2018年2月11日日曜日

バスケット・ケース



バスケットケース 【DVD】

1982作品

ケビン・ヴァン・ヘンテンリック、テリー・スーザン・スミス、ビヴァリー・ボナー


あらすじ:


バスケットを抱えてニューヨークにやってきた少年。
その目的とバスケットケースの中身は……。




殺人


医師のリフランダーが自宅でモンスターのような手に襲われて死亡する。


ニューヨーク


ドウェインは、大きなバスケット・ケースを抱えてニューヨークに初めて来ていた。

世慣れしていないようで、安宿のカウンターで大金を出して支払いをして住民に目をつけられる。
また大きなバスケットも興味の対象となった。

部屋が決まるとバーガーを大量に買い込み、バスケットの南京錠を外して蓋を開ける。
するとすごい勢いでケースの中の何かはハンバーガーを食べた。

ドウェインはバッグから血のついたファイルを取り出した。
それは殺された医師リフランダーの家から盗んだものだった。
そこからH・ニードルマン、J・カッターの2人のサインを確認し、ニードルマンの住所を調べた。


バスケットケースの中身とは、テレパシーで会話が出来るようでドウェインは独り言のように会話をした。


ニードルマン


翌日、ドウェインはニードルマン医師を訪ねる。やはり大きなバスケットケースを抱えている。

受付けのシャロンには、先生を驚かせたいからと偽名を伝えるように言った。

診察室に入ると、具合が悪い振りをして上着を脱ぎ出す。
すると、ニードルマンはドウェインの裸を見て驚いた。
ドウェインの脇腹にある大きな傷跡には、見覚えがあったのだった。

ドウェインが帰った後、頭を抱えたニードルマンはリフランダーとカッターに電話をしていた。
カッターは脇腹に傷を負った少年が訪ねてきた、リフランダーは電話に出ないと聞いても「そんな医師は知らない」と気にしなかった。



帰り際、ドウェインはシャロンからデートに誘われる。
すると、バスケットケースを遠くに置いてひそひそ声で約束をとりつけた。
ケースの中身には聞かれたくないのだった。


映画館


診察所の帰りに、ドウェインは映画館に寄った。
上映中、うつらうつらとしていると側に居た男がバスケットケースを盗んで行った。

気が付いたドウェインは男を追ってトイレに駆け込んだ。
しかしすでに男はバスケットケースの中身に襲われ、顔を血まみれにして逃げる所だった。


バスケット・ケースの中身


夜になり、再びニードルマンの診察所に向かった。
シャロンが帰るまで身を潜め、ニードルマンが1人になるのを待った。
そしてバスケットケースの中身を解き放つ。

それは肉の塊に顔と手がついただけの凶暴なフリークスだった。
もともと結合双生児だったドウェインの脇腹についていた、兄ベリアルなのだ。

体型では完全に劣っているのに、ものすごい怪力なのかあっという間にニードルマンを襲い、殺害した。
そして、住所録を盗み出しドウェインに渡す。
そこからカッターの住所も入手すると、バスケットケースに蓋をして何もなかったかのように宿に戻った。


デート


翌日、ドウェインはシャロンとの約束をベリアルには、なんとか誤魔化して出かけた。

しかし、ドウェインと女子がキスをするとテレパシーで察知しベリアルは暴れ出した。
言葉は放せないようで雄叫びを上げて、部屋中壊しまくった。
その騒ぎに近所の住民も集まり出す。
まるで獣が暴れているようだった。

管理人が合いカギでドアを開けると、部屋の中は散乱していたがベリアルは自らケースに入って隠れていた。
誰もいないとわかり、野次馬は解散したが1人の男が部屋の中の大金に目をつけていた。

男は静まった後、ピッキングで部屋に入り金を盗んだ。
もっと欲を出したのか、引き出しの中もチェックし、次にバスケットケースの中身も確認しようとした。
そして蓋を開けた時、ベリアルに襲われた。

またしても悲鳴が聞こえ、管理人達が駆けつける。
同時に今度はベリアルの怒りがドウェインに伝わったのか、ドウェインも急いで宿に向かった。

男は顔中切り刻まれて血まみれで死んでいた。
窓から何かが逃げた形跡があった。


ベリアル


刑事が帰り、ドウェインがベリアルを探した所トイレの便器の中に隠れていた。
怒るベリアルに、デートを白状する。

2人の会話から、医師を殺したいと言い出したのはベリアルだと分かった。
その為にニューヨークに来ていたのだった。
でもドウェインも、嫌々協力しているわけではなく、ベリアルとは離れられない事を認めていた。


その夜、バーへ出かけたドウェイン達は同じホテルの顔なじみで親切な女性ケイシーと偶然出会い、一緒に飲む事に。
酔っぱらったドウェインは、バスケットケースの中には兄ベリアルがいると暴露を始める。
同じく酔っていた相手は、それを酔っ払いの作り話だと聞き流した。

2人の出産で死んでいた母親。
その恨みを産まれた子供にぶつけた父親。
「こんな肉の塊を何故助けた!? あれは息子ではない。妻を殺した化け物だ」

味方は叔母だけで、ずっと閉じ込められていた。
兄は暗闇が好きで人に見られるのが嫌い。
言葉は発せず、脳に直接話しかけてくる。何時間も。そしてドウェインの考えまで分かってしまう。
もともとはドウェインもそうやって会話していたが、離れて出来なくなった。

12歳になった時、叔母の留守に離れていた父親がやってきて2人をむりやり切り離す事に。
せめてドウェインだけでも普通の息子として育てようとしたのだった。

頼んだのは素性も良く知らない3人の医師。ニードルマン、リフランダー、カッター。
女医カッターはベリアルを人間ではないとも言い切った。


手術後にドウェインが気づくと、ベリアルは生きたまま、ゴミ袋に入れられ捨てられていた。
そしてすぐに父親へ復讐をする。

地下室に仕掛けた大きな丸い歯のカッターにおびき寄せ、真っ二つに切り裂いた。

そんな2人を叔母は庇い、ベリアルは死んだ事にしたまま面倒を見続けた。
父の死でベリアルは、強くなっていった。

2人は別々になっていたが、誰にも干渉されなくなり、ある意味一番幸せな時期を過ごしていた。
叔母が死ぬまでは。


ケイシー


ケイシーは、すっかり酔いが回ったドウェインを部屋に送り、話しの流れからバスケットケースの中身が気になり確認した。
しかし、中は空っぽでやっぱり作り話だと思うしかない。

ところが自室に戻ると、こっそり紛れ込んでいたベリアルを見てしまう。
またしても大騒ぎとなるが、酔っぱらって寝ているドウェインは何も気づかなかった。

ベリアルはケイシーの下着を盗んでバスケット・ケースに戻っていた。


カッター医師


翌日、2人はカッター医師を訪ねると「獣医」の看板を見てショックを受ける。

診察が始まり、あの時の双生児の片割れだと分かると、カッターはふてぶてしい態度でドウェインを追い返そうとした。

だがバスケット・ケースの中からベリアルが飛び出し、カッターに襲いかかる。
怪力を持つベリアルは何をしても剥がれず、カッターを血まみれにする。

カッターは引き出しのメスを取り出して反撃をしようとするが、看護婦達が騒ぎにドアを開けて入ってきた時には、逆に顔中をメスだらけにされていた。


兄弟喧嘩


カッターを襲ってホテルに逃げ帰っていたドウェイン達の前に、ニードルマンの死を知り怯える、シャロンがやってきた。
「1人でいたくない。あなたといたい」

ドウェインは、ベリアルの事を考えてシャロンに冷たくしていたのだが、それでもドウェインを頼ってっ来るシャロンを追い返せなかった。

しかしホテルの部屋でいい雰囲気になるとベリアルが黙ってはいない。
それは、自分に出来ない事をするドウェインに対する嫉妬のようだった。

バスケット・ケースから顔を出し不気味な雄叫びを上げて、邪魔をしてくる。
驚くシャロンになんとかベリアルを見られないよう、ドウェインはシャロンをシーツでぐるぐる巻きにしてホテルの廊下に出した。


そして、ある意味初めての兄弟喧嘩に発展する。
これまでは兄の言いなりだったのだろう、ドウェインは初めて兄より大事に思える者が出来た事から、邪魔する兄を「お前なんか大嫌いだ」と責めた。


その夜、ドウェインが寝静まった頃、ベリアルはバスケット・ケースを抜け出して枕元に近づき、ドウェインに何かの術でもかけるかのように目を赤く光らせた。

そして開いた窓を見てまた目を赤く光らせる。
それは勢いをつける為なのか、窓に飛び上がると雄叫びを上げた。

すると五体満足なドウェインの身体を乗っ取ったイメージになり、裸のドウェインがシャロンの家まで走って行く。
そのドウェインは、寝てるシャロンに触れ始める――。


その頃、ホテルで寝ていたドウェインが目を覚まし、ベリアルの不在に気づく。
同時に寝ていたシャロンも目を覚まし、自分の上に乗っかっている赤い目の不気味な怪物に気づいて悲鳴を上げていた。

騒がれた事で、ベリアルはシャロンを殺した。

ドウェインが到着した時、まだベリアルは死んだシャロンの上に乗っていた。


ドウェインは、当然ベリアルを責めた。
ホテルに着いてもバスケット・ケースを振り回しながら、1人大声で怒鳴り続けるドウェインはどう見てもおかしな人だった。

騒ぎにホテル中の人が集まる中、とうとうベリアルも我慢できずに反撃に出る。
皆が見ているのも構わず姿を現し、ドウェインの股間を潰して身体ごと持ち上げた。
そして悲鳴を上げるドウェインに飛びつくと、2人はそのままもつれ合って窓から落ちてしまう。

なんとかベリアルの手が、途中のパイプに捕まって2人はかろうじてぶら下がっていたが、もう一方のベリアルの手はドウェインを助ける為だろうが、首を掴んで絞めていた。
そしてベリアルの手の中でドウェインが息を引き取ると、ベリアルもパイプを掴んだ手の力を失い2人一緒に落下し、死んだ。


その様子を上から見ると、2人が結合していた頃のようになっていた。


おしまい


かんそう:


TVで放送していたので、懐かしいなと思って運年っぷりに再見しました。
正直、若い頃に見て内容を知っていなかったら、今になってこんな悪趣味そうな作品を見ようという気にはなっていなかったと思います。

それに加えて今では、MOMAのフィルムコレクションにリストアップされる、アート作品と認められているというのも背中を押されました。

それを意識して見たせいか、単純な私には、初見の頃よりもなんだか格調高く感じられましたw

そんなこんなで改めて見ると、「単なる悪趣味」のインパクトに隠された表現さえ変われば、「耽美」とも思えるような物語があった事に気づかされました。

もともと単なる見た目の奇抜さだけじゃないからこそ、「カルト」として伝説化されていたのかもしれませんが。
やっぱり最初に見た時は、過剰なスプラッター表現やベリアルの存在などに惑わされてそんな事にまで気を回す余裕はありませんでした。

今、ある程度ストーリーを知ってて見た事と、MOMA効果でこの作品に存在する「文学」的な要素を感じられた気がします。


オリジナル全否定になってしまいますがw ベリアルが怪物じゃなければたちまち「少女マンガ的耽美」なストーリーになるんですよね。
結合して産まれた事から強い絆を持つ双生児が、悪い方と良い方に切り分けられた。
それでも2人は、2人で1つだったけど成長し、恋をするようになるとバランスを崩していく……。探せばありそう!?
もちろん、好みとしてはまだこっちの路線の方がいいですね。


そういえば、シンプソンズのホラーでお馴染み、ハロウィンスペシャルにも同じようなエピソードがありました。(シーズン8「ハロウィーン・スペシャルVII~もう一つの世界~」)

Hugo Simpson


バートが実は元シャム双生児の片割れで、本人も気づかぬまま邪悪な方は産まれて切り離されてからずっと閉じ込められていた、という。
言われて脇腹を確認すると大きな傷にハッとするんですがw

さらに本当の落ちは、実は邪悪な方は閉じ込められていた醜いヒューゴではなくて、ずっと表で生きていたバートだったという。

これが本作の影響を受けた、かどうかは時間もかなり空いているので定かではありませんが。


まあとにかく、時代的にクレイアニメのようなカクカクした、ストップ・モーション・アニメで動くベリアルには当時から怖いというよりは、何処か滑稽さが感じられました。

また、便器に身を隠す事が出来るサイズ感と、医師に飛びついた時のサイズ感の明らかな違いには、今見ると某黄色い人気キャラのご都合サイズ感を思い出しました。
(ある時は主人公の頭の上に乗ったり、肩に乗ったりするけど結構重そうな大きさだったりする感じ)


そういえばバスケット・ケースが〇ンスターボールだと思えば、ベリアルって〇ケモンっぽいなと思ってしまいました。(気に障ったらすみません!)
常に一緒に冒険し、バトルとなるとベリアル、君に決めた! みたいな。

そう思うと、いつまでも2人仲良く冒険の旅を続けて行ってほしかった、という寂しさを感じる終わり方をしています。
そしてあの終わり方こそ、この作品がMOMAにも認められる事になるのに大きく役立っているように感じます。
それまでのスプラッター的悪趣味を、一掃するような文学的空気が感じられるので。









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