パンズ・ラビリンス [DVD][レンタル落ち]DVD38-06
2006年作品
監督ギレルモ・デル・トロ
イバナ・バケーロ、セルジ・ロペス、アリアドナ・ヒル、マリベル・ベルドゥ
あらすじ:母が再婚した事によって、居場所がなくなった主人公が、妖精と出会い・・・。
TVでやっていたので、見直しました。
【おはなし】
1944年スペイン。
「内戦終結後も、山では武装した人々が新たな独裁主義政権と戦い続けていた」
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1人の少女が鼻血を出して倒れている。
彼女はオフェリア。
母親が再婚をし、身重だが義父の住む場所に移動をしていた。
移動の途中、具合が悪くて母が車を止めた隙に、森で石を拾うと、それは何か石像が欠けたようだった。
すぐ近くに、石像を見つけ、欠けていたのは片目の部分だとわかり、はめ込むと、石像から1匹の奇妙な虫が出てくる。
だが、オフェリアはその虫を気持ち悪がるわけではなく、母親に「妖精がいた」と報告した。
オフェリアの新しい父親は権力を持つ大尉で、オフェリアはお嬢様になったと言えるのだが、実は大尉は、かなりひねくれており、後継ぎとなり得るお腹の中の子が一番で、オフェリアには冷たかったし、具合の悪い母にすら、いざとなれば子を生かせと言う程だった。
非情で残忍だが、決してバカではないようで、鋭く周囲の変化に気づき対応をしていく、やり手でもある。
母親は移動が祟ったのか、到着後常に具合が悪くほとんど寝たきりでオフェリアは引っ越し早々、孤独だった。
そんなオフェリアの心の支えは、大尉の女中頭的存在でもあるメルセデスという女性だった。
オフェリアに優しく、妖精の話をしてもバカにせず同じ目線で話してくれた。
そして、「迷宮には入るな」と注意をしてくれた。
母親には、「もうお姉さんになるんだからおとぎ話は卒業しなさい」と言われているのに。
ある夜、部下が森でウサギ狩りをしていたという親子にゲリラ疑惑をかけて連行してくる。
呼び出された大尉は、父を守ろうとする息子に何故か気に入らないのか、ろくに話を聞かずに、瓶で滅多打ちにして殺す。
そしてそれを悲しむ父親も銃殺する。
だが、2人のカバンの中からは確かにウサギが出てきて、罪のない親子をただ殺しただけ、という事がわかる。
が、顔色一つ変えずに、「今度から私を呼ぶ前にちゃんとカバンの中身を調べろ」と言うだけで、ウサギを持ち帰る。
これだけでわかるように、大尉は、拷問に慣れた残忍さがあり、独裁的だった。
その頃、オフェリアは母のベッドで寝ていたが、虫の気配で起きる。
独り言のように、虫に話しかけ、本の妖精を見せると、その虫は妖精の姿に変身する。
そして、オフェリアは自分が虫に誘導されていると思い、ついていくと、迷宮の奥へ向かう。
その地下には、羊のような角を持つ異形の者が居て、オフェリアの声に、「よくぞ戻られた」と言い出す。
オフェリアを地下の王国の王女だといい、自分は守護神のパンだと言う。
それは、オフェリアが移動中の車の中で読んでいたおとぎ話と同じだった。
地下の国から抜け出したせいで、地上の光を受け魂になってしまった姫がいつか人間の肉体で蘇るのを王様が待っている、と。
だが、今ではその入り口はこの迷宮にある1つだけになってしまっている。
王女の証は左の肩にもあるが、人間になりきってはいないか、3つの試練を受けて欲しいと。
その為の手引きの本を渡されるが、本は白紙だった。
家に戻り、母親にもらったドレスに着替える為に風呂に入った隙に、本を開くと文字が浮かんできた。
そして、肩には確かに月の形のシミがあった。
メルセデスはいつもお腹にナイフを隠している。
実は、ゲリラに弟が参加しており、そのスパイのような事をしていた。
母親を看る医師もまた、メルセデスに頼まれ、こっそりゲリラの治療をしていた。
本を頼りに、オフェリアは森に行く。
新しい靴は泥まみれになってしまったので、ドレスを汚さないように脱いで木にかけておいた。
そして、本のままに、大きな木の中に入って行き、大きなカエルと出会う。
どうやら、木はカエルが虫ばかり食べて居座っているせいで、枯れてきているらしい。
そのカエルに立ち向かうオフェリア。
虫と思わせて、違うものを食べさせ、ゲロを吐かせると、カエルは倒れ、中から鍵が出てくる。
外に出ると、風で飛ばされ、ドレスは結局泥まみれになっており、また雷と共に雨も降ってきた。
オフェリアが戻らぬまま、食事会が始まる。
関係者が集う中、大尉の妻でありながらも、何処か居心地の悪そうな母親。
なれそめを聞かれ、普通に話していても大尉に、「場馴れしていないから」と制されてしまう。
食事の席で、大尉の父親の話が出る。
立派な軍人で、死ぬ瞬間に時計を壊して、息子に死んだ時間を伝えてくれと言ったという話をするが、大尉は、そんな時計はない、とウソをつく。
その時計を修理して、今でも使っているというのに。
雨の中外に出たメルセデスは、森から戻るオフェリアを見つける。
そして、オフェリアは妖精に鍵を取ったから迷宮に連れて行って、とせがむ。
次の日、また浴室で本を開くと浮かび上がってくるが、それは赤い血のような染みだった。
隣の部屋では母親が苦しんでいた。
気になって見に行くと、大量に出血して助けを呼んでいた。
結局、その夜からオフェリアは母親と共に寝る事も出来なくなり、1人部屋を与えられる。
オフェリアは、メルセデスがゲリラを助けている事を知っていると、メルセデスに告げ、2人には信頼が生まれているとわかる。
夜、メルセデスは医師を連れてゲリラの病人を看てもらう。
オフェリアの部屋には、パンが来る。
試練が進行していなく、約束を果たしていない事を責められる。
母親の病気など言い訳にならない、とも。
母の病気はマンドラゴラで治せと、渡される。
その代り、満月までに急いで試練を果たすよう念押しされ、道案内として妖精も渡される。
本に試練が浮かぶ。
今度は、チョークで扉を描き、砂時計が落ち切るまでに戻ってくる事。
中では、食べ物、飲み物は決してとってはいけない。
確かに入ると、そこは晩餐のテーブルのようで食べ物が沢山並んでいた。
だが、座るのは、目がなく毛もない白い肌の異形の人間のようで、目の前の皿には目玉が2つだけ乗せられており、微動だにしていなかった。
周囲には、この異形が子供を食べる絵が飾られており、人食いだとわかる。
放した妖精の導きで、鍵を開けて、1本のナイフを入手する。
その間も、動かない異形。
少し気が緩んだのか、オフェリアはテーブルの食べ物に気を取られてしまう。
妖精に止められるのもきかず、ブトウを一粒食べてしまう。
すると、異形が手の平に目をはめ込んで、動き出す。
気付かないで食べ続けるオフェリアに近づく異形。
気付いた時には妖精が捕まり、食べられてしまうのだった。
慌てて、逃げるが、同時に砂時計も落ちて行き、手前でドアが塞がれてしまった。
異形は、目の位置に手の平を合わせ、オフェリアを追って来る。
チョークで再び、扉を描こうとするが慌てるあまり、折ってしまう。
追い詰められるが、天井に描いてギリギリセーフで逃げ出す。
その頃、メルセデスは保管庫の合鍵をこっそり弟に渡していた。
翌日、オフェリアはパンに言われた通りに、マンドラゴラを母親のベッドの下に置く。
すると、みるみる母の様態が良くなっていった。
だが、ベッドの下で偶然大尉が「もしもの時は息子を救え」と医者に指示するのを聞いてしまう。
その時、外で爆音がする。
ゲリラが襲撃を始めたのだった。
最初は列車だったが、次は砦で、保管庫を見に行くと鍵が開いている事に気づき、怪しむ。
1人、生き残った男を拉致し、拷問にかける。
オフェリアは、パンに妖精が死んでしまった事を告げる。
すると、パンは言う事をきかなかった事を怒り、試練は失敗で、王国には戻れない、人間のままだ、と言う。
すっかり、落胆するオフェリア。
翌朝、拷問の男を治療する為に、医者が呼ばれるが、そのバッグの中に、ゲリラの野営後で見つけたのと同じアンプルを見つけ、医師が裏切っている事を悟る。
医師は、拉致された男に殺してくれと頼まれ、安楽死? させる。
オフェリアは、マンドラゴラの面倒をみに行くが、大尉に見つかってしまう。
母も騒ぎに巻き込まれ、おとぎ話なんてない、とマンドラゴラを暖炉に投げ入れ燃やしてしまう。
が、その瞬間倒れてしまう。
部屋を出た後、大尉は裏切り者の医師を殺し、母の為には軍医を呼ぶが、母親は息子を産んで死ぬ。
オフェリアは、母の部屋から残していた薬を持ち出す。
メルセデスもまた、するどい大尉にスパイではないかと注意される。
その夜、屋敷を出る決心をしたメルセデスは、オフェリアに挨拶すると、オフェリアも一緒に行きたいといい、2人で屋敷を出る。
が、すぐに大尉達に見つかってしまう。
2人揃っていた事から、オフェリアがメルセデスがスパイである事を知ってて黙っていた事を責められ、子供相手に殺すと脅す。
メルセデスは拷問させそうになるが、隠し持っていたナイフで後ろから大尉を切りつけ、胸を刺し、そして、口からナイフを入れて顔を切り、逃げる。
だが、死んではいなかったようで、追いかけられ、森で囲まれてしまう。
いよいよ、覚悟を決める時か、と首にナイフをつきつけると、弟達に助けられる。
オフェリアの元には妖精とパンが現れ、思わずパンに抱き着く。
「弟を連れて迷宮に向うのだ」
これが、最後のチャンスだというパンに、オフェリアは従う。
チョークで扉を描き、大尉の部屋に忍び込み、隙を見て飲み物に、母親の薬を入れる。
そして弟を盗むが、出ようとした時に大尉に見つかり、迷宮まで追われる。
迷宮の奥で、パンに最後の試練で、血を与えよと言われ、直前でオフェリアは弟を渡す事を拒む。
パンと会話するオフェリアは、薬でふらふらになりながら追いついた大尉には、誰もいないのにしゃべっているようにしか見えない。
大人しく大尉に弟を返すが、オフェリアは何の躊躇もなく銃で撃たれる。
それは、冒頭のシーンだった。
大尉が迷宮を出ると、そこにはメルセデスを含め、ゲリラ達が待ち構えていた。
さすがに、諦めた大尉は、時計を壊し「息子にこれが父の死んだ時間だと告げてくれ」と頼むが、
「名前すら明かさない」と拒まれ、そして撃たれて死ぬ。
メルセデス達が迷宮の奥へ行くと、倒れているオフェリアを発見すし、涙する。
オフェリアから流れた血は、偶然月を反射した迷宮の入り口の水たまりに落ちていった。
そして、無垢なるものの為の血、という最後の試練を、自分が死んだ事で叶えていたオフェリア。
地下の王国で、王様と王女様に迎えられ、そして冷たくされていたパンですら、暖かく迎える。
やっと自分の家に戻れたのかもしれない。
だが、メルセデスの前にはオフェリアの死体が横たわっていた。
おしまい。
【かんそう】
以前にも見ていましたが、あんまり記憶になかったのと、
過去記事)
が、結構良かったので。
結論からざっくり言うと、やっぱり本作は暗すぎて、私にはいまいちでした。
ダーク・ファンタジー的なパートと、それと対極にあるような現実の、大きな2本柱になっていると思うんですが、現実がつらすぎて、きついんですね。
ダーク・ファンタジーパートの素晴らしさを、純粋に楽しむ事が出来ない程、というか、それを産むのもまた、現実が厳しい故みたいな、ジレンマもあったりして。
いろんな解釈があると思いますが、
オフェリアの見るファンタジーは、厳しい現実からの逃避の空想とも思えるし、大人には見えない、子供だから見える現実だとも。
すべてを空想と片づける事もできなくはなさそうですが、そうすると結構オフェリアの手が込んでいるんですよね。
本やチョーク、マンドラゴラっぽい根っこ? など、特にチョークやマンドラゴラはオフェリアだけが認識するのではなく、大尉や母親も存在を見ていますから。
また、偶然かもしれませんが、マンドラゴラと母親の様態がリンクしていたり、本に血が浮かび上がると母親が出血していたり、とただの空想とは思えない事も。
木の中に入って泥だらけになったりするのは、空想しながら遊んだとも言えますけどね。
オフェリアが空想に逃げたくなるのは、母の再婚で生活が変わり、そこに自分の居場所がない事や、弟の存在が母親を独り占めしているようで、嫉妬していたり、とか、そこはわかりやすいと思いました。
何度も、帰りたいと言ったり、なんで再婚したの? と言ったり、妊娠で具合が悪くなるなら自分は妊娠しない、と言ったり主張しています。
が、その都度、母親には「現実をみろ」「大人になればわかる」と言われてしまいます。
オフェリアにとっては、大人になる事に拒否感を抱いていたでしょうね。
おとぎ話もなくなり、生活の為に好きでもない人と結婚をし、そして妊娠すれば具合の悪い毎日だなんて。
最後にオフェリアが死んだ事で、王国に戻れていますが、それはこの時代のこの場所では、オフェリアを救うには「死」しかなかった・・・と言っているようにも思えたんです。
だから、救いがなくって、暗い話だなー、と。
とはいえ、物語にはいろんな視点がありますから、唯一メルセデスの視点で見れば、少し明るさもあるんですけどね。
でも、途中で医師が言っているんです。
大尉を殺した所で、また次の奴が出てくるだけで、終わりはない、と。
無駄な戦いを繰り返しているだけ、だ、と。
その言葉で、どうなってもハッピーエンドがあるのかわからないんです。
改めて見て、再確認したのは、これは確かに記憶に残っていないはずだわ、と。
こんなに暗いんですもの。
どの視点にも救いがない。
そういう時代があった、という事でもありますしね。
ダークファンタジーの部分に大分、誤魔化されそうになりますが、むしろ時代の残酷さを語っているんですよね。
オフェリアちゃんが可愛かっただけに・・・。
とはいえ、オフェリアちゃんの求めるものが、ここから逃げ出す事、だとしたら、実は死でそれが叶えられているので、肯定したくはないですけど、これもまた1つのハッピーエンドなのかもしませんが、やっぱり「死」は決してハッピーエンドとは思いたくないのでした。
どんなにその死に顔が微笑んでいたとしても。
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