2018年3月4日日曜日

スプリット



スプリット(DVD)

2016年作品

監督M・ナイト・シャマラン

ジェームズ・マカヴォイ、アニャ・テイラー=ジョイ、ベティ・バックリー、ヘイリー・ルー・リチャードソン、ジェシカ・スーラ、イジー・コッフィ、ブラッド・ウィリアム・ヘンケ、セバスチャン・アーセラス、ブルース・ウィリス、M・ナイト・シャマラン


あらすじ:


ある日、3人の少女が誘拐される事件が起きる。
話し声からその犯人には仲間がいるのかと思ったら、1人だけだった……。




誘拐


孤独なケイシーは、学校では浮いている存在だったがお情けで人気者クレアの誕生日会に呼ばれていた。
頻繁に問題を起こしては、居残りをしていた。

誕生日会に参加はするものの、周囲に馴染む気はないようだった。
帰りはバスで帰るというケイシーを、クレアの父親は送って行くと誘った。

クレアと友人マルシアとケイシーの3人は車に乗り込み、荷物を運んでいた父親が運転席に座るのを待っていた。

しかし、運転席に座ったのは見知らぬ男だった。
男は3人にスプレーを掛けて意識を奪った。


監禁


気が付くと3人は1つの部屋に監禁されていた。

眼鏡をかけた神経質そうな男は、潔癖でもあるようでハンカチで拭いてから椅子に座った。

最初はお前だとマルシアを選んで部屋の外へ連れ出した。

マルシアは咄嗟にケイシーがアドバイスとして「おしっこしちゃえ」と言った通りにしたようで、すぐに戻された。
潔癖な男は、うめき声を上げながら濡れた手を振ってドアの向こうへ出て行った。

マルシアは男に「踊れ」と言われたという。

ケイシーは、突然強いられた過酷な状況に、幼少の頃を思い出し始めていた。


クレアは場を仕切り始め、空手を半年習ったから立ち向かうと言い出した。
しかし、ケイシーは冷静に無茶をするなと冷めていた。

不安なマルシアは、ケイシーにクレアの言う事を聞くように頼む。
3人が協力しないと勝てない。

それでも、ケイシーは勝てるわけないとはっきりと断った。
この場に及んでも普段と変わらず、孤立を選ぶケイシーにクレアは怒りと疑問をぶつけた。


カウンセリング1


三人の誘拐はニュースになった。
父親は昏睡状態にさせられていたという。
それを見ていたのは、フレッチャー医師だった。

そして緊急のアポイントをメールで知らせ、フレッチャーを訪ねたのは誘拐犯だったが、まるで別人のように明るく振る舞い、「バリー」だと名乗った。
男は解離性同一性障害(DID)なのだった。

バリーは、ファッションが好きなようでデザインのスケッチを持参していた。

緊急の用が何なのかフレッチャーが確認をすると、メールの事は気にしないでと言った。
衝動的なだけだから、もう問題はないと。
そう言うバリーは、机の上のキャンディの皿の位置を直していた。

フレッチャーはバリーの症例を元に、解離性同一性障害について今度スカイプを使ってパリで講義をする事になっていた。

帰るというバリーは大事にしているスケッチ・ブックを忘れそうになっていた。


解離性同一性障害


フレッチャーは隣人に、患者の事を聞かれて答えた。
「心に傷を負った人を劣っていると見がちだけど、もし私達より優れていたら?」


その後講義は「気分障害」すり替えらえようとしていた。
まだ大々的に認知されてはいないようだった。
フレッチャーは、証拠としてある患者が人格事に犬に違う反応をしていた事を繰り返す。

解離性同一性障害は、自分の信じる者に変わる際に、脳が自らを防衛している。
まるで超常的な力があるように。
トラウマをきっかけとして、特殊な力を手に入れている。

解離性同一性障害は、思考で体の化学反応も変わる。


3人目パトリシア


カウンセリングから戻ったバリーは、今度は誘拐をしたデニスと女性であるパトリシアに分裂して会話をしていた。

それを部屋から聞いていた3人は、女性に助けを求めるがドアを開けて姿を見せたのは女装の誘拐犯だった。
女性らしく性格は穏やかなのか、静かな口調で被害を加える気はないような事を言った。
「あなたたちの役割は彼も知ってるし、手は出さない」


3人は、戸惑った。
怖がらせようとしているのか。
それにしてもキャラを分けた会話は完璧だった。

そしてデニスが入ってきた。
いちいち服装も変わっている。

デニスは、3人に併設するトイレ掃除を命じると、パトリシアに言われたと説明を始める。

「お前らを連れてきたのは、聖なる食料にするため」
しかし何の食料なのかはわからなかった。


4人目ヘドゥイグ


次に目覚めると、無邪気にヘドウィグだと名乗った。
ヘドウィグは「あいつがこっちに向かってる」という。
その人が来ても楽しくはないとも言った。
3人以外の皆にひどいことをする、と。

その口調や態度からケイシーは、ヘドウィグの年齢を尋ねる。
ヘドゥイグは9歳だった。

ケイシーは子供ならなんとか扱えると思ったのか質問を続ける。

ヘドウィグは、自分とパトリシアやデニスは別人だと認識していた。
「僕が女に見える?」
そして、2人の事はあまり知らなかった。

助けてというケイシーに、無理だと言った。
「今は照明を盗んだからここに来られたけれど、長く盗むとデニスさんにバレて怒られる」
そして帰ろうとするヘドウィグをケイシーは引き留めた。
分かった事がある、と近くに呼んで耳打ちをする。
「あいつは君の所へ来る」
するとヘドウィグはそれを信じなかった。
「デニスさんは、女の子2人を4日間追ってあいつが求めるのはその2人だと言った」
それでもヘドウィグを操ろうと、「今回は男を求めてるから君を渡すって」と出まかせを言った。
パトリシアを怒らせた事のあるヘドウィグは疑いながらも動揺して涙を流した。
「私達は君の守り役よ」
その為にはここから出ないと、と出口に案内させようと誘導する。

しかし、それはさすがに無理だとヘドウィグは冷静を取り戻した。
そして出せないと言って出て行ったが、その時に漏らした一言が気になった。

「上の人に内緒でここを安全に変えた」


抜け穴


3人は慌てて、何かを封じた痕跡がないか部屋を確認し始める。

するとクレアが天井の一部に空間がある事に気づいた。
デニスらに気づかれないうちに、壁紙を剥がすと確かに穴を塞いでいるのを見つけた。
まだヘドウィグのままの男が気づくが、今がチャンスだからと中に入れないように残りの2人でドアを押さえた。

作戦は成功し、クレアは天井の穴から脱出をした。
クレアはパイプが這う、何かの施設の地下のような広く暗い空間を一直線に走る。

次にデニスにチェンジすると、2人で抑えたドアは簡単に押し開かれた。
デニスはすぐにクレアの後を追った。

クレアは従業員のロッカーの中に隠れた所を、デニスに見つけられた。

諦めてロッカーから出ると、潔癖症なデニスは汚れた白いセーターを脱ぐよう命じた。
そしてクレアだけを別室の狭い倉庫に閉じ込めた。


2人の元に戻ったデニスは、天井を封じ2人の汚れた衣類も脱ぐよう命じた。
マルシアにはスカートを、ケイシーにはシャツを。
ケイシーはまだ長袖のパーカーを着ていた。


スカイプ講義


フレッチャーはスカイプで解離性同一性障害についての講義をしていた。

人格によってコレステロール値が変化する事もある。
蜂アレルギーが出たり出なかったりする事も。

「照明」という権利を得る音によって違う人格が同時に出る事もある。
ある少女は、左手と右手で同時にそれぞれ違う筆跡で別の文章を書いた事もある。

人格によりIQも体力も変わる。
DID患者は、苦悩を通じて脳の潜在能力を解放したのかも。

フレッチャーはそんな彼らを、いわゆる超能力と呼ばれるものの由来ではないかと自論を述べた。


カウンセリング2


バリーの定期カウンセリングが行われる。

しかし、フレッチャーは「あなたは誰?」とバリーに聞いた。
そろそろ誰と話しているのか分かってきたという。
バリーと名乗るが、本当は別の誰かがバリーの振りをして来ているのだろう、と。

唐突にメールを寄越しているのも、バリーではないから取り繕おうとしているのではないか。
「照明」の奪い合いを、バリーはコントロールしきれなくなっているのかもしれない。

頑なに自分はバリーで、何も心配はないと言うがフレッチャーには信じられなかった。

バリーからは、バリーの本体である「ケビン」が持つ23の人格の特徴を聞いていた。
そこから考えると、今目の前でバリーの振りをしているのはデニスではないか、と推理した。

デニスは、照明を貰えない問題のある人格だった。
理由は裸の女の踊りを見たがるから。
本人も罪悪感はあるが誘惑に勝てない。

フレッチャーは、デニスにやっと会えたわね、と言う。

その理由も具体的に付け加える。

チョコの皿を何度も直す強迫性障害。


デニスとパトリシアはある「信念」が原因で証明を得られないはず。
それが出てきているのだとしたら、今のリーダーはバリーではなくデニスとパトリシアになっているのかもしれない。

それでも、バリーだと言い張るとフレッチャーは謝罪をした。
「疑うのが仕事だから」


バリーが帰宅すると、フレッチャーは自宅前の防犯カメラの映像でバリーが帰って行くときの様子を確かめた。

散乱したゴミの上を気にせず歩いて行く。
潔癖症には無理だろう、と管理人のジェイが言うとフレッチャーは「普通の人でもゴミは避ける」と今のが見られている事を意識した上での演技だと指摘した。

デニスは何を企んでいるのか?
それとも黒幕はパトリシアなのか?


パトリシア


2人が目覚めると、食事を作って待っていたのはパトリシアだった。

パトリシアはケイシーのロングヘアーを梳き、髪に花飾りをつけた。

機嫌が良いのか、もっとマシな所で食事をするようにと2人を部屋から出した。

部屋の外の大量の洋服ラック等を見ながら、クレアが閉じ込められている部屋の、並びのキッチンに案内された。
クレアは歓迎を踏みにじったからと呼ばれる事はなかった。

ケイシーは動物の話しをする、パトリシアに話しを合わせた。

更にサンドイッチを作ろうとするが、カットする際に曲がったと一瞬癇癪を起す。
神経質なデニスの要素も持っているようだった。

そしてサンドイッチ作りに没頭しているパトリシアを、マルシアは椅子を使って殴って部屋から逃げ出した。

ただ見ていただけのケイシーは、部屋に戻るよう命じられた。

すぐにマルシアはナイフを持ったパトリシアに見つかり、クレアの近くの別の個室に閉じ込められた。


ビースト


1人になったケイシーに、デニスが「じきにビーストがやって来る」と言った。

パンくずだらけのケイシーのパーカーを見て、デニスは脱げと言う。
パーカーを脱いだケイシーは、それでもまだ長袖のTシャツ姿だった。


ケイシーがベッドで目を覚ますと隣に、ヘドウィグが寝ていた。
以前騙した事でケイシーを責めた。
ケイシーが厚着である事は、仲間内での話題になっているようだった。

ヘドウィグはこれまでは、バリーがリーダーで誰に照明を当てるか決めていたという。
でも今、バリーは力を失ったとはっきりと言った。
そしてデニスとパトリシアの仲間になった事で、自分も好きに照明を当てられるとゴキゲンだった。

更にまだ見ぬ24人目の人格「ビースト」についても語る。
デニスとパトリシアが信じる、力を持つ存在。

ヘドウィグはケイシーにキスを強請り、カニエ・ウエストに合わせてのダンスにも誘った。
その際にCDプレイヤーが窓辺にあると聞いて逃げられるかもしれない、と話しを合わせる。
内緒で部屋に連れて行ってというと、今度はさすがに騙されないと騒ぎ出す。

ケイシーは、ヘドウィグを信用させるために自分の秘密を教えると言った。
それは学校でわざと騒ぎを起こしていると言う事。
居残りを望む為に。

そうすれば独りになれるから。

ヘドウィグはその話が気に入ったようで、デニスさんの用事を済ませた後で、と部屋に案内する約束をした。


カウンセリング3


またフレッチャーに緊急アポのメールを出したものの、カウンセリングに現れたのはメールの事は気にしないで、と言うバリーだった。

フレッチャーは仮説を立てた。

まずは、職場での事件の細部を思い出して欲しい。
職場に高校生が校外学習で来た時。
女子2名がバリーに近づいて、あなたの手を取り自分達の胸に当て笑いながら去って行った。
一種の度胸試し。
それをバリーは数日怒ってた。

フレッチャーはその時に自分がミスをしていたと言い出す。
この事件そのものに注目せずに流してしまった。
その時の人格に平気だと言われて。

でもその事件が、子供時代の虐待の記憶を思い出すトリガーになっていた。
そして、抑えられていた人格に照明が当てられた。

「もし、あなたがデニスならあなたの動機は理解できる。
皆を守る為に現れたのね」

デニスとパトリシアが皆に語るビーストについても、フレッチャーは単なる作り話だと思っていた。
皆を怖がらせる為だろう、と皆に説明していた。

ビーストはクライマーのように壁を登る。
壁に傷さえあれば垂直であっても体を支えられる。
皮膚はサイの肌のように厚くて丈夫。

「そんな存在を本当に信じているの?

ケビンがデニスを必要とするのは分かる。
私を信じて」

フレッチャーは、バリーの振りをしているだろうデニスの警戒を解きたいのだった。
その為に、ケビンのフルネームを唱えて本体を呼び戻す事も出来る、と脅しのような事も言った。
「でもやらない。
あなたたち全員が混乱に陥るから」

全員がそれぞれにケビンを守る為に存在している、と人格達に平等に理解を示す。

その気持ちが通じたのか、バリーの振りを止めてデニスとして話し出す。

自分達を「群れ」だと呼ぶ人格達。
その中でパトリシアとデニスは、はみ出し者として扱われていた。
でも頑張っているんだから、認めて欲しい。

フレッチャーは思わずもらい泣きをして、デニスとの正式な初対面に握手を求める。
それでもメールの送り主はわからない。
今のリーダーはパトリシアとデニス。

でもそれ以上は、質問を重ねてもデニスは答えなかった。

フレッチャーは皆が照明を待って座る部屋にビーストはいない、という。
だから会った事もないし、住む所が違うのだろう。
ケビンの父が列車で死んだから、車両基地に住んでいる。

2人もビーストには会っていないはずだ、と。
するとデニスは会っていない事は認めた。

それを聞いたフレッチャーは「ビースト」という人格が存在しないと自分の考えの正しさに自信を持った。



カウンセリングから戻ると、ヘドウィグがケイシーを呼びに来た。
クレア達の部屋の前を通り、ヘドウィグの部屋に招待されると9歳という年齢らしい自作の動物の絵が沢山飾られていた。

そして、CDプレイヤーが置かれた窓というのもヘドウィグが自分で描いた「絵の窓」だった。

どの部屋にも窓が無い事から、恐らくどこかの地下にいるのだろう。

絶望を感じたケイシーは、なりふり構わずヘドウィグに助けを求めた。
「ここから出るのを手伝って」

しかし、ヘドウィグは「ビーストが来たらもうバカにされない」と頓珍漢な事を言い出し、ケイシーを部屋に戻そうとした。
ケイシーはせめて少しでも外にいたい、と何か見せてくれる約束をしていた話しを持ち出す。

すると、ヘドウィグが見せたのはトランシーバーだった。
デニスのを内緒で盗んだからおもちゃではないと言われる。
それで盗聴をしているらしい。

電源をONにするとすぐに誰かが反応した。
ケイシーはヘドウィグが止めるのを制して、助けを求めた。

だが通信の相手は、何かの悪ふざけだと思って取り合わなかった。

そうしている間に、ヘドウィグはパトリシアに入れ替わっていて、ケイシーは部屋に戻された。

そしてパトリシアが姿を消し、デニスと入れ替わる間に床に落ちていた金具をこっそり拾っておいた。


デニスはビーストの説明をした。
感覚が研ぎ澄まされていて、人間がさらに進化した姿だという。

普段なら剥ぎ取る衣類をその時は、着せたままにしていった。
「聖なる夜だから」

どうやらビースト登場の準備が出来たようだった。


ケイシーの過去



ケイシーの過去もいよいよ、核心に辿り着いていた。

幼い頃から狩りをする一家で、父とその弟と森に入っていた。
父は幼いケイシーにも狩りのルールを教えていた。

そして姪を可愛がる弟は……、人知れず幼いケイシーを森で2人だけの秘密の遊びだと言って服を脱がせて虐待していた。

ある日ケイシーは、そんな叔父にライフルを向けていた。
幼いながらにも、虐待にストレスを感じていたのだろう。

だが逆切れに怯え、撃つ事は出来なかった。


フレッチャー医師


フレッチャー医師の元に、バリーから「すぐ来て」というメールが20件も来ていた。

心配したフレッチャーはすぐにバリーの住所を訪ねた。
タクシーを降りる時、何故か運転手は「もう閉まってますよ」と言った。

そこへちょうど家から出てきたデニスと出くわす。
デニスはメールの事は知らなかったようだった。

フレッチャーに中で話しましょうと言われると、デニスは素直に受け入れた。

デニスはケビンの母親がケビンにした事を全部覚えているといった。
3歳の頃から厳しくしていて、その頃デニスが誕生したという。
怒られない為には何でも完璧にこなすしかない。

患者は家族だとうフレッチャーに、デニスは嘘をついていたと告白する。
ビーストに会っていないと言ったのは嘘だった。

10年前、盲目だった女性の話しをフレッチャーは書いていた。
その女性はDIDだと判明し、人格により視覚が戻った。
彼女の信念で視神経が再生したと、推測していた。

そんなフレッチャーなら、ビーストの実在を理解するだろう。
そして今、ちょうど現れた。

ビーストは身長も高く、筋肉隆々としている。
髪はたてがみのように長く、その指は俺たちの倍はある。

そしてビーストもフレッチャーと同じ意見だという。
「俺たちは、『負の存在ではなく可能性の具現化だ』と」

それでもフレッチャーは、あり得ないと信じなかった。
人間がなれるものには限界がある。
それにもう1つの説。
「不純な若者を食べる」という言葉の意味は?

デニスはまだ理解してもらえない状況を惜しみつつも、時間がないようだった。
ビーストに会うのに。

フレッチャーは硬直した空気を変える為、すべての話しを記録させて欲しいと切り出した。
明日改めてフレッチャーの家で。

デニスは、それを歓迎しながらフレッチャーを送り出す。

この時そのまま帰宅していればフレッチャーは無事帰宅できたのかもしれない。

何か不穏な気配を感じ取っていたフレッチャーは、こっそり部屋のドアにティッシュを詰めてロックがかからないように細工して、トイレを借りたいと申し出た。

案内されたのは、クレア達が監禁されている廊下の先だった。
そしてブラ姿で倉庫に倒れているクレアを見つけて驚く。
恐れていた事が現実になってしまった。

「彼女たちは向上心のない連中だ」
フレッチャーは、やっとデニス達の能力を軽く見ていたと気づく。

デニスの目的は世界に力を知らせる事。
しかし、フレッチャーは犯罪であり、こんな事をさせる人格は化け物だと指摘した。
「この場所での時間が『ビースト』を生み出したんだわ」

理解してもらえないとわかると、デニスはフレッチャーに催眠スプレーを掛けた。


抵抗


フレッチャーの登場に、クレアとマルシアは希望を感じて壁越しに会話をして脱出を目指す。
マルシアは部屋でハンガーを見つけた。
これを使ってドアの外の鍵を解除しようと。

その頃、ケイシーも拾っていた金具で部屋のドアを開けていた。
だが、続きの部屋の先のドアには別の鍵がかかっていた。

部屋の中でパソコンを見つけるが、ネットには接続していなかった。

パソコンのデスクトップにはナンバリングがしてあるファイルが並んでいる。
ファイルをクリックするとそれぞれの人格になった動画が再生された。
ある人格は、自分だけが糖尿病でインスリンを打っている事を嘆いていた。

そしてバリーは心配事を語っていた。
照明の仕切りに自信が無くなっている。
誰かが盗んでいるような。
そこへ「無敵の男(ビースト)」の話しばかりをする2人。
何を企んでいるか知らないが怖い。

それはそれぞれの人格の日記のようだった。
動画の中に、鍵を隠す所が映っていたのを偶然見つけて、ケイシーは部屋の鍵を入手した。


ビースト


デニスは駅へ向かうと、途中でパトリシアになっていた。
パトリシアにはデニスの眼鏡は度がきつくて、すぐに外した。

花を買い、駅のホームに立つ。
電車が入ってくるとまたデニスに戻ったようで、眼鏡をした。

そして誰かに手向けるように花をホームに置いた。

到着した列車に乗り込むと、回送のようで中は無人で電気もついていなかった。
暗闇の中、デニスは上半身の服を脱ぎ始める。


それはビーストだった。
ドアから出てそのまま列車の屋根に乗り、自宅へ向って走り出した。


メッセージ



その頃、フレッチャーは気を取り戻していた。
とはいえ、フラフラな状態で何かのメモを残す。

そこにケビンが戻ってきたようで、フレッチャーは「ケビン」と本名を呼びながらテーブルにあったナイフを手に持った。

しかし振り返って見たケビンは、デニスの言う筋肉隆々で体中の血管が浮き上がった人間離れしたビーストだった。

ビーストはフレッチャーを背後から羽交い締めにするとその腕の力だけで骨を折り、殺した。
反撃で刺したナイフは、ビーストの皮膚の固さに砕けていた。


覚醒


鍵を使って部屋の外に出たケイシーは、腹を食い荒らされたマルシアが倒れているのを見つける。

クレアの部屋のドアを開けると、まだ息のあるクレアに逃げようと声を掛けるがその身体は引きずられて視界から消えて行った。

部屋の奥では、ビーストがクレアに食らいついていた。

すぐに別の部屋のフレッチャーの遺体も見つける。

その部屋の中でフレッチャーの書き残したメモを見つけた。
「彼の名前を呼んで。
ケビン・ウェンデル・クラム」

それはフレッチャーがデニスに言っていた、いつでもケビンを呼び出せる呪文なのだろう。

ケイシーが振り返ると、一見指を引っ掻けるのは無理に思える薄い凸凹のある壁をビーストはよじ登っていた。

そして呪文を唱えると、フレッチャーの言うとおりそれは効いたようだった。


ケビン・ウェンデル・クラム


ケビンに戻ると、ケイシーに「君は誰だ?」と聞いた。
ケビンの記憶は2014年の9月で止まっていた。
バスに乗ったのが最後の記憶だった。

状況やフレッチャーの遺体が自分の仕業だと知ると、ケイシーにショットガンと弾の在り処を教えた。
「僕を殺せ」

ところがすぐにジェイドというフレッチャーにメールを出していた女性に変わって、ケイシーを止めた。
そこから内面で混乱をしているようで次々と人格を変えていった。

ヘドウィッグになると、トランシーバーの事でケイシーを責めだした。

ケイシーはショットガンを棚から取り出した。
しかし弾は入っていない。

再びケビンの名を呼ぶが、パトリシアに「もう寝かせたから彼には聞こえない」と言われてしまう。
ビーストは存在の維持により大勢を求めている。
次は無価値な若者を10人から12人ほど。

そう言うと、ビーストにチェンジをしたようでみるみる体型が変わっていく。


汚れなき者


ケイシーは、フレッチャーが詰め物をしたお陰でドアを開けて部屋の外に逃げた。
弾を隠したというロッカーに辿り着き弾を手に入れ、仕留める覚悟で来た道を戻った。

途中ビーストに襲われ足を噛まれてしまうが、ショットガンを向けてなんとか逃げた。

奥に行くと檻があった。
天井の高い所には、外と繋がる小窓を見つけて、大声を出して助けを呼ぶ。


ショットガンを持った事で、ケイシーは幼い頃の虐待をまた思い出していた。

幼少の頃に父親を失い、そんな叔父と暮らさなくてはならなくなっていた。
一緒に住めば叔父は虐待し邦題だろう。


ビーストは、天井にも這うパイプを伝い、電球を壊しながらケイシーに向かってくる。
ケイシーはしっかりと父親に習ったハンティングのスキルを発揮しようと、銃口を向ける。

自分に都合の良い御託を並べながらゴーストが近づいてくる。
ケイシーは背後の檻に逃げ込み、ビーストを確かに撃ったはずだった。

しかし自分には銃など効かないという。
3発は撃ち込んだだろう。
それでもビーストは立ち上がった。

そして檻を掴むと食いしばる歯から血を流しながら、腕の力で歪めた。

このままではケイシーも食われる。
そう思った時――。

破れたTシャツを脱いで、初めて素肌をさらしたケイシーを見て動きを止めた。

ケイシーの身体は傷痕だらけだったのだった。

「お前は他の連中とは違う。
お前の心はけがれていない。
喜ぶがいい!
失意の者はより進化し者なのだ」

そして静かに立ち去った。


救出


翌朝、ケイシーの檻の前に男がやってきた。
ケイシーを見つけると驚きすぐに保護をした。

抱えられて地下から地上に向かうと、その施設は動物園だった。


車に乗って待っていると、保護者の叔父が迎えに来たと言われる。
だがケイシーはこの事件から何かを学んだのだろうか。
車から降りる事はしなかった。


ビーストはあれだけ至近距離で撃たれていたのに、弾が皮膚を貫通していなかった。
そしてもちろん生きている。
ビーストが現実になった事を、信じていた者たちは喜んでいた。

これからはビーストが全員を守ってくれる。
そして自分達の強さを世界に知らしめる。


ケビン・クラムの事件は、ニュースで大々的に扱われた。
生死は不明。
それぞれの人格は仕事先の動物園の、動物に由来していたという。
マスコミは早速あだ名をつけた。
「群れ」と。

その衝撃的な内容に、ダイナーの客は15年前の事件を思い出していた。
車椅子の悪党の――。
その時もあだ名がついていたはず、というとカウンターの隣に座る男が答えた。

「ミスター・グラス」

その男こそ、グラスと深く関わっていたダン(ブルース・ウィリス)だった。


おしまい


かんそう:


初見は、正直面白くは感じませんでした。
解離性同一性障害者による少女監禁という、負のイメージが強すぎてそもそもあまり積極的にドラマに集中していなかった(できなかった)んだと思います。

でも、ラストに「アンブレイカブル」のダン(ブルース・ウィリス)が登場して「ん?」と思考に刺激を受けました。

そしてある程度物語を理解した上で見た2回目。
フレッチャーやデニスのセリフから、シャマラン監督の伝えたい事、それは今思えばシャマラン監督のライフワークでもあるように感じられる「アンブレイカブル」からの一貫したメッセージがあると感じられました。




「アンブレイカブル」は、生まれつき身体の弱い男がそんな自分の存在理由を見つける為に、逆の存在――、不死身のスーパーヒーローも何処かにいるんじゃないか? と考え大事故を起こすことでそのヒーローがあぶり出せる、と気が付けばヒーローに対する大悪党になっていた、という物語でした。

そして実際、あぶり出されたのが「ダン」でした。

本作は、そんなアンブレイカブルの「実は」続編のような作品でした。

大きなテーマというかメッセージとして感じたのは、「失意の者はより進化し者」。
本作に限れば失意の者とは、虐待被害者だと言えます。

それは、ケビンでありケイシーでもあり。

フレッチャーはDIDの患者と接する中で「彼らを下に見がちな傾向」に疑問を持っていました。

それこそ、ケビンの群れ達が世界に伝えたい事そのもので、DIDであるが故に「ビースト」という超人を生み出す事が出来た。

ケイシーが最後、叔父の出迎えに抵抗を示したのは、ビーストの超人パワーを目の当たりにして自分にも勇気が芽生えたせいかもしれません。

とはいえ本作の中ではケビンの群れと出会った事によるケイシーへの影響は、多くは語られていません。
この辺は、「アンブレイカブル」の続編「GLASS」(2019年公開予定)で語られるのかもしれません。
(新作には、ケビンとケイシーの出演が予定されています)

アンブレイカブルもまた見返したくなりましたが、久しぶりにシャマラン監督作品で興奮を覚えました。

と同時に、少し「解離性同一性障害」の奇妙さが全面に出過ぎていて損をしているようにも感じました。

私自身最初は、そのインパクトに余計な先入観を持っていました。
演じる役者を見るだけの作品なのかな~と。

そして監禁という暗く、厳しいイメージもマイナスでどこか距離を持って見てました。

ですが、実際は確かに「監禁」されますが想像よりも暴力シーンがなく、最終的に2人は死んでしまいますが、ファンタジックな「食い殺される」というホラー・テイストになります。
服を脱がされるシーンもありますが、それはあくまでも潔癖なデニスが汚れた服を見るのが嫌なので、必要以上の露出シーンはありません。

でもそれでも十分、少女達の恐怖は伝わります。
この監禁の塩梅は、作品としてはちょうど良かったと思います。

初期のシャマラン作品を思い出すような、最後に知ってなるほど、と思わされる仕掛けとしては「そこは動物園の中だった」という状況でした。
ビーストという人格はもちろん、物語の中に「動物」が散りばめられていた事にもその時改めて気づきました。
まず、ケイシーの鹿狩りに始まり、パトリシアの動物の話し、ヘドゥイクの描いた動物の絵等。

ケビンの人格を「群れ」と呼んでいるように、それぞれのキャラも動物に由来しているとも。

極め付けはケビンの職場が動物園で、その地下にこっそり住んでいたという事。
この辺は疑問もあって、フレッチャーはケビンを訪ねるのにまっすぐ動物園に来ています。
(だからタクシー運転手は「もう閉まってる」と表現していた。その時は公園にでも住んでるのかな、と思ってた)

ケビンの職場が動物園である事を知ってたフレッチャーは、その時点で何か疑問を感じたりはしなかったのか?
(初めてケビンの自宅の住所が動物園である事を知ったとしたら尚更だし、知っていたのならなぜそれが納得できたのか?)


あと何より、ビーストの超人化そのものはヨシとしても、最後に少女を食べるといういきなりのファンタジー設定は余計だったように思いました。

今の次点では、結構ビースト化を肯定しかけていた所に、突然漫画ちっくになってガクっとしただけになっています。
まああくまでも、アメコミ的なファンタジーの世界だと言っているのかもしれませんが……。
それだとフレッチャーの存在価値が薄まってしまうので、残念になります。

(そもそもアンブレイカブルの「不死身」が存在するという世界はアメコミなんですけどね)


とにかく、アンブレイカブルを見た時に少なくとも私にはまったく発想のなかった「追い詰められる事で人間があり得ない力を発揮する」というテーマに、今回は素直に面白さを感じました。

繰り返しになりますが、もう一度アンブレイカブルも見たくなりましたし、新作というのもとても楽しみになりました。

これは良いシャマランだと思いました。




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