2017年11月5日日曜日

シャドー




ダリオ・アルジェント シャドー HDリマスター特別版 Blu-ray Disc

1982年作品
ダリオ・アルジェント監督

アンソニー・フランシオサ、ダリア・ニコロディ、ジュリアーノ・ジェンマ、クリスチャン・ボロメオ、ジョン・サクソン、ジョン・シュタイナー、エヴァ・ロビンス、ミレッラ・ダンジェロ、キャローラ・スタナーロ、ヴェロニカ・ラーリオ

あらすじ:


最新作「シャドー」を発売したばかりの小説家がローマに来た途端、自身の小説を絡めた連続殺人事件に巻き込まれるが……。






小説家ピーター・ニール


「シャドー」という小説を発売したばかりの小説家のピーターは、ローマに到着した。

いつも帽子を被っているエージェントのブルマーと秘書のアンに出迎えられ、早速知り合いでレズビアンの記者チルダに早速小説の取材を受ける中、テレビの書評家のクリスチャーノ・ノベルティが黙って見ていたのが気になった。

世話掛かりの青年ジャンニが運転する車が到着する。

バッグを移動する際にアンへのプレゼントを渡そうとすると、バッグの中に入っていた服がズタズタに切られ、プレゼントしようと思っていた腕時計も壊されていた。
実は空港で誰かが隙を見て荷物に嫌がらせをしていたのだった。


万引き常習犯殺人事件


家に到着すると、中にはローマ警察の殺人課のジェマルニ警部とアルティエリ刑事が待っていた。

5時間前に「シャドー」を万引きした万引き常習犯女性が何物かに自宅で襲われ、殺されていたのだった。
犯人は、「死ね死ね」と言いながら口の中に「シャドー」のページを押し込み、剃刀で喉を切っていた。そしてそれを写真に収めた。


ピーターの小説が現場にあった事から聴取を求められたのだが、ピーターはそもそもローマ自体が初めてで疑いようはなかった。

警部は、玄関に置いてあったという封筒を渡した。
そこにはコラージュで、「シャドー」の引用が書かれていた。

「彼を悩ませる怒りを鎮める答えは1つ」

念の為と名刺を渡して帰ろうとする警部達に、ピーターは悪戯を受けたカバンを見せる。

そこへ、電話が鳴った。

ピーターが出ると、46ページだといって「シャドー」の文章を読み上げる声が聞こえた。
「彼は罪悪感や不安ではなく自由を感じた」

すぐに警部に伝え、別の電話から聞いてもらう。

犯人は家の前の公衆電話を使っていて、家の中が見えているようで「その女は恋人か」と聞いてきた。
警部達は慌てて外に向かった。

いずれ会うさと言って、男は計画があると言った。
ピーターが万引き犯の事件を伝えると知っているのか、と慌てて電話を切った。

警部達が降りて行くとすでに姿は消えていた。


オレンジ色のヒールの女


犯人だろうか。
薬を飲んで抑えているが、何かにもだえ苦しんでいる。

妄想の中で、白いワンピースの女性が海辺で複数の少年を誘惑している。
そこへ1人の少年が加わるが、女の頬を叩く。
すると女は他の少年に追わせて、少年を押さえつけさせた。
女はオレンジ色のエナメルのヒールで少年を蹴り、口にヒールを入れて顔を踏みつけた。


記者チルダ


次の犠牲者は記者のチルダだった。
同居人と住んでいたが、2人とも犠牲になった。

2人とも剃刀で殺し、やはり写真を撮っていた。



ピーターは、お湯が出なくて管理人に連絡をしていた。
アンと入れ違いで様子を見に来たのは、まだ若い娘のマリアだった。

そこへ犯人らしき男が近づいていて、またピーターの部屋に封筒を差し込んで行く。

手紙に気づくと、すぐに外に飛び出していくが、すでに人影はなかった。

手紙を開けるとラテン語で「レズビアンに栄光あれ」と書かれていた。

その時、チルダが死んだという連絡を受けた。


クリスチャーノ・ベルティの番組


ピーターは、クリスチャーノ・ベルティのTV番組に出演した。
ベルティが、書籍を基に日常の変質的行為について意見を求めてくると、ピーターは解釈が単純すぎると批判した。

ベルティは、殺される2人は変態だと決めつけ自論を繰り広げるが、ピーターは午後の番組には重すぎる話題では? と話しを和らげようとした。
ベルティは熱くなった事を認めたようで個人的興味だと言って、誤魔化した。


ベルティの熱弁の影響か、ピーターは自分の書籍が連続殺人に影響をしたのではないかか、と責任を感じ始める。

家に戻ると、ピーターは家の前を車で通るジェーンに気づく。
ジェーンとは、ピーターがNYに置いてきた元婚約者だった。
しかし、NYの家に電話をすると留守だった。

アンは荷物への悪戯はジェーンの仕業だと思っていた。


マリア


管理人の娘、マリアは恋人と喧嘩をして夜道に置き去りにされていた。
歩いていると、フェンスから突然ドーベルマンが吠えてきて驚き、うっかりフェンスを蹴ったりして挑発してしまう。
すると怒ったドーベルマンはフェンスを飛び超えてマリアを追って来た。

追いつかれ、噛まれては追い払い逃げるという事を繰り返しているとマリアは一連の事件の犯人と思える豪邸に迷い込んでしまう。

たまたま犯人が鍵を付けたまま外出していたので、何も知らないマリアは裏口から家の中に逃げ込む。

助けを求めつつも、返事はないまま部屋の中をウロついていると、殺人事件の記事や現場で撮影した写真が無造作に置かれているのに気付く。
機転を利かせ、いくつかをポケットに入れて家の電話を使おうとした時、帰宅した犯人が剃刀を持って近づいていた。

途中剃刀をおとし、オノに持ち替えてマリアを追い詰める。
塀を乗り越えて逃げていたマリアはオノで腹を切られて死んだ。


翌朝、掃除の人間が散らばった写真と共にマリアの遺体を発見した。


新しい手紙


ピーターの家にまた新しい手紙が届く。
「あの娘は気の毒だが殺すしかなかった。
堕落した人間は抹殺する。
いずれ本人も殺す」

マリア殺しが狙ったものではないという内容に加え、とうとうピーターを脅す内容になった。

ピーターは、家を知っている事から、知り合いの中に犯人がいると考えた。
まるでピーターが人を堕落させているかのような言われっぷりに、ピーターは書評家のベルティを思い出した。

電話帳でベルティの住所を突き止め、ジャンニと見に行った。
そこはマリアが殺された場所だった。
ピーターは、万引き犯やレズビアンを殺したのは堕落しているとベルティが考えたからかもしれないと考えた。
犯人はベルティかもしれない。

しかし、証拠がないしこのまま警察へ行っても妄想扱いされるかもしれないと、ジャンニと自ら確認しに行く事にする。


侵入


ピーターとジャンニはベルティの豪邸に侵入した。
家の中にはベルティがいるようだった。
中では、証拠隠滅の為何かを燃やしているが、まだ2人の存在には気づいていない。
ジャンニに窓を見張らせて、ピーターは裏に回った。

ジャンニからは何かの資料を抱えて読んでいるベルティが見えていた。
すると突然部屋の電気が消えて真っ暗になった。
部屋の中のベルティは驚きながらも誰かと話しているようで、「皆私が殺した」と告白した。
その直後、頭をオノで刺されて倒れた。

驚いたジャンニは突然の出来事に、茫然と立ち尽くすが家の中から何かが飛んできて窓ガラスを割ったので、驚いて逃げた。

逃げながらピーターを捜すと、頭を叩かれて血を流して倒れているのを見つけた。
新たな犯人がまだ中に居る、と慌てて2人は逃げた。

ジャンニは犯人の顔は見ていなかった。
だが、ベルティの会話を聞いて顔見知りなのではないかと言った。


家に帰ると、アンは警察に通報しようというが、犯人の顔を見ていないという理由でしなかった。
アンは、ピーターにしばらくニューヨークへ戻るように提案した。
ピーターは今夜だけ泊まって行ってくれ、とアンに頼む。
付き添って6年、初めて2人で夜を過ごした。
今まではジェーンが見張っていたから。


オレンジ色のヒールの妄想


オレンジ色のヒールを履いた女が、デートをしている様子を影から見ている。
男が去り1人になると、ナイフを持った手が草むらから出てきて女の腹を刺した。


すでにベルティは死んでいる。
この妄想は、殺人犯ベルティの妄想ではなく、第2の犯人の妄想だったようだ。



ブルマーの秘密


ピーターは目覚めると、ブルマーを訪ねてローマを離れる相談をしていた。
命の為なら仕方ないと、ブルマーはホテルを手配するから隠れていろと言った。

ピーターが出て行くと、そこへ隠れていたジェーンが入ってくる。
実はジェーンとブルマーは出来ているようだった。

2人はいつもの店で、とランチの約束をした。


ベルティの家


ピーターはジャンニに運転させて再びベルティの家を訪ねた。
トラウマになっているジャンニは、側に車を停めて屋敷には近づかずに待つ事に。


屋敷では警察が現場検証をしていた。
警部は、ピーターを見て「同一犯だからそのうちまた手紙が来るだろう」と言った。

ベルディはピーターの事を調べ上げていたようで、資料が沢山残されていた。
続く殺人がすべてピーターに絡んでいるので、警部本気で協力を依頼する。

するとピーターは、
「何かが欠けています。パズルのピースが。
死んだ者が生きていたり、その逆もあり得ます。

コナンドイルの本にある、消去法で残った物こそいくら信じがたくても真実だ」
と言った。

ピーターのファンでもある警部は「バスカヴィル家の犬」と知っていた。
「殺しに一貫性がない。
バスカヴィルの謎の鍵は巨大な犬で、この事件の謎の部分も信じられない何かではないか」


ブルマー


ジェーンの家に、オレンジ色のヒールが届く。
犯人の妄想のヒールと同じだった。

何もしらないジェーンはそのヒールを履いてブルマーとのランチの待ち合わせに行く。

ブルマーが待つ側のバーでは、薬を飲む犯人も待機しているようだった。

ブルマーはやっと待ち人を見つけたと笑顔になると、そのまま何かで腹を刺されて死んだ。

倒れたブルマーに気づき、人だかりができると、オレンジ色のヒールが近づいて、離れて行った。


ジャンニ


ピーターはアンが押さえたパリのホテルに行く事になった。

行き先はジャンニにでさえ秘密で、送迎もアンがするので、家でジャンニと別れの挨拶になる。
ジャンニは「パズルの欠けたピースを思い出してみます」と言った。


事件が気になったジャンニは、夜嫌がっていたベルティの家に行ってしまう。
車を降りた隙に、犯人が車のキーを抜く。

現場検証が終わり誰もいないはずの屋敷で、ジャンニは最後に見たシーンを思い出す。

私が殺したと告白するベルディは確かに犯人のはず。
でも、そのベルディを殺したのは誰?

答えが見つからないまま車に戻るとキーがない事に気づき、車の中を探し出す。
そこを後ろから紐で首を絞められる。
なんとか振り向いて見た顔は誰だったのか?


ジェーンの告白


アンがピーターの部屋の片づけをしていると、ジェーンから電話が掛かってくる。
ピータ―と話したいというがすでにイタリアを発っている。

ジェーンは自分の中に別人がいるみたいと言い出す。
ローマに居る事も自白し、アンに助けを求めた。
自分がしたことのすべてを話すという。

住所を聞いてアンは駆けつける。


しかし、ジェーンが銃を持ってアンを待っていると何者かが突然窓からオノを振り下し、銃を持ったジェーンの腕を切り落とした。

壁一面に吹き出す血。
後ろからオノで刺され、振り向くと腹を切られて死んだ。

そして再び、オレンジ色のヒールの女が刺される妄想を見る。
倒れて靴を脱がされている。


犯人の妄想だとすれば、ジェーンが真犯人でもないようだ。


真犯人


そこに、車が到着し家の中に女性が入ってきた。
犯人は慌ててオノを振り下ろした。

うつ伏せに倒れた女を見て、茫然とし「アン」と呼びかけるその犯人はなんとピーターだった。
さすがに愛するアンまでも殺してしまった事にショックを受けている。

そこに警部が踏み込んで来た。
逃げる気も失くしたピーターは「何故アンが」と呟いている。
するとそこにアンも入ってきた。

遺体を引っくり返すと、アルティエリ刑事だった。
ブルマーの家政婦からブルマーとジェーンの浮気を聞いて、確認の為アルティエリ刑事はジェーンを訪ねていたのだった。

ピーターはそのまま部屋の隅に膝を抱えて子供の用に泣き出した。
警部に銃を向けられると「ノン」といって怯えた。

警部はピーターに言う。
ピーターの言ったヒントが役に立った。
「消去法で残った物こそ、いくら信じがたくても真実だ」

ピーターは他の女は殺してないと否定し、笑い出した。
「ベルティが犯人と知って、全てを思いついた。
残りは小説を書くような物」
「完璧な復讐か?
犯人を殺し、彼の犯行に見せかけ殺す。
婚約者とその愛人。
最も憎い2人」


立てというと大人しく言う事を聞くが、ポケットから剃刀を取り出して自らの喉を切って倒れた。
思わず駆け寄るアン。
ピーターの側にいたいというが、警部に連れ出された。

警部は、車の無線で応援を呼ぶ。
アンはピーターが犯人であったことにショックを受ける。

実はピーターが10代の頃、知り合いの少女が惨殺されていたという事件があったことを警部は国際警察から聞いたという。
ピーターが疑われたか証拠不十分で不起訴になっていた。

もしピーターが犯人だったら、その記憶にずっと悩んだはず。
警部は「シャドー」の一文を思い出す。
「彼を苦しめた屈辱感を簡単に消し去った行為。
それが殺人だった」


警部はアンを車に待たせて再びジェーンの家に戻った。
するとピーターの遺体が消えていた。
側に落ちているカミソリを調べると、それは血が吹き出るおもちゃだった。

イニシャル入りのハンカチが落ちているのにも気づき、拾おうとしゃがむと背後にピーターが立っていた。
後ろからオノで切りつけた。
倒れる時にオブジェなどが倒れて大きな音がした。

車で待っていたアンが物音に気になって見に行く。

ドアは鋭利なオブジェが引っかかっていて、すぐに開かなかった。
部屋の中ではピーターがオノを構えている。
一度はアンの死を嘆き悲しんだが、すべてを知られた今アンでさえも生かしてはおけないのだろう。

アンが無理やりドアを押し開けると、オノを振りかぶってピーターが迎えるが、その時にオブジェも押し倒しており、ピーターの腹に刺さって死んだ。


おしまい


かんそう:


何の余韻もなくスパっと犯人が死んで終わる所は、お馴染みの定番でした。
ミスリードをしっかり用意しつつも、腑に落ちない明らかなズレもあって、いろんな意味で気持ち悪さを延々に味あわせるのはさすが。

特に突っ込みたいのは、そもそもベルティに犯人をなすりつけようと思ったのなら、最初に本人殺しちゃまずいでしょ!
むしろ、死後の犯行は完全別人じゃんw
しかも、そこからピーターの関係者が濃くなってるしw

どっちかといえば、ベルティにあの2人の「不倫」を堕落だと思わせて狙わせればよかったのにね。
でも、根っから堕落していたピーターは自分で殺したかったんでしょうね。


描写は省いていますが、女性を殺す殺人シーンのしつこさも健在です。
男はあっさり目w

ゴブリンの音楽も良い感じです。


犯人が最初から登場している事、必ず脅しの電話が来る事などの定番のダリオ・アルジェント・スタイルに「妄想」「夢」という要素が加わって、現実的な怪しさに更にシュールな怪しさのてんこ盛りに。

この夢のシーンもなかなか謎めいていて、夢を見ているだけだとオレンジ色のヒールの女性に虐げられている記憶の方が強く感じます。
でも、最後は殺していたという。

今のピーターは小説家として成功者で、こういった屈折した過去があるように見えないのが、ある意味リアルなのかもしれません。

大人しくて良い子のジャンニまで殺しちゃったのは、ピーターやり過ぎ! って思いました。
顔見てないって言ってるんだし、殺すならあの時一緒にじゃないかな……。
それこそ、ベルティと相打ちしたと思わせてっていうか、ピーターって自分で運転出来ないんだっけ?w

ともあれ、ダリオ・アルジェントのサスペンス作品としては、定番が詰め込まれていて大満足です。




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