2017年10月10日火曜日

裸のキッス




1964年作品

監督サミュエル・フラー

コンスタンス・タワーズ

あらすじ:


娼婦という過去を持ちながら看護師になって、障害を持つ子供達の世話に生きがいを感じるが……。


ケリー


娼婦の元締めから逃げてグランドヴィルに辿り着いたケリー。

到着早々、目立つ美貌から刑事のグリフに声をかけられ娼婦としての仕事をしてしまう。
だが、ケリーはそれを最後に娼婦から足を洗いこの町で生きて行く事に決める。

グランドヴィルを創設した子孫の現当主グラントの事は、ゴシップなどでケリーも存在を知っていた。
しかし、ゴシップのイメージとは違い、町ではチャリティに熱しで障害児を受け入れる病院を経営していると知る。

子供好きのケリーはその病院で看護師として働く事になる。


グリフ


ケリーを信用していないグリフは、ケリーが娼婦である事を隠して病院に潜り込んだ事を良く思わなかった。
院内でも売春をしているのではないか、とさえ疑う。

「過去は変えられないけど、職は変えられる」とケリーは泣いてグリフに力を貸して欲しいと言った。


グラント


ケリーは、婦長に連れられてパーティーでグラントを紹介される。
そこにはグリフも居て、ケリーに目を光らせていた。

グラントはケリーに一目惚れしたようで、2人はつきあいを始めるが音楽や文学の趣味も合う事がわかり、お互いに急速に惹かれて行く。

グラントは「知性と美貌は相容れないのに、両方を供えている」とケリーをベタ褒めした。


バフ


同僚のバフが、子供達がいたたまれず耐え切れないと辞職したいと言い出す。
実はバフは、グリフが父親代わりになっており、グリフの紹介で看護師をしていた。

ケリーは元気づける為に黒いドレスを貸してダンスでもして、というがバフが向かったのはグリフも通うキャンディという女の売春宿だった。
バフはキャンディの常套手段の25ドルを前金として受け取って、ボンボンを売って稼いだと喜んでいた。
でもそれは、身体を売る隠れ蓑で気づいているのかいないのか、バフを引っ叩いて止めた。
身体を売っても未来はないと、自分の体験から語った。

そしてキャンディを訪ねて、殴りかかり口の中に25ドルを詰めて「バフに近づくな」と脅して帰った。


真実


グラントとのつきあいが深くなるにつれて、自分の過去を気にするケリーは、とうとう真実を告げた。
グリフが相手とは言わないが、この町で1人だけ客を取っていた事。

するとグラントは、ケリーの正直さに打たれたのか、突然プロポーズをした。

ケリーは即答をせず、返事を持ち帰る。
その時、ケリーは素朴に「何故、元娼婦の私を選ぶのか」という疑問を感じていた。

でも、目の前に訪れた幸せに、夢を見ずにはいられない。

翌朝、ケリーはプロポーズを受け、合鍵を貰った。


騙しているのでは、と思ったグリフにも、グラントは真実を知って受け入れてくれたというと、やっと「真実の愛をみつけたな」とケリーを認めた。


裸のキッス


結婚の準備をするケリーは、ドレスの箱を持ってグラントの屋敷に行った。
使用人が留守の為、鍵を開けて入って行くと子供の歌声がテープで流れていた。

それを微笑ましく思いながら奥に進むと、1人の少女とすれ違い一瞬で状況を理解して固まった。
後から出てきたグラントも、無駄だと思ったのか隠しはしなかった。
幼女趣味で、普通の女とは無理だと開き直り、だから君なら理解できるだろう、と言った。
娼婦をしていたケリーを「同じ世界の住人さ。ゾクゾクする」と。
道を外れた者同士の、パラダイスの実現。

気が付くとケリーは、電話をつかんでグラントを殴り倒していた。


すぐに、グラント殺害のニュースが広がるが、そこには売春婦が殺害と書かれていた。

ケリーは、仲間内で変質者とキスをすると同じ味がしてわかるという「裸のキッス」と呼ぶ言葉がある事を話した。
実は、グラントにも感じていたのだった。

しかし、元娼婦の殺人犯の言う事を、そのままグリフが信じる事はなかった。
罪を逃れる為の作り話だろう。
しかも、咄嗟の出来事でケリーの記憶も曖昧だった。


窮地


悪い事は重なるもので、その後ニュースを見て昔の元締めが恐喝の罪まで被せようと、訪ねてきたり、ケリーを助けるつもりでダスティが証言した事で、状況が悪化した。

妊娠したダスティはケリーに相談したら、お金を貸してくれたとケリーの人柄をアピールする為、良かれと思って言ったのだった。
だが、それはケリーがグラントから金を借りた事実が明るみになっただけだった。

ケリーは、それを聞いてもダスティを巻き込むなと、決して責めなかった。

さらに、ケリーに恨みを持つキャンディもやってきて、グリフにでっち上げの証言をして恨みを晴らす。
ケリーがグラントの弱味を掴んでいい金ヅルになると言っていたと。

しかし、キャンディに会いに行った理由はバフを守る為という、れっきとした事情があったので、ケリーはそれをグリフに伝えた。

だが、バフに証言させればすべて解決するだろうとバフを呼び出すと、何故かバフは嘘をついて、ケリーを裏切ってしまう。

それでもバフを責めるのではなく、どうして?! と嘆くだけのケリー。
ふと檻のついた窓から外を見ると、絵を描いている少女に気づく。
やっと、あの時出会った女の子を思い出した!

しかし、その声を上げても誰も相手にしなかった。


翌日


ケリーに嘘をついて、世話になったのに酷い仕打ちをしたと気づいたバフが、グリフに本当の事を話した。

そのおかげで、少女捜しが本格的に始まり、面通しの結果少女を特定する事ができた。

それはよくグラントと一緒にいたバニーだった。

子供相手なので、最初は上手くいかなかったがグリフに母親になったつもりで優しく接しろと言われ、やり直す。

そしてバニーの口から、グラントと2人きりになって、誰にも内緒でゲームをしていたと証言させる事が出来た。
ケリーの事も覚えており、大きなドレスの箱を持ってたと、当日に出会ったとわかる証言をしっかり録音できた。

ケリーは晴れて釈放され、売春婦の殺人鬼から一転、子供を毒牙から守った英雄となったが、ケリーは町を出て行った。


おしまい


かんそう:



ショック集団(過去記事)

のすぐ後に撮影された作品で、冒頭ケリーが町に降り立つシーンで「ショック集団」のタイトルが看板にありましたw
映画館の入り口なんでしょうね。
監督、ちゃっかりしていますw


ショック集団同様、こちらの作品もショックな内容です。
特に時代を考えれば相当なような。

最初は、身体に障害を持った子供達に近づくケリーに、「子供が危ない?!」とハラハラドキドキでした。

でもケリーは純粋に子供好きなだけ、でした。
なので、「バニーとコミュニケーション取るのにグリフからアドバイスを得る」という最後のシーンには違和感がありました。

ケリーならお手の物じゃないのかしら……と。

とはいえ、ストーリーはなかなか凝っていて最後にケリーを窮地に立たせる為の伏線がいっぱいあって、でもそれぞれがその為だけではなくケリーの人柄もしっかり伝えていて、どれもムダのない要素ばかりでした。(人助け、ボンボン屋に乗り込み等)

ロリコンに娼婦に殺しというキーワードだけを見ると、結構エグイのですがモノクロの映像と女性の再生物語という、全体を包むテーマが崇高なので見ると悪趣味な要素は薄く感じます。

ショック集団の時にも名台詞がありましたが、本作にも。

「過去は変えられなくても、職は変えられる」

社会生活を送る人間であれば、普遍的な名言ではないかな、と思いました。

ほんとうに、ケリーはどうして1回だけ売春しちゃったんでしょうね~。
でもそういったほころびがある所が、人間らしくリアルで等身大に感じられる所なんでしょうけどね。




0 件のコメント:

コメントを投稿

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...