2017年6月19日月曜日

レッド・ライト



ロドリゴ・コルテス レッド・ライト DVD

2012年作品 アメリカ・スペイン合作

キリアン・マーフィー、シガニー・ウィーバー、ロバート・デニーロ、エリザベス・オルセン、グレイク・ロバーツ、トビー・ジョーンズ

あらすじ:

過去に因縁のあるサイキックの復活と共に、懐疑派の周辺で不可解な現象が起きるようになり……。


マーガレットとトム


物理学者のマーガレット(シガニー・ウィーバー)とその助手をしていたトム(キリアン・マーフィー)の2人は、超常現象の類を聞きつけると確かめに行き、そのほとんどが説明のつく現象か、主観がもたらす錯覚である事を暴いていた。

マーガレットは、30年間あらゆる現象を適切な制御下で調査したけど、奇跡はまだ見ていなかった。

マーガレットが奇跡を追い求める理由は、4歳の時に突然倒れたまま植物人間になっている息子にあった。
生命維持装置に繋がれている息子を繋ぎとめておいているのは、死んだ先に何があるかわからないから。
気が付いたとしても、自分が誰だかも、マーガレットの事も覚えていないかもしれない。

もし何かあると思えるのなら、切って行かせてあげたいと思う。
だが、今はまだそんな事信じられない。

超能力を持つ人間は2種類よ。
本当に力があると信じてるか、ウソを見抜かれないと思ってる。

どちらも間違い。


しかし、研究としても成果はほとんどなく、地味で予算も出ない。1人だったらとっくにくじけているかもしれないというマーガレット。

才能がありながらも、マーガレットの助手に収まっているトムは、「楽しんでいる」とだけ言い、何か言いたげなマーガレットに「人を増やそう」とついでに言って誤魔化していた。


サイモン・シルバー


そんな2人の住む町に、60年~70年代にかけ人気を博した盲目のサイキック、サイモン・シルバー(ロバート・デニーロ)が復活してやってくるというニュースが流れ出す。
サイモンも調査をしようと興味を持つトムに対して、マーガレットは興味がないし、関わるなと強く遠ざけようとした。

サイモン・シルバーは引退直前の公演中に懐疑派の記者が心臓発作で死亡していた為、死に絡んでいるのではと疑われていたスキャンダルな存在でもあった。

そのサイモンの記事を自宅のネットで見ていたマーガレットに電話が掛かってくる。
だが、出るとそれは無言電話で切って飲みかけていたコーヒーのスプーンを持つと、そのスプーンは勝手に曲がっていた。

その後、トムの希望の女生徒サリー(エリザベス・オルセン)を仲間に入れ、サイモンの弟子であったサイキックのトリックを暴きに会場へ行くが、その際にも電気系統がショートするなどの不思議な現象が起き始める。


レッド・ライト


マーガレット達は事前の調査で、サイモンの弟子のトリックを見事暴いた。
その際に、新人のサリーに何を探しているのか、と聞かれて
「レッド・ライト。不協和音よ。場違いな物」
と説明していた。


TVショー


あれだけ拒絶していたのに、サイモンの代理人等が参加するTVショーに懐疑派として出演するマーガレット。
トムは家でサリーと一緒に放送を見ていたが、座談会の参加者にサイモン側のグルが居ると、言い出す。部屋には赤いライトがついている。

このままではマーガレットに不利だと気づき、今すぐ止めるべきだと叫ぶが、マーガレットに聞こえる訳がない。

そしてまるで予知をするかのように、マーガレットの窮地を事前に言うトムに、サリーが驚きを見せると「サイキックだから」とおどけて言った。

結局、翌朝の新聞では博士が負けたという記事になっていた。
トムは、怒りを見せつつ今すぐサイモンを調査しようと、改めて言うがやはりマーガレットは調べる価値がない、と拒否した。
1人でも調べる、と息巻くトムにマーガレットは本当の理由を言う。

過去、サイモンとTV番組で会った時にやはり、怒鳴り合いになった。
だが、サイモンは突然マーガレットの肩口を見て、マーガレットの息子について話だしていたのだった。
「その子は行かせて欲しいと言ってる。
行きたいと頼んでる。
行くべきなのに君が邪魔してる」

そして、マーガレットは反応を待つ監修の前で、一言も返せなかった。

今でも自分を許せないという。
でもそれは彼が病床の息子を利用した事ではない。

「私が許せないのはほんの一瞬とはいえ、彼を信じた事よ。
自分に疑いを抱いたの。
皆それを悟ったわ。

彼は危険よ。
近づかないで」


セッション


行くなと言われてもトムは1人でサイモンのショウに潜り込んだ。
だが、無線をキャッチしようとすると、勝手にスイッチが入ったり、機械がショートし始めたりと弟子のショウ以上におかしな現象が起きる。
会場もパニックになる。

サイモンの力は本物なのだろうか。

トムも怪我を負いながら、マーガレットの元を訪ねる。
するとマーガレットは倒れていた。

自分がマーガレットを1人にしてしまったせいだ、と悔やむトム。


その後、トムが授業を行っていると電話だと呼び出される。
だがそれは無言で、思わずシルバー? と呼びかけるがその瞬間、ガラス窓に何かが飛んで来て割れた。

教室に戻ると再び呼び出され、またかとキレるが、それはマーガレットが亡くなったという知らせだった。


赤いライト


トムは、サイモンをつけるが、廊下に赤いライトのある建物で見失ってしまう。

その夜、自宅で寝ていると夢なのか、幽体離脱を体験して目を覚ます。
隣にはサリーが寝ていたが、ふと部屋の中にサイモンの幻影を見てビビる。
そのサイモンはサイングラスをしておらず、トムを見下ろしているようだった。

サリーも目を覚まし、部屋の電気をつけるが、しばらくすると勝手に消えてしまった。
トムが、シルバー? と呼びかけると大きな音がした。
玄関を見に行くと鳥が死んでいた。
そのまま外に裸足で飛び出るトム。

道路に出た所でガラスを踏み、我に返り家に戻った。
だが部屋の中は、家を出た時とは大違いでめちゃくちゃになっていた。

さらに突然TVがついてサイモンのニュースを流す。
マーガレットとも親しかったシャクルトン博士が、SPRC(超常現象研究センター)で正式に2週間サイモンの実験をするという。
同時にマーガレットが長年血管の奇病を患っていた事も報じていた。


実験


シャクストンに頼み、トムも実験の現場に潜り込んだ。
実験の結果、すべてに能力を発揮したわけではないが、取り分けテレパシーについてはかなりの正解率を残していた。

現場では何も見つけられなかったが、記録データを入手しベンという生徒にチェックさせた。
今夜、シャクストンはサイモンの能力を科学的に認める書類にサインをし、会見をする。
サイモンも短い復帰で十分稼いだようで、また引退に入る最後のショウを予定していた。
一度認めたら終わりだ。
ペテンから世界を守れるのは君だけだ、とベンに重荷を背負わせる。

ベンの作業準備をする最中にも、機材がショートしたり急にTVがついたりと不可解な現象が起きていたが、もうトムにとっては当たり前のようになっていて気にしなかった。

テレパシーのテストに合理的な説明を見つけろというと、トムはサイモンの元へ向かった。


最後のセッション


ショウの前に、以前突き止めていたサイモンの個人治療部屋を訪れていたトム。
赤いライトの点滅で退室と入室を知らせていたが、トムは待っている人を割り込んで入って行った。

サイモンの待つ部屋には、塩でラインが引いてあり、サイモンには近寄れないようになっていた。
サイモンは治療らしき事は何もせず、「また会う事になる」と言ってすぐに下がっていってしまった。


そして最後のショウが始まる。
お安いエンタテインメントのように浮いてみせるサイモン。
前半は、特に大きな動きはなかったようだ。
休憩のトイレで一般客が感想を言っている。
人気がなくなると、トムは突然男に襲われた。
サイモンの差し金だろう。


その頃、ベンの元にサリーが合流し、未だ何も見つかっておらずサイモンは本物ではないかとベンまでが言い出そうとしていた所に、サリーが違和感に気づく。
サイモンのしている腕時計だった。

テレパシーの実験は、壁で遮られた状態でランダムに選ばれた数字を発信する人と、それを受けて答えるサイモンの2人で行っていた。

ビデオデータを確認し、発信者もアナログの腕時計をしている事を確認。
さらに、2人の腕時計の秒針がぴったりとシンクロしている事もわかった。
こんな事が起きる確率はどれくらいあるだろうか。

恐らく、秒針と発信のタイミングを利用して、数字を伝えていたのだろう。
しかし、目の見えないサイモンはどう秒針の位置を知るのか。
サリーはそれこそ、思い込みではないかと言う。

サイモンは、そもそも盲目ではないのだろう、と。


すでに、ベンはシャクストン博士に何も不信な所はない、と電話で伝えてしまっていた。
そして書類にサインをし、今記者の前に出ようとしている。


トムは、血まみれのままトイレから会場へ向かい、サイモンに声を掛けショウを遮った。
「一生自分を偽るなんて無理だ」
サイモンもわめき出すと、またしてもポルターガイストのような現象が会場に起き始める。
だが、それはスタッフがリハーサル通りに起こしていたものだった。

しかし、すぐにそれはリハーサル以上の威力となり、天井は崩れ落ち、地鳴りがし大惨事になろうとしていた。

しばらくして静まると、会場のライトが復活する。

サイモンは、我を忘れて思わず「どうやった?」とトムに聞いてしまう。

トムの手の中にはいつも持っているコインがあった。
サイモンに向かって投げるとうっかり手で受け止めてしまう。
目は見えていないはずなのに。

「ペテンさ」
とだけ言って会場を去るトムにサイモンはまだ大声で聞き続ける。
思わず飛び出し来た代理人の制止も聞かずに。
「どうやったんだ!」


本当の能力者はトムだった。
トムは、マーガレットに手紙を書いていた。

マーガレットと共に研究していたのは、自分に似た人を捜していたから。
自分はこれまで自分を偽っていた。
これまでの不思議な出来事を、誰かのせいにしようとしていたけど、全部自分だったんだ。

だったら、マーガレットが欲しかった言葉を言えたのに。
奇跡はある、と。


そして、マーガレットの息子の病室に行き、生命維持装置を止めた。
そのまま止まったかと思われる心音は、どうやら再び規則正しいリズムを刻んでいた。

「今日ですべて報われるから。
自分は偽れない。
永遠には偽れない」


おしまい

エンドロール後にトムの部屋の窓のカット。
風は入るようになっているので、カーテンは揺れてるけど、窓自体はしっかり閉じている。


かんそう:


それ程期待せずに見たのが良かったのか、結構面白かったです。
サイキックVS懐疑派のストーリーと見せかけて、リアル・サイキックの自分探しというドラマでした。

実は無自覚な人が原因でした、という落ちはなくはないのですけど、それを一応逸らしていた(と思う)ので、「そういう落ちか~」と結構ドキッとできました。

トムは、完全に無自覚という訳ではなく、自分でもうすうす気づいていたけど、認めるのが怖いし、コントロールも出来ないっていう感じだったんでしょうかね。
で、マーガレットの研究に便乗して、ホンモノと出会えたら自分も何かわかるのではないか、と。

そんな感じだったのかな、と思います。

だから、サイモンの登場にはトム自身「本物であって欲しい」という願いも知らぬ間に入り込んでしまっていたような。
自分が起こしている事をサイモンのせいに出来たので。

でも実際は、サイモンは盲目すらウソのペテンである事をトム自身が暴いてしまいます。
それと同時に、これまでの現象を起こしていたのは自分だった、と認めざるを得なくなって、自分を偽る日々に別れを告げる、という。
サイモンに言っていた言葉は自分への言葉でもあった。


途中で、あっさりシガニー・ウィーバーが死んでしまった事が、観客にとってのレッド・ライトだったように、見終わった今思います。

途中、いくつかのシーンで実際の赤いライトが登場するのですが、それらすべてに意味があるのかどうかはわかりませんが、マーガレットのTV出演を見ている時の部屋の赤いライトは、トムの能力を伝えていたんでしょうね。

オルセン姉妹の妹エリザベス演じるサリーは、単なる色添え位にしか思いませんでした。
あの姉妹のDNAはマジで可愛い! 妹も双子の姉にそっくりですね。

でも、思い返すと要所要所で結構重要な働きをしているんですよね。
マーガレットの息子を見て「なんであのままにしてるの?」と言った言葉はその時は「冷たい子」と思ったのですが、実は生命維持装置がなくても大丈夫だったという結果を知ると、マーガレットもまた何か鋭い勘のようなものを持っている子だったのかな、と。

サイモンのトリックを暴いたのも彼女でしたし。
トムと惹かれ合ったのも、何かそういう似た者同士的なものがあったのかも。
意外と身近にいる、ってオマケもあれば、ハッピーエンド感が加わるし!

気になる所も、当然あります。
マーガレットはなんであんなに避けてたサイモン絡みの番組に出たんだろう、とかサイモンの盲目を疑う事はなかったのかな、とか。
でも、これらはメインストーリーがトムの自分探しだと思えば、そんなに気にならなかったりもします。
そこが一番の感心どころでした。


すべてを知ってから見ても、また何か気づくところがあるかもしれません。
特に、サイモンの目が見えている事は、どこかでさりげなくアピールしていたりしそうです。
そういえば、トムがまだ特殊な能力をサイモンのせいにしようとしている時、夜部屋でサイモンの幻影を見ますが、あの時サイモンはサングラスをしておらず、目が見えているような目線に感じました。
ひょっとして、テレポートの能力も知らぬ間に発揮していて、サイモンを一瞬呼んでしまっていたのだとしたら、あれこそ「実は目が見えている」のサインでしょうね。
でもこんな事、見ている最中にはまったく思いつきませんがw


見えてないといいつつ、見えていた。

普通の人だと思ったら超能力者だった。

この手の落ちってそれ程珍しくはないですし、種を明かされれば「なーんだ、そんな事か」と思いつつも、ドキっとしてしまう。
でも、本作は最初からそうなんでしょ、と思わせる隙を与えていない作りになっていたと思います。



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