2016年8月23日火曜日

カンバセーション…盗聴…



1974年作品

監督 フランシス・フォード・コッポラ

ジーン・ハックマン、ジョン・カザール、アレン・ガーフィールド、フレデリック・フォレスト、シンディ・ウィリアムズ、ハリソン・フォード

あらすじ:盗聴を生業とするハリー。ある依頼の男女の会話内容が気になってしまい・・・。




70年代という古い作品ですが、それ故のシンプルさと格好良さがありました。

【おはなし】

ハリー(ハックマン)は腕利きの盗聴職人で、数々の仕事をこなしてきていた。

今回もある企業の依頼で男女の会話を盗聴する。
難しいシチュエイションだったが、チーム一丸となって依頼に応える事が出来た。

だが、単なる不倫かと思ったその内容には「(僕たちは)殺される」という危険なワードが。

さらにその結果を渡しに行くと、女は依頼主の妻で、男は従業員だとわかる。

やたらテープを受け取りたがる依頼主の部下(ハリソン・フォード)を敬遠して、その日は、依頼主に直接じゃないと渡さないとテープを持ち帰る。


実はハリーは過去に、自分が依頼された仕事の結果として、ターゲットが殺された経験があり、それを悔やんでいた。

だからといって転職するわけでもなく、第一線で盗聴を続けてはいるのだが。

その代償か、自分のプライベートに関してのガードが異常に高く、孤独ではあった。
そして、決してその孤独に満足している訳でもないようだった。


女性とのつきあいはもちろん、素性を何も明かさないハリーに満足する女性はいるはずもなく続かない。

職場でも、他愛もない世間話の会話に過敏になってしまい、声を荒げて従業員が辞めて行ってしまう。

そんな中、盗聴関連の見本市があり、仲間と集まる。

そこには、ハリーのライバルと言われる、同じく腕利きの盗聴職人もブースを出していた。
(ハリーに追い出された従業員はライバル会社に転職していた)

友人に紹介され、新作のプレゼンを見て、ノベルティのペンをもらう。

その後、ライバルを含む仲間達とハリーのオフィスで打ち上げをする。
元従業員にも謝り、戻ってくる事を約束させる。
数名の女性も連れて、そのうちの1人とハリーはいい感じになり、つかの間のパーティーを楽しむ。
ライバルに2人が組めばもっとデカい事が出来ると誘われるが、1人で出来るから、と断る。

女性と2人きりになると、そこでハリーは自分の抱える問題を吐露する。
「何も言わない男でもついてくる女はいるのか」と。

酔ってふざけた友人らに乱入され、皆の元に戻ると、ライバルがハリーと女性の会話テープを再生する。

実は、ハリーに渡したノベルティのペンは盗聴器だったのだ。

ちょっとしたイタズラと、俺すげーだろ、だから組もうぜ、のプレゼンでもあった。

ところがハリーはやられたーと笑うどころか、マジギレしてしまい、パーティーはお開きに。

おそらく、プライベートを人一倍隠しているハリーが、ペンを一切疑る事なくもらっていたうかつさに自己嫌悪になったのだろう。

友人らが帰る中、女性だけは居残る。

ハリーは、例の依頼のテープに憑りつかれ、再生し、この会話はおかしい、処分しなくては、とつぶやくが女性は気にせず、ハリーを誘惑する。

そして、朝、気が付くと隣に居たはずの女性の姿は消えていた。

ふとテープを見ると、無くなっていた。


そして、誰も知らない自宅の、誰にも教えていない固定電話に電話がかかってくる。
それは依頼主の部下からの電話で、「テープは処分される前に回収した。写真を持ってきてくれ」と呼び出される。

電話番号については、接触する人間の事は下調べするから、とあっさり言われてしまう。

ハリーが写真を持って行くと、すでに依頼主はテープを聞いていた。

思った通り、妻の不倫なのだが、深刻な雰囲気で、いかにも逆上して殺してしまいそうだった。

謝礼をもらい、仕事は終わったはずだが、気になったハリーは、その会話にあった
「逢引するホテルの部屋」の隣の部屋を借りてしまう。

そして、なんとか会話を聞こうとすると、言い争う声を聞いてしまう。

同時にハリーは、過去の出来事とシンクロするあまり、あの女性が殺されるかもしれない、という事と盗聴のしすぎに憑りつかれてしまい、錯乱してしまう。

気が付くと、隣の部屋はシーンとしており、ピッキングをして侵入する。

ハリーの頭の中では殺しが行われ、女性の死体があるはずだったが、整然としていた。

バスルームは、すでに清掃済みなのか、それとももともと使用していなかったのか、テープが巻かれていた。

殺人の痕跡を消したのだろうと、バスルームの排水口まで調べるが、そこには水滴しかつかなかった。

思い過ごしか、とふとテープが巻いてあるトイレの蓋を開ける。
もちろん、何もなくきれいな状態だが、水を流してみると、何かが詰まっているらしく、たちまち血痕が逆流してくるのだった。

そのまま、ハリーは依頼主の会社に向かう。

入口で引き留められ、仕方なく外に出ると、黒塗りの車に乗っているのは、死んだと思っていた依頼主の妻と、その相手の男だった。もちろん、依頼主の部下も揃っていた。

そして、レポーターが大勢集まってくる。

依頼主が事故で急死し、残された妻が大株主になったのだった。


ハリーは自宅で1人、サックスを吹いている。

そこに電話がかかってくる。

「これ以上踏み込むな。お前を盗聴しているからな」

と。

ハリーは、一流盗聴職人の名にかけて冷静に盗聴器を探し当てる・・・と思いきや、過剰に反応し気が付けば家のあちこちの壁、床をはがし、ボロボロにしていたのだった。

そして、その荒れた部屋の中で、1人サックスを吹く。

おしまい。

【かんそう】

若かりし頃のハリソン・フォードがちょい役(怪しい部下役)で出ていて驚きました。

いわゆる下積みってやつですよね。
こんな時代もあったとは。
でも、さすが良い作品に出ている? と思いましたw

つくづく70年代は大人の時代なのかな? と思えました。

大人の、男のドラマですね。

ジーン・ハックマンのハリーは若くてバリバリという感じではなく、ベテラン職人の域。
だからこそ、孤独が増すんですよね。

おそらくもうピークは迎えていて、この先はなだらかに落ちていくばかり。

だけど、職業柄のせいか、特殊な育ち(小さい頃病気でマヒした事があり長くは生きられないと言われていたらしい)のせいか、人生を誰かと共有するという選択も出来ずにいる。

とはいえ、孤独を愛している訳ではなく寂しいから、女性を求め、そして捨てられる事を怖がる。

仕事も1人ではなく、チームだから出来ているという事は理解しています。

そんな不完全なハリーですが、ある意味年齢的にも完成されているんですよね。

ハリーはこの映画そのもののようで、この映画も不完全なのに完成されている感じがしたんです。

まさに、アンビバレンツ。

映画としては、

例えば最初から依頼された2人の会話というのはちょっと不自然な感じがするんですよね。

まるで、盗聴されている事がわかっているかのような会話に感じました。

言い方を変えれば「盗聴されてるかも、と思うなら何故堂々と人前で会うのか。何故次の約束なんて会話で交わすのか」ってすぐ疑問に思いました。


とはいえ、ハリーは探偵ではなくあくまでも「盗聴」のプロ。

内容は関係ないんです。

古い映画だし、と見ている方も、油断というか、そんな気にすることではないかな、と思ってしまったのですが。

まあ、これが見え見えのそのまんまだった、という落ちなんですよね。

ハリーが会話から「この2人は殺される」助けなくちゃ! と思った2人が実は、最初から殺人を想定して、ハリーに盗聴させていた。

別にハリーを巻き込もうとしたのではなく、あくまでも依頼主に事実を伝え、殺意を覚えさせて、向こうから(逢引きホテルに)来るようにしかけた。

そこで、殺し、事故死に見せかけた。

なので、依頼主の部下を含めて3人が仕組んでいた、と思いました。

ただ、職人であるハリーが内容に囚われてしまった事は計算外だったんでしょうね。

もっとビジネスライクに進み、ハリーもお金をもらったらささっと消えるかと思っていた。

でも、ハリーは殺人を止めないとと思い、さらに事件の裏側に気づいている。

3人にとってはかなり邪魔ですが、3人も無駄な殺生までするつもりはないから、ハリーをちょっと脅しておこう、みたいな。

でも、ハリーにはその脅し(お前を盗聴してるぞ)のほうが、殺されるよりも恐ろしい事でしょうね。

最後、ボロボロにした部屋の中で1人サックスを吹く姿は、ハリーはもうこうやって生きていくんだろうな、と思えて悲しいと同時に清々しくもありました。

これは若い主人公には無理。

ハリーが盗聴の腕さながらに、自分のプライベートのガードもしているつもりが、
簡単に友人に盗聴され、女に騙されと、ボロボロなんですよね。

それもまた、物語としてどうなの?
普通もっと疑ったりしないかな、と

思ってしまいそうですが、むしろそこにリアリティを感じられるような雰囲気もありました。


依頼主の会社の70年代のリッチなインテリアも素敵でした。


地味ですが、渋い、大人の永遠の思春期物語って感じでした。




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