2017年10月2日月曜日

ショック集団


1963年作品
監督サミュエル・フラー

モノクロ(一部カラー)

ピーター・ブレック、コンスタンス・タワーズ

あらすじ:


ピューリッツァー賞を狙う為に、狂人になりすまして精神病院に潜入するが……。






入院


デイリー・グローブの記者ジョニー・バレット。
1年の訓練を受けて狂人に成りすまし、精神病院に潜入取材をする。
すべてはスローン殺しの犯人をつきとめて、ピューリッツァー賞を狙う為。

恋人のキャシーは、影響を受けるに決まってると心配して止めるが、誰も耳を貸さなかった。

仕方なくキャシーも妹として協力し、ジョニーは妹への執着が酷い精神疾患ジョン・バレットとして精神科に入院する事になる。


病院には、名医と言われるクリスト先生、乱暴なロイド、優しいウィルクスという看護人が主に面倒を見ていた。

ジョンは、初めて見る病院の長い廊下を、「これがピューリッツァー賞へ続く廊下か」と思った。


目撃者


事前の調査で絞り込んでいたのは、ステュアート、トレント、ボーデンの3人の患者だった。

同室になった巨体のオペラ好きのパリアッチから、早速「台所でナイフに刺されて死んだ」と聞き出す。

夜には、仕事である踊り子の衣装を着た小さなキャシーが夢に出てうなされる。


ステュアート


カウボーイハットのステュアートを食堂で見かけて、近づく。
南部農民の倅で、趣味は南北戦争ゲーム。
自分を英雄ステュアート少将と信じてる。

ステュアートのノリに合わせて、フォレスト中将だと名乗り懐柔する。

狂人と混ざっての冷水療法、ダンス療法を経て、性依存の女性患者達に遭遇し襲われて怪我をするというハードな入院生活を続けると、その甲斐あってかステュアートが突然正気を取り戻す。

その隙をついて、スローン殺しの犯人を聞くと
「顔は見ていないが、白いズボンだった」
と言った。

面会に来たキャシーに、犯人は看護師か医師だと報告。
他の目撃者の証言も引き続き取ることを、局長に伝言を頼んだ。


枕元にパリアッチ


夜、くちゃくちゃガムをかむ音で起きると枕元でパリアッチがガムを噛んでいた。

ジョンにもガムを勧める。
疲れれば眠れる、と。
「眠れば異常か正常かの区別はつかない」


さまよう幽霊


面会をしたキャシーはすでにジョンの様子がおかしいと局長に訴えていた。
だが、計画優先で誰も取り合わない。

ジョンは、狂人がさまよい歩く廊下を見て記事の見出しを「さまよう幽霊」にしようと、考える。
凄い記事が出来る、良い見出しだと心の中で自画自賛した。



トレント


2人目の目撃者、トレントが廊下で「黒人は出て行け」というパネルを持って歩いていた。
南部で唯一の黒人学生だったのに。
趣味は、枕カバー集め。

ジョンの隣で片手を水平に上げたままの金髪の白人を見て、友達か? とトレントが訪ねる。
「奴は黒人の仲間さ。
だから神に罰せられて筋肉が硬直した」

他の黒人を見ると、襲い掛かったのでジョンが押さえて未遂になった。

看護人に怒られずに済んだ事から恩を感じ、友達になる。
近づく為に話を合わせるジョン。
船の真似を一緒にする。

トレントは、黒人なのに自分をKKKの創始者だと言った。
興奮したのか、廊下で演説をぶちかました後黒人をおかっけまわして大暴動になってしまう。

2人は拘束着でベッド並んで隔離される。
トレントはKKKに自分が追われていた過去を思い出した。
その夢を見た後は必ず正気になっているとも言った。
ジョンは、そのタイミングでスローン殺しの犯人を訪ねた。

トレントは即答はせず、自分の話しに夢中だった。
なんとか質問するが、その答え1つしか言わなかった。
看護人だと言った後、名前は、と聞いたら間に合わず、また狂い出してしまった。


変化


面会に来たキャシーにあと少しだったのに、と悔しがる。
残るボーデンには、勿体つけずにさっさと口を割らせると息巻く。

キャシーは顔が近づいたので、そのままキスをしようとすると、ジョンは怒りだして拒んだ。
「二度とするんじゃない!」
キャシーが帰ると「彼女おかしいな」と呟いた。


病院に行ったった理由をキャシーから電話で聞いた局長は、計画を潰す気か、と怒った。

キャシーは、院長に呼ばれて「電気ショック療法」の承諾をしていたのだった。

「受けたらニセものだとばれるじゃないか!」
キャシーは涙を流し、もう彼は自分がわかっていないと言う。
「私の事を本当の妹だと思っている」
さすがの局長もショックで言葉が出なかった。


ショック・トリートメント


電気ショック療法を受けるジョン。
キャシーの歌やこれまでの病院での体験がオーバーラップされる。

治療後、「まだ気づかれていない」と医者を騙している事に安堵するが、声をうまく出せなくなってしまう。


ボーデン博士


目撃者の最後の人物、ボーデン博士を廊下で見つける。
原爆の研究でノーベル賞を受賞した物理学者。
核分裂やロケットを研究した、現代を代表する1人。
趣味はスケッチ。
精神年齢は6歳程度だった。

ボーデンにあわせてかくれんぼをする。
すぐ下のベンチで丸見えなのに、あえてさがすふりをして楽しませ近づく。


キャシーとの面会では、調子が良く「ボーデンが正気になったら犯人を聞いて解決だ」と上機嫌でまともだった。


ジョンは、ボーデンに似顔絵を描いてもらう。
するとボーデンにしか聞こえない声で呼び出されているようで様子がおかしくなる。
「もうほっといてくれ!」

6歳児ではなくなっているボーデンに今が正気のチャンスだと思うが、うまく声が出るか不安になってしまう。
やっとのことで声を絞りだし、なんとか質問すると、スローンは犯人の看護人が知的障害者の女性を慰み者にしている事を知って、院長にばらすと脅していたという。
それをもみ消す為に殺されたのだった。

そしてその看護人は、ウィルクスだとはっきり言った。

ジョンは心の中でガッツポーズをする。
やっと答えが得られて、外に出る事が出来る!

その時、ボーデンが出来上がったジョンの似顔絵を見せた。(絵は見えない)
すると「俺じゃない!」と奪い取った絵描きノートでボーデンを叩き出した。
「もう君とは遊びたくない!!」

すでに狂人になっていた。


廊下の住民


ジョンは、せっかくウィルクスという名をつきとめたというのに、気がおかしくなったせいでその名がわからなくなってしまう。

枕元で診察する院長にスローン殺しの話をするが、犯人は俺だ、支離滅裂だった。
その時、院長が「ウィルクス」と言うが、それは側にいたウィルクスを呼んだだけだった。

院長がいなくなると、真犯人であるウィルクスは何故スローン殺しに興味を持つ? とジョンを警戒した。
しかし、「犯人はキャシーだ」と言い出す始末のジョンを見て安心して去って行った。


ジョンは拘束を解かれ、廊下に出た。
そこで、廊下に大雨が降る幻覚を見る。
その後正気になったのか、犯人の名前がウィルクスだと思い出し、ウィルクスを捜して襲い掛かる。

廊下で馬乗りに追い詰め、ウィルクスに「誰が殺したんだ!」と問い詰め自白をさせた。

駆けつけた院長には、謝罪をする。
「局長に電話すればすべて演技だと保証するだろう。肩の荷が下りた」


しかし、遅すぎた。
すべてを知った院長は、偽っていろんなテストを受ければおかしくもなる、とキャシーにもう手の施しようがない事を伝えた。

ジョニーに戻ったはずのジョンは、精神病患者でありながらピューリッツァー賞を受賞した。

筋肉が硬直して、いつか隣に座った青年と全く同じように固まって座っている。
抱き着いて泣くキャシーにも無反応だった。

正式に「さまよう幽霊」の仲間入りをした。


おしまい



かんそう:


60年代という時代を考えると、かなりショッキングな内容だったと思われます。

カラーも一部表現として使っているので、あえてモノクロを選んでいるようですが、ショッキングな内容を緩和する役目もしているように思えてました。

今でも焼き直しが通用する、推理ドラマではありますが、時代故のシンプルさが分かりやすくて、推理がメインではなくヒューマン・ドラマである事を浮き彫りにしていました。
何せ同時進行とか一切なくて、1人1人目当ての人が出てきて話しを聞いてという繰り返しですから、惑わされる要素は一切ありません。

ただ、のちに容疑者となる看護人の2人は、最初に嫌な奴といい感じの人という伏線を見せられて、最後そっちなの! というプチ・サプライズは用意されていましたが。


サミュエル・フラー監督については、ほとんど知識がありませんが日本に馴染みがあるようで、本作には富士山や鎌倉の大仏がカラーで登場していました。
モノクロの外国の世界にそれが出てくるだけで、かなりシュールで効果的なんですけど、狂人が一瞬素を取り戻す前の予兆のような使い方をしていました。

日本だからと言う訳ではなく、KKKの狂人の場合は原住民の映像がカラーだったり。

シュールといえば、恋人キャシーはセクシーな衣装で歌を歌う踊り子なんですけど、その衣装で毎晩夢に出るのを、小さなキャシーが寝ているジョンにまとわりつくように見せているのも面白かったです。

もうその様子だけで、ジョンが狂人っぽく感じられました。


巨漢のパリアッチが言う「眠れば異常か正常かの区別はつかない」は名台詞だと思いました。

この映画の言いたい事はこれだったんじゃないかな、と。




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