2017年5月18日木曜日

偽りなき者



偽りなき者 【DVD】

2012年 デンマーク

マッツ・ミケルセン、トマス・ポー・ラーセン

あらすじ:少女のウソからある日突然変態扱いされ、村で迫害されてしまい……。




幼稚園で働くルーカス(マッツ・ミケルセン)は、バツイチで思うように息子に会えない生活をしていた。
生徒の中に友人テオの娘でクララがいたが、幼いながらにルーカスに恋心を抱いており、男の子との戯れに紛れてキスをするなどして、ルーカスも気づいて警戒はしていた。

ある日、クララはラブレターを書くが、ルーカスに他の男の子にあげなさいと拒否されたと認識すると、とたんに「私じゃない」と言い出す。
完全に失恋気分になり落ち込み、学園長に「ルーカスは嫌い。バカだし、ヘンな顔してるし、おちんちんがある」と言い出す。
最初は子供の言う事だし、男の子にはみんなあるのよ、と笑って返す学園長だったが、昼間にたまたま男兄弟に見せられたポルノの影響で「でもルーカスのはピンと立ってるの」と言ったのが聞き流せなくなる。
さらにルーカスがハート(のマスコット)をくれたけど、私は欲しくない、とねつ造した。


その頃、何も知らないルーカスは、息子と一緒に暮らせる事になった喜びを同僚のナディアに伝えていた。
ナディアとはいい感じになっていた。

閉鎖的な村だが、その分結束力の強い男友達に囲まれ、ナディアという恋人も出来、息子とも暮らせる。

ある意味、幸せの予感でいっぱいになったルーカス。
だが、ある朝突然すべて消えていってしまう。

学園長にクララの件で呼び出され、確認されたのだ。
クララとは言わないが、大人の関係になったという生徒がいる、と。
詳しく調べるから2日程休みを取れと言われる。

クララにオーレという医師のカウンセリングが始まる。
事の重大さのわからないクララには、ただ外で遊びたいという気持ちだけ。

だが、大人たちは「ウソをついている」等と簡単な方には思わず「これはやったな」と勝手に走り出す。
そして母親に告げられ、事件として警察に通報、公表される事に。


それをルーカスが知ったのは息子からの泣きながらの電話だった。
話すのも、当然一緒に暮らすのももうダメだと言われた、と。
隣にはまだ何も知らないナディアが寝ていた。

事態を知り、すぐに幼稚園に行って学園長を訪ねるが、ルーカスの顔を見て驚いて逃げて行く。
終いには、「汚らわしいことを! 人でなし!」と叫んだ。まだ警察が捜査したわけでもないのに。
「子供達に近寄らないで。変質者!」

興奮した学園長は思わず「クララは良い子」と言った事から、ルーカスはクララが絡んでいると分かる。

ルーカスはテオを訪ねるが、テオは「娘はウソをついたことはない」と誰と見比べても非力な自分の娘クララを庇い、友人の言葉を信じる事はなかった。
妻は、出て行けと大声を上げると騒ぎにクララが顔を出す。
そこでクララは両親のルーカスに対する怒りの態度を初めて知り、「なにもなかったの。私がわざといっただけ」と真相を明かした。
だが、母親は「かわいそうに」と娘が自己防衛で忘れようとしていると、これまた都合よく考えた。


この告白をしたことでチャラになったと思ったのか、クララは翌日、これまでと同じようにルーカスの家に遊びに行く。
ファニー(犬)と散歩したい、と。

迎えるルーカスは、断る事はしないがママがいいといったら来なさいと、冷静な態度だった。
だが、その光景を見ていたナディアは、それまでは否定していたのに「あの子に触ったの?」と逆に疑いを芽生えさせた。
クララが子供故、はっきり否定する事もないし、この騒ぎにおびえて涙を流したりしたからかもしれない。

すると、ルーカスは裏切られた気持ちになったのか、ナディアを乱暴に家から追い出した。
まるで、本当に犯人がばれるのを避けて突き放したようだった。


しばらくして、息子が母親に内緒で会いに来た。
息子だけが、父の冤罪を信じている。

そこへ、息子の名付け親でもある友人ブルーンも訪ねてきた。
彼もまたルーカスを信じているようだった。

警察は、ルーカスが他の子も触ったと言い出しているのに。

息子がスーパーへ行っても、君もルーカスも来ないでくれと言われ、いよいよ逮捕される。

息子は、クララに何故ウソをつくのかと聞きに行くが、子供であるクララはそう言われれば「ついていない」と言うしかなく、大人たちはまたクララを信じ息子を追い返す。

唯一味方でありそうなブルーンに助けを求めると、朗報を耳にする。

子供達が警察に話すのは決まって地下室があった、という話だが、ルーカスの家に地下室はないのだ。
存在しない物を子供達が詳しく話すのはよくある事だ。
たまたま耳にした、TVで見た、そんな事をさも自分が体験したように言ってしまう。

息子はブルーンの家で、父の若き頃の裸の写真等が飾られているのを見つける。

そして翌日、ルーカスは釈放された。
ブルーンの家で出迎え、抱き合う父と子を、家の窓から「抱き合ってるとまた捕まっちまうぞ」とからかう友人らがいた。

家に戻るが、ルーカスの顔は険しい。
何もなかった同じ日に戻れる事がないことをすでに察していたのか。


夜、息子と団らんをしていると窓からちょっとした岩が投げ込まれる。

やはり一度ついたイメージはすぐには消えないのだ。

外へ出ると家の前でファニーが殺されていた。

やりたい放題だ。

ルーカスは息子を母の元へ送り返し、声をかけるブルーンにもきつくあたった。

スーパーでは販売を拒否されるどころか、殴られる。

そんなルーカスを車からテオ家族が見かける。

何も考えずにクララが言う。
「ファニーはどこ?」


クリスマスになり、教会へ行くルーカス。
村中の人が集まっている。

子供達の聖歌隊の中には当然クララの姿も。

テオの視線に思わず立ち上がって詰め寄るルーカスをびっくりしてクララが見る。

僕の目を見ろ。
何が見える?
何もない。
もう僕を苦しめるな。

そういって連れ去られて行った。

夜、テオはルーカスに言われて考えていた。
クララのベッドに行くと、寝ぼけたクララは父をルーカスだと思って話始めた。
こんなことになるとは思わなかった。
私いけない事を言ったの。
ルーカスは何もしてない。

やっと娘がウソをついていたと把握したようだった。

そして妻に止められてもルーカスに食事を持っていき、ひとしきり一緒に居た。

そして月日が過ぎ。

ルーカスの疑いが晴れたのか、また仲間達と一緒に居た。
マルクスの大人になる儀式、鹿狩りデビューだった。

クララも。
細かいタイルの床に、線がいっぱいあって渡れないと線ハズシをして遊ぶクララを、ルーカスは抱き上げて移動させた。


だが、森に入ると誰かがルーカスを狙って銃を放つ。
その弾は外れて、人影は消えて行った。

おしまい


かんそう:


良くこれだけ嫌な話が考えられるもんだ、と思いました。
マッツ・ミケルセンじゃなければ、見たくない程でした。
というか見ていられなかったと思います。

どれだけ虐げられても、ボロボロになっても、絵になるマッツだから、最後までなんとか見る事ができました。

一言でいうと一度ついた悪いイメージは、たとえそれがウソだとしても100%無かった事にはならない、というお話でした。

まあ、とっても難しくはあるんですけどね。
何せ相手が子供ですから、自分で自分を100%守る事はできません。
だから大人たちが過剰になるのも、仕方ない部分もあります。
まして、それが自分の子供だったら、家族だったらと思えばテオ・ファミリーの反応は仕方ない。
そして、本当であるならば、住民の反応も私は仕方ないと思います。
非力な子供相手の暴力を許してはいけないと思うので。

ただ、今回は冤罪ですからね。

何より恐ろしいのは、クララでもありました。
女の子は何歳でも「オンナ」。
恋をしたら年齢も立場も関係ない。

ルーカスは、イケメン故の事故にあってしまったようなもの。
そういう意味でも、キャスティングには説得力があったんですね。

そういえば2回見て、やっぱりわからなかったのが、ブルーンの家の裸のルーカスの写真を見せるシーンです。
あれは意味があるのかないのか。

ファン・サービスなのか?


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