2016年1月29日金曜日
トーク・トゥ・ハー
2002年作品
監督ペドロ・アルモドバル
レオノール・ワトリング、ハビエル・カマラ、ダリオ・グランディネッティ、ロサリオ・フローレス、ピナ・バウシュ
あらすじ:昏睡状態にある二人の女性とその二人につきそう二人の男のドラマ。
同じような境遇でありながら、実は違う二人。
1人は恋人である女性だが、もう1人にとっては赤の他人。だが、ずっと密かに憧れていた女性。
愛する者が動かなくなり、悲観する男と、愛する者と接する事ができて、むしろ生き生きと看病する男。
違いはあるが、次第に、友情が芽生えていく。
そんなある時、動かぬ女性が妊娠している事がわかり・・・。
女性賛歌三部作、と言われるのが、本作と「オール・アバウト・マイマザー」「ボルベール〈帰郷〉」
ということですが、他の2作に比べて、本作はちょっと毛色が違うような気がします。
描き方が変化球なだけで、それにまんまと惑わされているだけかもしれませんが、これはどちらかというと男性が主役で、女性はまるで映画の小道具のように感じました。(特にネガティブな意味ではないですが)
ともかく、まるっきり個人的な意見なのですが、「病人」ものはダメですね~。
一応、監督だからということで見たことは見ましたが、そうじゃなければまずあらすじで、見ないです。
とはいえ、感想なんて個人的なもの以外、何もないですからね。
私はダメでした。
そもそも「女性賛歌推し」も、ダメなので、本作がその三部作であるならば、なおさらなのかもしれませんね。
それにしても、この映画は何を描きたかったんだろう・・・。
三部作という事を意識すると、なんだか余計こんがらがりそうなんですが。
賛歌、というには、本作に出ている女性は「昏睡」しているのがメインですから、その間に起こるドラマについては、本人は何も関係できるわけなく。
勝手に過ぎていく出来事なので、「妊娠」という大きな出来事にしたって、「知らぬ間」ですから、これをどう解釈すればいいのか、難しいです。
それよりも、やっぱり男性側のドラマで考えたほうが、いろいろ考えようがあります。
多分、一番の軸となるエピソードは、「昏睡していた女性がある時妊娠してしまった」という事だと思うのですが、その犯人とされたのが、献身的に看病していた看護師。
ですが、彼は犯人ではない、と信じ切る、同じ境遇から友人となった男。
とはいえ実際、本人が否定しないから刑務所に入り、その後、彼女のいない世界に耐えられず、自殺してしまうのですが、このあたりの流れ的に、理解しにくくもあり、だからこそ妄想すると面白い、とも言えます。
まず、彼が本当に犯人だったら、どのみち刑務所に入ったら、しばらくは会えないので、「否定」しつづけるのではないか?
犯人ではないけど、彼女の子供なら父親になりたいと思って、否定しないでいたら、刑務所に入ってしまった、というくらい、アホなのか?
では、真犯人は誰なのか?
私は、なんとなくなんですけど、まず犯人が誰かというのは、監督にとってはどうでもいい。
ペドロはとにかく、こうして数本を改めて考え直してつくづく見えましたが、「懐妊」というテーマも好きですよね。
そして、いつもそれと同時に感じるのが、「処女懐胎」。
キリスト教にはまったく詳しくないので、何か勘違いもあるかもしれませんが、何故かと言うと、ほとんど「父親」の存在がないんですよね。
実際に最初からいない(誰かわからない)、もあれば、いたけど死んだ、など、とにかくいない。
そして、描き方としては神聖なものとしているように感じられるので。(母はシスターだったり)
なので、今回も、どっちかというとファンタジー入って、その域なのではないか、と。
まあ、そう考えると、不思議と「女性賛歌」には近づいてきますね。
要は、看護師の一方的な愛が、美しいとかそういうのを描きたかったのではなくって、「懐妊」は彼女が目覚める為の儀式というか、きっかけというか。
想像妊娠じゃないけど、自力で妊娠したんじゃないでしょうかね。(結構マジ)
同時に、目覚めるのならば、邪魔なものも排除しなければ、という、昏睡しながらも状況をコントロールする事ができるという女性の肉体の神秘?
これぞ、男女間で、女性にしかできない事、ですからね・・・。
なので、死んでしまった彼は、最初から「死ぬ役」でしかなかった、とも言えるのかなぁ。
そもそもかわいそうだけど、普通にキモイですもんね。
父親だとしたら、本当にヤバイし、父親じゃないのに父親になりすまそうとするのも、変。
最後、彼女は、無事昏睡から覚めますが、死産もしていたので、彼女にとっては寝ている間の事は、誰かに聞かない限り、ある意味痕跡がないんですよね。(看護師も死んでいるから)
で、もう1人の男が、おそらく「トーク・トゥ・ハー」するんだろうな。。。 と思いつつ、なんとなく、そんな話は必要ない、というのが私的には「女性賛歌」のような気がしました。
男たちは女性の愛を欲しがったけど、女は男の愛は求めていなかった・・・、みたいな?
(ちなみに、もう一組のカップルは、昏睡する前に彼と別れようとしていた、というのもありつつ)
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