2016年6月16日木曜日

THE ICEMAN 氷の処刑人



アリエル・ブロメン THE ICEMAN 氷の処刑人 DVD

2012年作品

実話ベース

マイケル・シャノン、ウィノナ・ライダー、クリス・エヴァンス、レイ・リオッタ、ジェームズ・フランコ、デヴィッド・シュワイマー、スティーブン・ドーフ、

あらすじ:顔色1つ変えずに人を殺せる男。
そんな男にも家庭という存在ができ・・・。




いわゆるシリアルキラーとは、一線を画した殺人者に感じました。

まさに職業、殺し屋。

【おはなし】

主人公ククリンスキーは、職場が近い事からデボラと出会う。

ひょんな事からバーで出会った男に、婚前交渉をしないデボラ(ライダー)の事をばかにされたククリンスキ―はその時は相手にしない態度を見せたものの、後からその男が車に乗り込んだところを無表情のまま殺害するという、怒りの狂気を秘めていた。

だが、そんな自分とかけ離れた存在のデボラには恋をしていたようで、ポルノのダビング工場で働いている事も言わないまま、つきあうようになり、結婚にこぎつける。

ある時、ダビング工場を仕切るチンピラのリーダー、ロイ(リオッタ)と工場で会うと、度胸の良さを買われて、工場は閉鎖するが、下で働かないか、とスカウトされる。

そのテストは、目の前でたまたまいたホームレスを殺す事。

失業も困るが、だからといって普通の人には人殺しは出来ないが、ククリンスキーはロイが見込んだ通り、あっさりテストに合格する。

それから、他の誰の仕事もしない、という条件でロイ専属の殺し屋となる。

殺し屋としての才能は抜群で、おかげで収入も上がり、私生活は娘2人に恵まれ、美しい妻と裕福で殺人とはかけ離れた幸せな家庭になっていく。

妻には、為替ディーラーとウソをつき、仕立てのよいスーツを着て、身なりも住む家も豪華になっていく。

だが、ロイが弟分として可愛がっていた子分ジョシュが、あちこちでロイの面汚しをしている事から立場が危うくなる。
結果、ロイはしばらく大人しく身を潜めるといい、ククリンスキーにも失業を告げる。

もちろん、家族を養う為に困るのだが、ある殺しの現場で知り合ったフリーの殺し屋を想い出す。

ミスターフリージーと呼ばれるアイス屋の車に乗っている殺し屋、ロバート。

その現場には殺した後に、少女が隠れているのを見つけるが、ククリンスキーは女と子供は殺さない、というポリシーから生かして逃がしていた。
だが、何が弱みになるかわからないから、ロバートが始末していた。

そんなロバートを頼りに、ククリンスキーはペアになって殺し屋を再開する。

ロバートのスタイルは、死体を凍らせる事で、死後推定時間を曖昧にするというもので、それが後に「アイスマン」と呼ばれるようになった。

ちゃらいロバートと強面なククリンスキーは、タイプは正反対であったが、殺し屋という点ではなかなか共有者がいない孤独さを補う、まさに共犯者となった。

おかげで家族にもキレるようになっていたが、なんとか家庭の平穏を取り戻していた。

が、ある時、ロイを仕切るレオナルドが、ロイにしびれを切らし、ロイの子分殺しをククリンスキーらに依頼する。

まったく疑われる事なく始末できたらボーナスを出す、という高報酬に断る術はなく、病死に見せかけクラブで殺す計画をする。

ところが、そのクラブで旧友と再会してしまう。

しかも、ククリンスキーがロイの下で働いている事を知っていて、自分にもうまい話をよこせと言われてしまうのだった。

家族にもばれずにいた事が知られ初めている事で、当然友人も口封じの為に殺す。

だが、時すでに遅し、今度はそれを聞いていた別の友人がロイと直接会って、お前の事を言ったよ、と言うのだった。

そして、ロイは勝手な行いと、子分を殺した事からククリンスキーを追い詰める為、家族にまで手を出す。

だが、高額報酬があれば、高跳びできるとレオナルドと会うが、「ばればれだから失敗だ」と報酬がないものとされてしまう。
それに怒り、その場でレオナルドを殺す。

嫌な事は続くもので、娘の1人が轢き逃げされてしまう。
それはもちろんロイ達の仕業だった。

そして世間でもアイスマンの存在が公になり、犯人捜しが始まる。

そんな追い詰められた状況に、逃げるにしても家族が足でまといになるから、お互いの家族を殺しあわないかと提案をしてくるロバートをも、ククリンスキーは殺す。

殺しに使う薬剤を調達するのに、旧友に声をかけていたが、人を紹介できる、と病院で知らされる。

共通の友人をすでに殺している事から、バレる情報がないかと探るが、何も聞いていないという。

だが、おそらくすでにククリンスキーの仕業だと知っていたんだろう。

この友人の紹介こそが、仕込みで、ククリンスキーはあっさり警察に捕まってしまう。

妻を助手席に乗せたまま。

そしてククリンスキーは、涙を流し、感情を出す自分に困惑する。


テロップのみ

家族とは二度と合わず、獄中で死亡。
マフィアの証言を控えていたので、他殺の可能性があるという。


おしまい。


【かんそう】

幼児虐待の過去から、サイコパスのような無感情な殺人者になってしまったのですが、いわゆるシリアルキラーとは少し様子が違うんですね。

同じ虐待を受けていた弟は獄中でのちに再会するのですが、割と普通の? シリアルキラー的な犯罪者ぽかったです。

どこが違うのかというと、いわゆる快楽で人を殺す事が目的とは思えないのですが、でも殺し屋になっていなかったら殺していないのか、というとわかりませんよね。

ただ、作中では、意味のない殺しはしていませんでしたし、女子供は殺さないというポリシーは仕事であっても曲げないので、何かを考えてはいるようでした。

あくまでも殺しというのは彼にとって天職という感じで。

とはいえ、愛する家族にも思わずキレてしまうという、ギリギリな面はありましたので、そこはある意味人間らしい一面を見せていたようにも思えました。

普段、家族が彼をイラつかせる事はなかったんでしょうね。
もしくは、家族は愛のすべてだから、自分の余裕さえあれば、多少は広く受け止め包み込める。

だけど、余裕がなくなってしまうと、そんな家族に対しても我を忘れてしまう。

やっぱり怖いシーンではありますが、その瞬間、殺人マシーン、アイスマンではない彼の人間性が出ているとも言えて、本当に悲しい人だなーと思います。

まあ、悪い事は必ず罰せられるという世の定めで、彼は年貢の納め時を迎えますが、やっぱり何がショックって家族でしょうね。

最愛の頼れる父親が殺し屋だったとは。

娘の誕生日に、ちょっとしたポエム? を考え発表するシーンがあるのですが、彼がいかに普通の人間になろうとしていたかがわかるような気がしました。

早く人間になりたーい、じゃないですけど、自分の不完全さを家庭というパーツで補って完成させたかったんだと思います。

役者のはまり具合も手伝って、悪い事をしているのに、どこか否定しきれないククリンスキー。

正直、実話であることはさておき、「殺し屋」の話というのは、映画の中では別に珍しいものではないと思うのですが、何故この映画は少し異質に感じるんだろう、と考えました。

少し気づいたのは、彼が求める家族と彼の本質との距離が遠すぎたから、いわゆるありがちな殺し屋のお話しにはならなかったのかな、と。

彼が騙し続けていた事もありますが、捕まった後、一度も合っていないという事からその事がわかります。

そして、これが実話だからこその現実、なんですよね。

どこを切り取っても、幸せそうなシーンを見てもそれが偽りのものに見えてしまうので、寂しい映画でした。


お話しにも大満足ですが、役者勢も良かったです!

ウィノナは、綺麗に歳をとっているように感じました。
あの万引き事件さえなかったら、かなりいいポジションの女優になっていたのではないかと思うと、本当に残念です。

アイスマンが大事にする妻、というのがぴったりでした。

脇役もなかなか渋くて、フレンズで懐かしいロス役のデヴィッド・シュワイマーは、何をしててもロスっぽくてウケるw
そして何気に歳をとらないから、怖いです。

B級クライムの帝王、レイ・リオッタも出てきた時点で、安心感を覚えましたw
そしてそのおかげか、思ったほどB級でもなくって好印象に。

懐かしのスティーブン・ドーフは弟役で名前見るまでわかりませんでしたw

何せ殺し屋の話なので、好き嫌いはあるでしょうが、結構隠れた名作の域に入っているような気がしました。

実話という後押しもあると思いますが、少し変わったクライム・ドラマでした。

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