2017年6月12日月曜日

クロノス



  ギレルモ・デル・トロ クロノス HDニューマスター版 DVD

1992年作品 メキシコ
監督ギレルモ・デル・トロ

フェデリコ・ルッピ、ロン・パールマン、タマラ・サナス、クラウディオ・ブルック、マルガリータ・イザベル

あらすじ:

永遠の命を与えるクロノス。偶然にそれを手に入れ、作動させてしまい……。



天使の像


古美術店をしていたヘススは孫のアウロラと店に揃って出る程、仲が良かった。

ある日、男が店に入ってきて像をチェックして行く。
声をかけても満足に返事もしないが、ある像を見ると店の外へ出て行った。
天使の像だった。

その後、アウロラとパズルをして遊んでいると、その天使像の空洞になった片目からゴキブリが沢山出てくる。
執拗に叩くアウロラ。

その後、像の中に何かあるのかと調べ始める。
台座から外して中を見ると、布に包まれた何かが出てきた。

黄金の綺麗な模様の入った楕円形の、掌サイズの小物入れのようだった。
まるで女性のコスメアイテムのような。

さっきの男はこれを探していたのかもしれない。
店の外で男が電話をしている姿が確認できた。


クロノス


天使像を探し求めているのは、アンヘルの叔父だった。
クリーンルームに住んでいる病気の老人は、死を身近に感じていた。
資産はあるようで、アンヘルを自分の手足のようにこき使い、永遠の命を手に入れようと躍起になっていた。

これまでも捜し続けていたのだろう、ビニール袋を被った天使像が大量に天井からつるされている。
自分から取りだした内臓のホルマリン漬けも並んでいた。

16世紀に実在したと言われる錬金術師のウベルト・フルカネリのノートは40年前に手に入れていた。
そこに記されていたのが「クロノス」だった。
永遠の命を手に入れる為の鍵となるものが、天使像に隠されている、と。

それは、ヘススが偶然にも天使像から取り出していたものだった。
翌日、からっぽの天使像をアンヘルは買っていった。


永遠の命


偶然にもクロノスを手に入れてしまったヘススは何も知らず、その黄金の見た目からメンテナンスをする。

そしてすごいものを見つけたのでは、と思いながら掌に乗せて眺めていた。
ねじのようなものを巻いてみると、しばらくしてから突然左右から3本の足のような突起が飛び出した。
ただのおもちゃかな、と笑っていると突然、その足はヘススの掌をがっしりと掴むように刺した。

あっという間に血まみれになったクロノスは、自然と足を引っ込め元の形に戻った。

アウロラには危険だから触るな、と注意して靴箱にしまった。


夜になると、傷がうずき喉が渇いて仕方ないヘスス。

どうにもたまらず床に倒れると、隠しておいた靴箱が目に入る。
痛みを受けたはずなのに、またそれに手を伸ばしてしまう。

そして、主の祈りをつぶやきながらまた作動させてしまう。
痛みを欲するかのように。

クロノスは血を吸う事で中の機械が作動し、そして中にいる昆虫のような何かが動いているのだが、その黄金に包まれた細工をヘススが見る事はなかった。


アウロラは物音に気づき、そんなヘススの様子を見てしまう。
ヘススはそれに気づく、心配ないと声を掛け胸に十字を切った。


翌朝、ヘススが鏡を見ると、気のせいか若返っているように感じた。


靴箱


店に出ると、店は荒らされていた。
犯人はアンヘルだ。クロノスを捜したのだろう。
名刺の住所に、ヘススは靴箱を抱えて訪ねて行った。

アンヘルに恨むなよと出迎えられ、叔父の部屋に通される。

そこで、叔父はフルカネリのノートをヘススに見せた。
クロノスの事、使い方に関する厳密なルールが載っていると、説明した。

ぱらぱらと捲るヘススは図面を見て「昆虫?」と聞いた。
すると、叔父はやっと話が通じる相手に出会ったかのように興奮して言った。
「そうだ。
生きたフィルターとして、機械の中に組み込まれているんだ」

だが、ヘススがあっさりと「これを信じているのか?」と言うと途端に叔父も冷めてノートを取り戻した。

死にかけているから永遠の命を探している、と話しながら隙を狙いヘススが持参した靴箱を奪った。
その時、靴箱を取り返そうとするヘススの手に巻かれた包帯に気づき叫ぶ。
「使ったのか!」

ヘススは追い返されたが、靴箱の中にはクロノスは入れていなかった。
最初から渡すつもりなどなかったのだ。

それに気づいた叔父は、帰っていくヘススに声を掛ける。
「クロノスはあっても、説明書がないだろう」


永遠の命


ヘススは、クロノスがどんなものかもよくわからないまま、憑りつかれたように使用を続けた。使うと気分が良くなるのを感じた。

心配したアウロラが隠したりもしたが、アウロラを説得し、クロノス置き場はアウロラのお気に入りの熊のぬいぐるみになっていた。

家族で出かけたパーティーで、鼻血を出した客を見ると無償に血を欲した。
後をつけ、こっそりトイレに落ちた血を舐めた。
床に這いつくばってまでも。

その時、誰かに襲われた。
アンヘルだった。

クロノスを取り戻す為の使いに来たのだろうが、そもそも叔父の言ってる事をくだらないと思っていたアンヘルは、それに付き合わされるのが煩わしく、そのままヘススを殺そうと車ごと崖から落とした。


アンヘルが家に戻ると、叔父に心臓停止の確認をしたか、と異様に責められた。
心臓を射抜いたかどうかに拘る叔父に、わからないというと叔父はヒステリックになった。
それが大事なんだ、と。


そして死が確認されたヘススは、遺体処理を施されていたが、火葬の直前に息を吹き返し、棺桶から逃げ出していた。

ヘススは永遠の命を手に入れていた。


ありのままの


夜、こっそり家に戻るとそれを分かっていたかのように、アウロラが出迎えてくれた。
変わり果てたヘススの姿に驚きもせず、黙って。

ヘススはすぐにクロノスを刺し、しばしの休息を得る。

朝になると日の光を嫌がったので、アウロラは自分のおもちゃ箱の中を開け、ヘススのベッドを作った。
左右には人形を添えて一緒に並んで寝かせると、その蓋を閉めた。


目覚めると、妻メルセデスへの手紙を書くが、何度書いても字が上手くかけない。

皮膚は腐敗し、ただれ、剥がれてフランケンシュタインのようになっている。

もし自分が戻ったらありのまま受け入れて欲しいと願った。


説明書


やはり説明書が欲しいと思ったのか、ノートを盗み出そうと家を出たヘスス。
所が、アウロラも心配したのかクロノスを持って後についてきていた。
仕方なく、一緒にアンヘルの叔父の部屋に侵入し、本を捜した。

そこに老人が目を覚まし、声を掛けてきた。
ヘススの手にはノートがあったが、すでに主要なページは食べてしまった、という。

永遠の命というが私は腐ってると、ヘススがクレームを言うと、むいてみろ、と教わる。

皮膚を剥くと下から新しい白い皮膚が見えた。
脱皮のように。

生まれ変わったと叔父は言った。

そしてこっそりアンヘルを呼び出すベルを鳴らしたが、アンヘルはうんざりしていたのですぐには駆けつけなかった。


なぜこうなった! とヘススがキレると、血を飲めと言われる。
人間の血を。
クロノスの与える永遠の命というのは、吸血鬼になるようなものなのだった。

永遠の命などいらない、と興奮するヘスス。
あくまでも叔父にクロノスを渡すつもりはないが、その実物を取り出して見せると、叔父は杖でヘススをつついた。

倒れたヘススに叔父が乗っかり、心臓に止めを刺そうとすると、アウロラが背後から杖で殴った。

その隙に、逃げようとするも、叔父の血を見て思わず首に食らいつきすすう。

そんなヘススを見ても引かないアウロラ。


その後アンヘルが到着し、2人を追って屋上に出る。
アウロラが安全な場所に居る事を確認すると、ヘススはアンヘルに抱き着き一緒に墜落する。
痛みは感じるが自分は助かると信じて。


ヘスス


アウロラは、倒れているヘススの元へ到着するとクロノスを作動させ胸に突き刺した。
気づいたヘススは、前にも増してダメージを受けていたがクロノスのお陰で再生したのか、腹に手を突っ込むと皮膚を剥ぎ出した。

その光景には、さすがのアウロラも初めてイヤそうな顔をする。

アウロラに気づくと、近寄り顔に手で触れようとする。
アウロラの手には誰のかわからないが血がついていて、怖かったのかもしれない。
「おじいちゃん」と初めて声を出して呼び掛けると、ヘススは突然クロノスを外し、叩き割った。

クロノスに頼る生き方を捨てたのだ。

何度も自分はヘスス・グリスだと繰り返した。


そしてヘススは、家のベッドで寝ていた。
白いワニ革のような皮膚になった異形の姿で。

クロノスはもう存在しない。

そんなヘススにアウロラはしがみつく。
メルセデスも側へ来てヘススの白い手をとり顔に寄せた。

やがてヘススの手は支えを失うとゆっくりと重力に従った。


おしまい


かんそう:


ギレルモさんは吸血鬼がお好きなんでしょうかね。
最近のドラマシリーズ「ストレイン」もヴァンパイア製造みたいな感じのようで。





序盤でアウロラがクロノスを隠した時には、うっかりアウロラも使っちゃってヘススと一緒に「ポーの一族」状態になるのかと思いましたw
全然違いましたねw



そもそもクロノスを作った意図がよくわかりませんでした。
もっと細かく言うと「凡人には」わからないw

永遠の命に憧れるのは、わからなくはないですけど、それの代償がキツすぎません?
人間の血を吸うだなんて、リスクが高すぎる!

どっちかというと、「吸血鬼」という存在が前提にあって、「それになりたい」と思う人がそれを叶える為の道具、って感じがしました。
そうであれば妙な設定に納得できる凡人です。


ホラー系はほとんどがそうだと思いますが、そもそも見る前に好きか嫌いかの判断がされていて見る物だと思いますが、本作はおじいちゃんと孫のかなり強い絆という、普遍的に見ていて感動するストーリーがかなり濃かったです。

むしろホラーというよりは、愛の物語って感じで。
アウロラはもう1人の主人公といっても過言ないくらいの大活躍ですし。

小さな女の子ながらに、クロノスの事をヘスス以上に理解しているようでしたし、ヘススの為ならじじいを杖で叩き倒す事まで。
スーパー少女でした。
この辺がちょっとコメディちっくでもあるくらい。

そういう意味では、ホラーだからパスっていう人にももしかしたら見たら、何かあるかもしれません。
そんなに絵的に怖いものもなかったですし。

クロノスの細工は、これまた好きな人にはたまらないアイテムでしょうね。
ちなみに中には機械と虫が入っているのですけど、この虫は放置されている状態でも死んでいないのか、死んでても血さえあれば生き返るのか。

さすがにノート(トリセツ)が不十分なので、よくわかりませんでした。

とにかく、ヘススがクロノスを手に入れても、それに惑わされずに、アウロラの愛のおかげで人として踏ん張り、人として? 家族に見守られて死んだという暖かいお話しでした。

見た目は十分人じゃなかったけどw

でもアウロラの態度がすべてを語っていたんだと思います。
肌がボロボロになって、首が180度周っちゃっても、ハートは優しいおじいちゃんのままだから、アウロラは恐れず常にヘススに懐いていました。

それが一瞬、ヘススを怖いと思った瞬間。
恐らくヘススが自我を失いかけた瞬間だったんじゃないのかな、と思います。
「おじいちゃん」と作中で最初で最後に発したのは、そんな気持ちの表れだったんでしょう。

それによって、ヘススはクロノスを壊しましたから。
ヘススにも、やべっ! って自覚があったんでしょうね。

わかりにくいようで、何気に普通の感動ドラマだったと思います。




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