわからないのが常識となっていた地上では、余命が分かった事で猛スピードで価値観を変えて行く。
それは、戦いも無意味になり、そして神に祈ることも必要となくなり出す。

最後にエアは、PCの電源を落として使えないようにした。


地上へ


神の家と、地上を結ぶのは洗濯機だった。
エアはJCから聞いた設定に合わせて、洗濯機に入り、地上のコインランドリーに出た。

最初に会ったのは、ホームレスのヴィクトールで地上の事を何もしらないエアの案内役になってもらう。
と同時に新・新約聖書を書いてもらう事に。


1人目の使徒


オーレリー。
余命を知っても、今まで通り暮らす左腕が義手の美女だった。
男にもてるあまりに孤独でもあった。

エアはオーレリーに声を掛けると、奇跡としてその人が持つという心の音楽を見せる。
オーレリーは夜、ヘンデルをBGMに失われた左手がテーブルで踊るのを見た。


2人目の使徒


ジャン=クロード。
幼い頃から冒険家だったがある日冒険をやめた。
独身、子供なし、クソのような仕事をしている。

余命を知ったことで、すべてを捨てて公園のベンチから動かない事に決めた。
心の音楽は、ラモーの鳥のさえずり。

鳥が、ジャン=クロードを先導するのでついていく。
また旅が始まった。


3人目の使徒


性的妄想者のマルク。
9歳の時、ビーチで人生が変わっていた。
青いビキニのドイツ人のお姉さんに心を奪われる。
興味と嫌悪の目で見られると、お姉さんを食べたいと思った。

大人になっても女性とはまともに会話も出来ない。
余命83日と知り、プロを相手に初体験をした。
まだまだ残りを楽しみたいが、金がなくなった。

心の音楽は、パーセルの孤独。

エアが声が素敵だから声で稼げるとアドバイスをして、マルクはAVの声優になる。

天職だと感じ、相手役の女性声優とも読んでいたプルーストがきっかけで会話を弾ませた。
すると、9歳の時にビーチで会ったお姉さんだと判明し2人は急接近する。


4人目の使徒


殺し屋のフランソワ。
幼い頃から死に夢中だった。
悲しみも涙もなく、自ら殺し屋だと名乗っていた。
妻子がいたが、家族には殺し屋である事を内緒にしていた。

心の音楽は、シューベルトの死と乙女。

エアは、ヘンデルを心の音楽とするオーレリーと合うだろうと銃弾を渡して標的に薦める。
フランソワが撃つと弾は公園を通りかかったオーレリーの腕をかすめるが、義手の為彼女は平然と歩き続けた。

そのままフランソワはオーレリーの後を追い、オーレリーに告白をした。
初めて本当の恋に落ちたのだった。

家に帰ると鏡の中の自分と抱き合った。

オーレリーもフランソワを受け入れた。


5人目の使徒


マルティーヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)。
夫は余命39年もあるというのに、自分は5年と少し。
生活は恵まれていたが、恋を欲する気持ちは満たされなかった。
夫の留守に若い少年を買ってみたが、無駄だった。

エアは、心の音楽をサーカスの音楽だといって、マルティーヌを移動サーカスに連れて行く。
そこでマルティーヌは檻に入ったゴリラに一目惚れする。
ゴリラもまた、マルティーヌを一目で気に入った。

サーカスからゴリラを買い取り、一緒に暮らし始めた。


父との再会


エアの家出に気づくと、神もエアを追って初めて地上に来ていた。

しかし、IDもない口も身なりも汚いオヤジは道を聞けば不審者扱い、街を歩けば不良に絡まれ、自分の作った不快法則に悩まされていた。

そんな神を助けてくれた教会でも、自分が神だと言ってキリストの悪口をいい、神父にボコボコにされる始末。
それを見た教会のキリスト像の口元は笑っていた。

ある日、とうとう神はエアを見つけて追いかけた。
エアはヴィクトールと共に運河に追い詰められてしまうが、奇跡でヴィトール共々水面を歩いて逃げる。

神も自分も歩けると思って水に足を入れると、そのまま運河で溺れた。


6人目の使徒


ウィリー。
余命54日だと知って、赤いワンピースを着て女の子として生きる決心をした少年。

心配症の母親があれこれウィリーに薬を与えていたのが原因で、膵臓がイカれてしまった。

エアが見つけた時にはすでに余命は1週間になっていた。
ポケモンのアルセウスが好きな男の子。
エアは、父(神)のせいで世の中が悪いと謝った。

心の音楽は、シャルル・トレネのラ・メール。

食事に出された魚の骨が歌い踊った。
ウィリーはこの魚を海に帰してやろう、そしてその日に自分も海で死ぬ事を決めた。


使徒たちの変化


6人の使徒が集まった。

ウィリーは旅費を作る為に、家じゅうの家具を売り払った。
マルティーヌはゴリラとの生活を選んで夫を追い出した。
オーレリーはフランソワに殺し屋を辞めさせた。
マルクは、声優の彼女と愛し合った。
そして、ジャン=クロードは北極圏に到着していた。


地球上でIDの無い神は、ウズベキスタンに送られた。


雅歌


日曜日、皆でウィリーの為に海に行った。

皆考える事は同じようで、最後は海で死のうという人達でごった返していた。
区別の為に、付き添いは白、死ぬ人は黒の紋章をつけた。

ウィリーはビーチに座り込んでその時を待った。

使徒が18人揃えば何かが変わるとJCは言っていた。
18は野球好きな女神の好きな数字だから。

そして、女神は家に飾ってある絵の使徒が1人ずつ増えて行っているのに、気づいていた。
すぐ怒る恐ろしい夫も長い間留守で、女神は上機嫌だった。
書斎を掃除する際に、PCのプラグを抜いて掃除機を使った。


その頃、ビーチの上空に神を乗せたウズベキスタン行きの飛行機が飛んでいた。
しかし機体から煙を出して、明らかに高度が下がって行っていた。

このまま黒い腕章をつけた人間が全員飛行機の墜落に巻き込まれて死ぬのだと思っていた。


そこへ、神の家で女神が掃除を終えて、PCのプラグをコンセントに指し直した。
するとそのままPCは再起動を始めた。

女神はそれに気づき、何気に神のパソコンを操作しだす。
女神の平和的で少女趣味な感覚のまま、人間界の設定をし直した。

空には花柄の刺繍がほどこされる。
温暖化でも氷は解けない。
引力も自在。ビルの壁をカップルが歩いてデートした。
水中でも息が出来るようになった。


マルティーヌはゴリラとの間に子供が出来た。
1つ目の人間も誕生した。
新・新約聖書は発行された。
エアとウィリーはキスをした。
フランソワは妊娠した。

余命についても、再起動ですべてリセットになったようで全員生きていた。
神を乗せた飛行機も無事だった。


ウズベキスタン


ウズベキスタンで神は洗濯機工場で働いていた。

どの洗濯機を覗いても、家に続く道はなかった。



おしまい


かんそう:


たまたまTVのCMで見て面白そうだな、と興味を持ちました。
「神が嫌な奴」「神のパソコン」「新たな使徒」等々、子供の想像の世界を映像にしたようなブラック・ファンタジーで、シュールな映像と共に設定が楽しめました。

何より、エアが可愛いいのが魅力でした。

こういうファンタジー設定は映像で映えますね。
鏡と向かい合って自分と抱き合う、とかゴリラが一般の生活空間にいる、とか。
想像するよりもそのものを映像で見せられる事でのインパクトが楽しいです。

使徒に選ばれたのはランダムな6人なのですが、それぞれにどこかしら共感できるような設定があるのも、このファンタジーが決して子供向けではない大人のドラマである事を印象づけてくれます。

いろんな比喩に捕える事もできて、見る人によって様々な感情が得られそうだな、とも思いました。

例えば、個人的には「神」の存在は自分の父親に重ねる事が出来ました。
いわゆる昔の頑固オヤジみたいな感じなので、いつかぎゃふんと言わせたいと思いつつもなかなか出来ませんが、この映画の神を見て「こうなればいいのに!」と疑似的にスッキリする事が出来ましたw

他にも、使徒の変化については、誰もがキラキラした人生を送っている訳ではないけど、少し考え方や味方、自分を見直せばその人なりの輝きが感じられるようになる、というメッセージに思えました。

エアの家出と成長は、特に何かに立ち向かって勝つ可能性というのも感じさせてくれました。
諦めない心。

そして女神が作り出す新しい人間界。
どれもおとぎ話のようなネタですが、平和というくくりの中にこれまでの概念を打ち破って何でもウエルカムで行こうよ、というまだまだこの世界にある可能性が感じられました。

女神の活躍が、いつか現実になるのを期待してしまいました。






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