2017年9月4日月曜日

マネーモンスター



ジョディ・フォスター マネーモンスター DVD

2016年作品
監督ジョディ・フォスター

ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ、ジャック・オコンネル、ドミニク・ウェスト、カトリーナ・バルフ、マーカス・パウエル、クリストファー・デナム、レニー・ヴェニート、デニス・ボウトシカリス

あらすじ:


番組の生放送中に司会者を人質に番組ジャックされ……。


マネーモンスター


リー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)が司会を務める人気番組「マネーモンスター」。
生放送で株の情報等を扱うが、リーはプロデューサーのパティ・フェン(ジュリア・ロバーツ)の指示を無視する事が多く、扱いにくくもあった。

番組で数日前に「アイビス・キャピタル」をピックアップして薦めていたが、その後大暴落をしニュースになっていた。
1晩で8億ドル以上の純損失と言われているが、その理由は「アルゴリズム取り引きの暴走」いわゆる、バグだとキャンビーCEOが説明していた。

その流れで、ギャンビーを生出演させる予定だったが、当日出演をキャンセル。
それだけではなく、機上にいて連絡も取れないと言われてしまう。
代わりに広報担当役員のダイアン・レスターと中継を結ぶ事に。
もちろん話題は「暴落の理由」だった。


番組ジャック


番組を仕切るパティが、セットの裏に居る男に気づく。
何かの配達人が迷い込んでしまったのかと思っていたら、段ボールと銃を持った番組ジャックだった。
リーに銃をつきつけ、放送を続けろと要求した。

段ボールから爆弾のついたベストを取り出すと、リーに着せる。
カメラと音響以外の人間はスタジオから出るよう指示された。
調整室にいる、放送スタッフ以外の人間も。

犯人の指示通り、生放送を再開すると、すぐにニュースとなりあちこちで中継が見守られた。


アイビスの被害者


犯人の話しを聞くと、アイビス株の被害者だった。
番組の薦めに従い、株を買ったのに暴落で大損していたと主張する。

リーがその金額を確認すると6万ドルだと言う。
思わず、それ位なら5分で用意すると申し出るが、犯人の要求は8億ドルだった。
「番組に騙されたのは俺だけじゃない」

パティはイヤホンでリーに犯人を刺激するな、と指示を出す。

犯人の身元はすぐに判明した。
カイル・バドゥエル。
犯罪歴はなく独身。
交渉人が声をかけると銃を撃って威嚇した。

話すならギャンビーかリーだと。
だが、ギャンビーは連絡すら取れない状態だ。


ダイアン


パティは、スタッフのロンをアイビスに向かわせて、ダイアンに直接インタビューするよう、指示をする。

すでに名前がバレている事がわかったカイルの要求は補償よりも、何があったのか、という事だった。
だが単なる広報のダイアンに詳しい事が分かる訳はない。
リーですら、用意された「要点メモ」を読み上げるようなダイアンの返答に、イラつきを隠さない。
「金融工学者(クオンツ)、アルゴリズムの設計者を呼べ!」

リーも、ダイアンに任せるのではなく、原因探しをするとカイルに約束をする。


株価操作


捜す間、パティは時間稼ぎも兼ねて株価操作を提案する。
TVの視聴者にアイビス株を買うように訴えかけて、番組で相場を作ろうというのだった。

リーもカイルもそのアイデアには期待を持つが、現実にはそんな上手い事は起きず、リーの訴えが届く事はなかった。


カイルの恋人


その頃、警察はカイルの彼女モリーを捜し当てていた。
カイルの子を妊娠しているモリーは、カイルの行動を知り説得するどころか、生中継で罵声を浴びせた。
カイルは、母親の遺産をすべてアイビス株につぎ込んでしまっていたのだった。
興奮したモリーの発言でプライベートが暴露された上、最後には「自分の頭に引き金を引きな」とまで言われショックを受ける。
人質であるはずのリーですら、カイルに同情する位だった。


クオンツ


ダイアンがクオンツの1人を捜し当てた。
直接電話で話しをすると、男は今回の暴落はアルゴリズムのバグではないとはっきりと言った。
「アルゴリズムはパターンを破らない。
膨大な持ち高の売買を瞬時に繰り返す。
レバレッジをかけた巨額の資金による取り引きはしないし、特定の金融商品を持ち続けはしない」
つまり、1日で8億ドルの損失を出す事自体が、アルゴリズム上では不可能だと言った。
「だから投資が失敗したのはプログラムのせいじゃない。
人間の指紋がそこら中についている」

ダイアンが誰の? と聞くと関わり合いになりたくないと教えてもらえなかった。
だが、「ボスは消え、8億も消えた。ボスはどこから戻ったか?」というヒントを残した。


アイビスのCEO


そこにボスのギャンビーがジェットを降りて到着した。
ダイアンがTVに出るのを止めていた、グッドローは連絡がとれないはずのギャンビーとすでに連絡をとっていて、グッドローから連絡を受けたとダイアンを労った。
ダイアンとは不倫の関係のようだ。
スイス土産だとチョコだと渡すが、ダイアンがパスポートを盗み見ると、行っていたのは南アフリカだった。

移動中の車でギャンビーのメールを盗み見する、ダイアン。
その内容は「マンボの状況は?」「マンボは冷たい」と暗号のようだった。

ギャンビーが怪しいと勘付いたダイアンは、ギャンビーにはマネーモンスターに出る事を伏せて中継場所に連れて行く。
パティには、20分後にギャンビーが声明を出すと伝えた。

そしてギャンビーの隣で詳細はメールするといって、「ギャンビーはジュネーブに行くと嘘をついて、南アフリカに行っていた」という事実をパティに知らせた。
パティはすぐに、リーにも嘘をつかれていたと告げ、南アフリカに何の為に行ったのかを突き止めようと、動き出す。


リーの危機


人質事件を解決する為の作戦がいよいよ実行されようとしていた。
警察が絞り込んだのは、リーのベストにつけられた受信機を銃で撃ち壊すというものだった。
当然リーも被弾するが、すぐに救出すれば命は助けられるという危険な作戦だった。
生放送の中、人気司会者を撃つという過激な方法だったが、爆弾が爆発する被害を考えれば仕方ないという判断だった。

しかし、その直前でパティは作戦を知るとリーにこっそりと知らせて非難するようにいった。
すでに知らぬ間に人が避難している事に気づいたカイルはキレ始めていた。
そこにリーを狙うスナイパーが発砲し、なんとかリーは避ける事が出来たが、自分が狙われている事が確定する。

ちょうどギャンビーの行方も判明したので、カイルを盾にリーはカメラマンのレニーを道連れに、生中継を続けながらスタジオの外に出た。


共犯


爆弾をつけたリーとその犯人がニューヨークの街を歩くと言う危険な様子に、いつの間にか野次馬が囲んでいた。
ちょっとしたお祭り騒ぎの大混乱の中、カイルはこっそりとリーに「ベストの爆弾は偽物だ」と耳打ちした。
だがリーは「本物だと思わせておけ」ともはや共犯になっていた。


その頃パティはロンから報告を受けていた結果をダイアンに伝えた。
暴落の日にアイビスの取り引き高が90%も減っていたのだった。
ダイアンはそれを聞くとまさか、と驚いた。
アルゴリズムでは、継続して取り引きをするはず。
誰かが意図的にオフラインにしないと、そんな事にはならない。

もはや、ギャンビーの仕業である事は間違いなかった。
彼が意図的に8億を抜いた。
でも何に使う為に?

すぐに預かっていたギャンビーの携帯を盗み見するが、メール履歴は消されていた。
パティのアドバイスでショートメールを見ると、グッドローとのやりとりが残っていた。
「2人は繰り返しマンボと送り合っている」
車の中で見たやりとりだった。
パティはスタッフにマンボについて調べさせる。
すると、南アフリカで鉱山ストをする男の名前がマンボだと分かった。


ロン


発砲を受けた際に、イヤホンが外れてしまっていたリー。
パティは、ロンに新しいイヤホンを渡すよう指示をしていた。

とはいえ、簡単に警察や野次馬に囲まれて移動するリー達には近づけない。
なんとか側へいき、投げ渡そうとリーの名を呼ぶと驚いたカイルがロンに発砲してしまった。
その銃声で、お祭り騒ぎは一瞬でお開きとなった。

リーとカイルの周囲を囲むのは、もう警察等の専門家しかいなかった。
だがお陰でリーの耳にはまたイヤホンが装着され、パティとの通信がつながった。

そして彼らが向かう先には、ダイアンに騙されて連れてこられたギャンビーが待っていた。


マネーモンスター再開


やっとカイルはギャンビーと対面をする。
リーはわざとらしく「ジュネーブはどうだった?」と聞いた。
そして、マネーモンスターを再開させる。
ギャンビーに8億ドル損失の理由を聞くと、ギャンビーはバグだと言い続けた。

しかし、リーは切り込む。
「難しいと思わせて、単純な詐欺だ」

南アフリカのプラチナ鉱山の映像が流れる。
「これが投資先だろう」

そして、アルゴリズムでは今回の損失が不可能な事を説明する。
大量の金を1つの取り引きに集中する事はない。させたのは君だ、と

「ヨハネスブルグの鉱山ストは2週目」というニュースを流す。

このストはギャンビーが金で始めさせたもの。
ストで鉱山の株は下落する。
それを安く買い、スト終結後に高値で売る。
私腹を肥やして誰にも気づかれない。
これがギャンビーの8億円の使い道だった。

証拠もないのに名誉棄損だとギャンビーは主張したが、すでにビデオが用意されている。
モシェ・マンボの映像が流れる。

「彼らのビジネスに、ワイロにノーと言おう」
彼は金で動かなかったのだ。

「これこそ君のバグ。
彼は我々の声が届くまで何十年でもストを続けると主張している。
この為、鉱山の株は暴落し内緒で投資した8億ドルは消えた」

マンボなど初耳だと、この場に及んでもシラを切るギャンビーに、2人で話し合う映像を流す。

「これがスイスか?」

それでもアルゴがと言い訳を続けるギャンビーに、リーは思わずカイルに撃てと言った。
だがもっといい案があるといってリーのベストをギャンビーに着せた。
「ペテン師である事を認めろ!」

だが、ギャンビーはあくまでもビジネスだと言い張るが、爆発させると脅してやっと「悪かった」と言った。
「それを聞きたかった」
カイルは満足したのか、爆発することのない発信器を投げると、その瞬間撃たれた。

どこかカイルに同情をしていたのだろう、リーはカイルを死なせないように、叫ぶ。
「救急車を呼べ!」
だが、すでになす術はなかった。


放送終了


ロンは手術を受け、無事だった。

カイルは24歳で宅配便の運転手だった。詳しいジャックの理由はわからない、と報道された。

アイビスには調査が入り、ギャンビーも罰せられるだろう。

ギャンビーが発信器を投げられた際に驚いてのけぞったヴァインがネットで話題になっている。

そんなニュースを病院の待合室で見ながら、2人は来週の番組の打ち合わせを始めた。


おしまい


かんそう:


タイトル通り、「マネー」関連の事件なのですが、同時に「生放送ジャック」というエンタテインメント性が加味されてるので、あんまり「金融」っていう難しさはありませんでした。

もしかしたら、その小難しさで敬遠される可能性があるようにも思いましたが。
という私も、株とか投資とかってよくわからないので、役者の顔ぶれがなければ見ようとは思わなかったと思います。

そして、見たとしても良くわからなかったら早送りしてリタイアしていた可能性もありますw

でも本作は、「生中継でのジャック」というハラハラ感や、番組を作りながら事件を解決するというライブ感の方がメインのような気がしました。

途中、リーがカイルとの距離を縮めようとしたのか、「自分もわがままで周囲に見放されているのは知ってる」と、パティも転職が決まってるのを知ってるとか話すシーンがあります。
派手なTVの世界でも、孤独さがある。
そしてこのジャックがなければ、多分パティはリーの本音を聞く事などなく、予定通り転職していたんだろうな、と思います。

でも事件を通じてリーの本音、本当は皆に感謝しているという事を知り、パティは最後に「来週はどうする?」と打ち合わせを持ちかけるんです。
実は故意には人を傷つけていないカイルは死んでしまったけど、すごいハッピーエンドなんです。

気が付けば、いろんなドラマが垣間見れる作品でした。

ちょっとした群像劇っぽくもあって、見ているのはあくまでも1つの「番組ジャック」なはずなんですけど、例えば広報のダイアンは、CEOと不倫しているのに正義感が強く、不倫相手だとしても怪しいと思えばしっかり裁きを受けさせるといった、最後には強さを感じさせます。

でも、登場した時は会社のいいなり、のような頼りなげな印象なんです。
それが脇役でありつつも、見て行くにつれてキャラクターが浮き彫りになっていく。
特に途中、パティに怒鳴られるシーンがあって、それがターニング・ポイントになっているように感じました。
それまでは上司と不倫をする名前だけのお飾り広報。
でも言ってる事がそれだから「響かない」と言われた後は、自分で動き出します。
最後には、どうしてこんな頭のいい人が不倫なんてしていたんだろう、と疑問を感じる位の急成長なんです。


パティもジュリア・ロバーツという華がないとキツイ程、ずっとブースの中で指示を出すだけの仕事の人なんですけど、爆弾をスタジオに持ち込まれてもその場を離れず生放送を続けるという、プロ根性。
TV業界はこういった仕事第一主義は珍しくはないようで、カメラマンにしても皆指示を受けるまではいつづけるんですよね。

それがいいのか悪いのかは、私にはわかりません。
が、今回は「放送を続けろ」という犯人の要求もあったので、仕方なくもありましたが。

命がけの生放送を通じて、離れていたリーとの距離も再び、チームとして絆が強まったようで、最後に「来週の打ち合わせ」を始めたのはいろんな解釈が出来て良かったです。

まず、このままリーとマネーモンスターを続けるという意志表示。
いろんなことがあったけど、日常に戻って切り替えようというTVマン的なドライさ。
いろんな事がありすぎて、とりあえず日常に戻ろうという逃避。
また同じような出来事が起きるかもしれないけど、数字稼げたらおいしいよね。

等々。

実は私が本作で一番色濃く感じたのは、「TV業界」という特殊な職業性でした。
やっぱり爆弾があるとわかっているのに、非難しない(できない)とかって、普通じゃないです。

でも、何処かで「生放送で数字稼げて美味しい」と思ってる。
ギャンビーの投資のからくりを暴くのも見事でしたが、その様子もTV番組を作るというのは多岐に渡っての才能が必要なんだな、と改めて感心させられました。
もはや、事件も解決しちゃう、みたいな。

最後、カイルが死んでしまいますが、それが作り話しの中でリアリティ度を上げている、おとぎ話を否定している部分で、必要だったんだろうな、と思いました。


何より、派手さで誤魔化されそうになりますが、実はいつ起きてもおかしくない素材で出来上がった世界になっているんですよね。
それも見終わって気づく、面白さの理由でした。




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