2018年6月10日日曜日

名探偵登場



名探偵登場

1976年 アメリカ

ピーター・フォーク、トルーマン・カポーティ、デイヴィッド・ニーヴン、ピーター・セラーズ、ジェームズ・ココ、アレック・ギネス、エルザ・ランチェスター、
ロバート・ムーア、マギー・スミス、エステル・ウィンウッド、ジェームズ・クロムウェル、ナンシー・ウォーカー、リチャード・ナリタ、アイリーン・ブレナン


あらすじ:


ある夜、ミステリーマニアの大富豪に集められたのは、全員が名探偵だった……。




晩餐と殺人


世界各地の名探偵達が、ある日ライオネル・トウェインという富豪から招待状を受け取っていた。
トウェインは、1906年サンフランシスコ生まれ。
結婚後2時間で別居。
身体的特徴として小指がない。
子供は、32歳の娘アイリーン、自称リタがいる。


招待を受けて集まったのは、ディック・チャールストンと妻ドーラと愛犬マイロン、シドニー・ワン警部と日本人の養子ウィリー、ミロ・ペリエと運転手マルセル、サム・ダイヤモンドと秘書兼愛人のテス、ジェシカ・マーブルズと看護師のミス・ウィザーズ。


トウェインは、探偵達が来る前に様々な仕掛けを屋敷に用意していた。

電話線を切り、ドアの蝶番を緩める、時計の長針を取り、玄関には石造が落下する位置に足のマークを描いておいた。
そのおかげでほとんどが落石を避けていたが。


一番先に到着したのはシドニー・ワンだった。

玄関のベルを押すと悲鳴が鳴り響いた。
屋敷の窓からは電気仕掛けで嵐の特殊効果も。

迎え出た盲目の執事ジェームズサー・ベンソンマムに案内された部屋では、暖炉に火をつけたというが燃えていたのはベッドだった。

2組目のチャールストン夫妻は、故トウェイン夫人が自殺した部屋に通された。
以来9年間開かずの間で、屋敷で最も陽気な部屋だというが、部屋の中は埃と蜘蛛の巣だらけで陽気さの微塵もなかった。

しかし良く見ると埃は小麦粉で蜘蛛の巣は綿アメの脅かしだった。


3組目のミロ・ペリエとマルセルは、マルセルがまんまと落石に当たっていたが大男で頑丈だった。

4組目は、サムとテスだった。


コック


晩餐会の為に雇ったコックが食堂の入り口から入ってきた。
しかし目の見えないベンソンマムは、なかなかその存在に気づけなかった。
なぜならその女性イェッタは、口と耳が不自由だという説明を書いた紙を見せていたから。
その上、イェッタは英語も不自由だった。

ぶつかった事で存在を認識したものの、2人はまったくコミュニケーションが出来なかった。
これを作れ、と食事のメニュー表を渡されても、イェッタにはメニューを理解する事もできず何を頼まれているのかもわからず、ただ椅子に座っていた。


晩餐会


9時になり晩餐会の時間になった。
その頃には、ミス・マーブルズも看護師の車椅子を押して登場していた。
52年間一緒で、今では立場が逆転してミス・マーブルズが看護師の看護師状態になっていた。

探偵たちは久々の再会をそれぞれに喜んだ。


乾杯をすると、ワンがワインに毒が入っている事に気づいた。
だがそれはワンのワインだけで、サムは犯人は執事だろうと決めつけた。
執事に確認すると、ワインを用意したのはトウェインでワンにはネバっこいグラスを、と指定されていたという。

執事はスープを配り出すが、何も作っていないので空のポットから注いで行く。
すぐに空気だと指摘されてコックに文句を言いクビを告げるが、通じる訳がなかった。


席順も連れと引き離されて不自然だったので、ワンとディックが席を替わろうとした時、2人の席に壁に飾ってあった剣が落下して突き刺さった。
もしそのまま座っていたら2人共、串刺しになっていた。

トウェインはあの手この手で名探偵達に勝負を挑んでいるようだった。


ゲーム開始


すると、突然明かりが消え真っ暗闇になった。
次に明かりがついた時には、トウェインが上座に座っていた。

トウェインは単なるゲームだという。
それを聞いた探偵達は呆れて帰ろうとするが、誰も出てはならんと自動で屋敷にロックを掛けられてしまう。

トウェインは自分を最高の犯罪学者だといい、5人の名探偵が背中を12か所肉切り包丁で刺された死体を発見すると話し出した。

しかも誰もこの犯罪を解決できない。
深夜12時に誰かがこの家で惨殺される。
被害者は今現在この席にいる。
そして殺人犯もこの中の誰かだ。

さらに正解者には100万ドルを出すという。

明かりが消えると、トウェインはテーブルの反対側に移動していた。
すばしっこい奴だと言われると、少しも動いていなく鏡のトリックだと言った。

椅子のボタンを押して、今度は本当に退室をした。
自動でドアが開き、椅子のまま、なかなかの勢いで退散していった。


協力


トウェインが退室すると、探偵達はそれぞれに動こうとしたが、ワンがそれを止めた。
「被害者はこの席の人。
皆が一緒なら目撃者いる」

それに納得をして、全員がテーブルに座ったまま手を繋いで12時を待つ事にした。

そこへイェッタが無音で叫びながら登場した。
何かをジェスチャーで伝えようとしている。
ワンがイェッタの書いたメモを読み上げた。
「執事が死んでいる」


執事の死


ワンとマーブルズとペリエが調理場へ確認をしに行った。
すると、確かに執事はテーブルにうつ伏せになって死んでいた。

だが殺人予告の12時にはなっていない。
ワンは、これは注意を逸らす為の殺しで本番はこれからだと言った。

マーブルズが調理場のナイフが1本無くなっているのに気付く。
時間は11時31分を過ぎた所だった。

3人は、慌てて食堂に戻る事に。

その時ペリエが執事の手に紙が握られているのに気付く。
それは請求書だった。
執事、コック、椅子等がレンタルだった事が分かる。


3人はすぐに食堂に戻った。
しかし、ドアには鍵がかかっていた。
声を掛けても返事はなく、執事の持っているであろう鍵を取りにペリエが食堂に戻った。

すると、執事の身体は消え、服だけが椅子に座っていた。
ペリエは鍵を取り、食堂のドアの前にいるワンとマーブルズにその事を報告した。


消えた客達


鍵を使って食堂のドアを開けると、他の客達が全員消えていた。

秘密の通路でもあるのかと思い調べるが、通路は見つからなかった。

その時、壁のヘラジカのはく製から声がした。
目には穴が開いていて、トウェインが覗き見していたのだった。
「ヒントをあげよう。他の皆さんは食堂を出ておりません」


何のことだか良く分からないが、10まで数えてノブを回してごらん、と言われ半信半疑で一度外に出た。

すると次にドアを開けた時には、食堂に全員揃っていた。
皆、食堂を一歩も出ていないという。


執事の毒殺と肉切り包丁が無くなっている事、遺体の蒸発、そして空の食堂の事を伝えた。


銃声


そこへ銃声が響いた。
サムとディックが部屋の外の様子を見に行った。

食堂へ行くと、今度は服が消えて裸の執事だけになっていた。
ディックが身体を調べても銃痕はなく、単なる陽動作戦ではないかと言った。
「無意味な手掛かりをばらまいて混乱させ、奇々怪々の事件で本命の殺人までの時間を空費させる」

サムも納得すると、2人は食堂に戻る事にした。

途中、ディックはトイレに寄った。
サムは1人で食堂のドアを開けると、ペリエたちの言う「誰も居ない食堂」になっていて驚いた。
別のドアには鍵が掛けられており、サムはディックを呼び戻そうとトイレのドアを開けた。

するとそこは何故かディックたちの部屋だった。
もう一度閉じて開けると、今度はディックが居るトイレだった。

訳が分からなくなり、食堂に戻ろうとするとドアが閉まっていた。
サムには閉めた覚えがないので銃を用意してドアを開けると、ペリエが待ち構えていた。
元の食堂に戻ったのだった。

またしても人が増えたり減ったりした事で、探偵達は推理をした。

食堂は2つある!
トウェインは電気の天才だから電気仕掛けで一瞬の間に部屋を入れ替えているのだろう、と。

ペリエが実演の為、外から3回ノックしてドアを開けてみる事に。

ノックがしてドアが開くと、入ってきたのはディックだった。
ディックも同じ推理をしていた。


12時


ペリエが戻らないまま、12時まであと40秒となったので探偵達はテーブルの席に座った。

すると鍵のかかっている別のドアでノックの音がした。
サムが銃で鍵をこぎ開けると、何故か執事の服を着たペリエが勢いよく入ってきた。
理由は聞くな、と叫んでいる。

あと10秒となった所で、食堂の隅に座っていたはずのイェッタが居なくなっていた。
12時直前に、探偵達は手を繋いだ。

時計が12時を知らせたが食堂では何も起きなかった。

直後、ドアをノックする音が響いた。
ワンがドアを開けに行くと、そこに居たのはトウェインだった。
何も起きてない、とワンが話しかけるとトウェインはそのまま前に倒れた。

背中には肉切り包丁が刺さっていた。
予言した被害者はトウェイン自身だったのだ。

遺体の確認をしようとすると、サムがトイレに行くと言って食堂の外に出たがすぐに戻ってきた。
廊下の途中で大きな箱を見つけたのだが、その中に入っていたのはバラバラになったコックのパーツだった。
イェッタはロボットだったのだ。


動機


探偵達は、遺体に布を掛けて客間に移動した。

ワンは、トゥエインには共謀者がいたはずだと主張した。
ディックは自殺の可能性を提案した。

12時までは協力関係にあった探偵達は、推理に100万ドルが掛かっているとなるとたちまちライバルに戻っていた。

ワンはディックの推理をヘボといい、ディックが裕福そうに見せて金に困っている事を知っていると言い出し、夫婦喧嘩を炊きつけた。

ディックは、トゥエイン殺しには関わっていないし、誰にでも機会はあったと主張する。
しかもトゥエインと因縁のある者がいる、と。

ミス・マーブルズ。
過去、婚約までしていたが54年前に捨てられていた。

マーブルズは話しは逆で、自分が捨てたと言う。

ペリエは父親殺しを唱えた。
すると、サムの秘書テスが父親ではなく、トゥエインは叔父だと告白した。
26まで、優しくてよくサーカスに連れて行ってもらっていたという。

ペリエは再び叔父じゃなくて父親殺しだ、と繰り返す。
トゥエインの隠し子、ワンによる。

ワンは、自分は養子だと否定した。
実は、トゥエインは19になった時にワンが東洋人だと気づいて追放していたのだった。
確かにあの時は殺したかった……、といえばペリエも同じだろうと付け加える。

ペリエはトゥエインに、マリー・ルイーズという愛する存在を殺されていたのだった。
ペリエの愛犬のプードルだった。
その恨みは覚えている。

サムは、トゥエインにゲイバーに居る所を見られていた。
本人は捜査のうちだというが、女装姿を写真に撮られていたとテスがバラした。


結局、集められた探偵全員に、トゥエイン殺しの動機があった。

謎を解く為には、まず睡眠を取ろうとそれぞれ部屋に戻る事にした。


追い討ち


各部屋では犯人の追い討ちが仕掛けられていた。

ワンの部屋には、毒蛇。
ディックのベッドの上にはサソリ。
マーブルズの部屋にはガスが撒かれ、ドアには鍵がかかって逃げられなかった。

サムの部屋では、ゲイバーの話しは皆を騙す為の作り話だと話していた。
動機があると思わせれば、今に誰かがシッポを出すだろうという作戦だったのだ。

サムが容疑者を捜そうと廊下に出ようとすると何かの音がして、ドアの下から手紙が差しこまれた。
「この音は時限爆弾だ。30秒で爆発。犯人より」
ドアには外から鍵が閉められていた。

ペリエの部屋は、天井がどんどん下がって来ていた。


犯人



トゥエインは書斎で、殺しリストの名前にチェックを入れていた。
正体した探偵達は全員これで死んだだろう。

しかし、ワンが銃を持ってまだ生きている、と声を掛けた。
息子が蛇を退治して生き延びていたのだった。
そしてトゥエインを「ベンソンマム」と読んだ。

確かに顔を上げると、トゥエインではなくベンソンマムだった。

ベンソンマムは目が見えていた。
100万を要求するワンに、何故ベンソンマムだと分かったのかと聞くと古い探偵小説の定石だと言った。
「犯人は執事」
死体はコックと同じプラスチック。
調べている間に、ベンソンマムがトゥエインを殺した。

ベンソンマムはお見事だ、と金を渡そうとした。

が、そこへマーブルズと看護師がやって来た。ガスは看護師が全部吸ってくれたので助かったという。

今度はベンソンマムを「本名アーヴィング・ゴールドマン」と呼んだ。
トゥエインの弁護士をしていた男で、そもそもトゥエインは5年前に死んでいたという。
死体は最近ゴールドマンのロッカーから発見されていた。

ゴールドマンはそれを認めた。
100万ドルはマーブルズのもの、と思った瞬間今度はディック夫婦が待ったをかけた。
サソリに刺された妻がディックを急がせる。

「ゴールドマン、実はマーヴィン・メツナー」
死体が請求書を持っていた事から、そんな物にこだわるのは会計士だけだ、と見破ったのだった。

ゴールドマンは、スキー場でジャンプをして飛行機に追突して死んでいた。
メツナーは認めるが、またしてもペリエが止めた。

天井は頑丈なマルセルが支えていて無事だったのだ。
100万は曲がった背中の治療費に当てるといって要求した。

「君はトゥエインの娘だ」
するとしぐさが女になり「リタと呼んで」と否定はしなかった。
理由は食卓でシャネルの5番が香ったから。
メツナー、ゴールドマン、父親を殺したのはリタ。
なんなら男は全員殺したいだろう。
「男のために恥をかき、苦しんできた」
とリタは認めた。
賞金を渡しかけたところで、サムとテスがやってきた。

爆弾はテスがギリギリのところでトイレに流していた。
テスはサムをJ.J.と呼んで皆を驚かせた。

実はサムだと名乗っていたのは、「J.J.ルーミス」という物まね役者でリタこそ本物のサムだと言う。
テスは、本名はヴィルマでモーテルのウエートレス。

だがそれにはリタは否定した。
「違う」

そして最後には全員を否定し、マスクを脱いだ。
「この私こそ、トゥエインだ」

トゥエインは日頃の恨みを探偵達にぶつけた。
「最後の5ページで初めて犯人登場とは何だ。
手掛かりも情報も隠し抜き、誰が犯人か推理させない。
だが今や形勢逆転。
100万の恐れるミステリー読者が復讐するのだ。
私が諸君をカモったと知れたら、諸君の本など二束三文のたたき売りだ」

そしてチェックアウトだといって、屋敷の機械のボタンを押した。
ロックが解除され、それぞれ荷物を持って屋敷を出て行く。

窓からトゥエインは探偵達が帰って行くのを見ていた。

サムは本物のサムだった。

見届けたトゥエインは、誰も居なくなったと分かるともう一度マスクを外した。
トゥエインのマスクの下の顔はイェッタだった。
さらにイェッタは、トゥエインの振りをしていた小指の指カバーを外した。



おしまい


かんそう:


ミステリー好きの為のパロディ・コメディといった感じで、どこかで聞いたような探偵達にミステリーファンの金持ちが推理勝負を持ち掛けるのですが、コメディ>ミステリーのバランスなので、その仕掛けなどはドリフ的なツッコミ所の多いものとなっています。

純粋なミステリーとして見ると、バカバカしく付き合い切れない、となると思いますがあくまでコメディなので、全然OKです。

とはいえ、ミステリーというだけあって、落ちには悩まされます。

まず、予告された殺人ですがこれがなかなかはっきりとしませんし、明確にこうだ! と自分自身でも言い切れません。
人によって捉え方も違うのではないかと思います。

あくまで個人的な見解になりますが、おそらくあの屋敷で殺されたのは本物のベンソンマムで、犯人はトゥエインの娘リタだったと思っています。

でも作品の中でその答え合わせはされていないので、あくまでそう思えた、としか言えません。

まず探偵達にとっては最終的に「(目の前にいるのは)トゥエインでした」で終っています。
これは表向き、12時に殺されたはずのトゥエインが生きていたので「殺人そのものが起きておらず、探偵は全員騙された」というような流れになっているのだと思いました。
でも、ワンは「殺人はあった」と最後に車の中で言っています。

探偵達は、わかっていてもつきあった振りをしてさっさと帰路についていた、という感じで。

でもそれがリタとしては、そう思わせて置いて実はトゥエインでもなくリタでした~、その上ベンソンマムをちゃんと殺しましたけど?
誰もそこまで気づいていなくて、探偵達の鼻を明かしたわよ~。

という落ちなのではないかな~。

ただコメディ主体なので、いろいろツッコミ所というか疑問は多いです。

例えば、トゥエインは5年前に死んでいた、と直前で話題になっていたのに目の前のトゥエインにそれを突っ込まない、ベンソンマムの遺体を確認しているのにそれについても追及しない、等。
(ベンソンマムの遺体も人形何だ、と言ったのは遺体を調べていないワン)

サムとテスは、トゥエインのスパイみたいな立場でいつつも、さらにそう思わせて100万ドルを狙う立場でもあったという最後まで良く分からない存在でした。
ただ、いい所でトイレに行くと言い出して、コックのロボットを見つけてくる当たりは、最初からトゥエイン(リタ)と組んでいた事に納得はできましたが。
そんなサムにとっても、リタはずっとトゥエインとして連絡を取っていたのではないかと思いました。

ただ、オープニングの屋敷に向かう車中のテスとのやりとりも、その場限りの関係だったと思うと疑問を感じます。

ともあれ、リタが首謀者である理由としては、最後のあえてトゥエインの特徴である小指の細工をしていたとネタばらしをしている所です。

要は、トゥエインは最初から存在していなくリタが演じていた、というのを強調していると捉えました。


正直、このラストの落ちというか、種明かしがしっかりあったら凄い名作になっていたような気がします。
あまりにもばかばかしいコメディよりのまま、良く分からないままに終わっているので、まあコメディだし、で片付けざるを得ないのが勿体ないな~と思います。

と書きながら、自分だけがよくわかっていないだけだったら恥ずかしいのですがw

ミステリーとしてはいろいろありつつも、コメディとしてバカバカしく楽しめるので、忘れた頃にまた見返したい作品の1つには違いありません。


本作には邦題で「名探偵再登場」という続編もありますが、こちらはミステリーではなくハードボイルドのパロディになっているので、引っ掛け邦題でした。


Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...