2016年10月24日月曜日
ブルージャスミン
映画 (Movie) / ブルージャスミン 〔DVD〕
2013年作品
監督ウディ・アレン
ケイト・ブランシェット、アレック・ボールドウィン、ボビー・カナヴェイル、ルイ・C・K、アンドリュー・ダイス・クレイ、サリー・ホーキンス、ピーター・サースガード、マイケル・スタールバーグ
あらすじ:セレブな暮らしから一転、家族や財産を失ってしまい・・・。
Wikiにはコメディとありますが、全然笑えませんでした。
でも、ウディ・アレンっぽいドラマでした。
【おはなし】
自称ジャスミン(本名ジャネット)は、夫が投資詐欺で金を稼いでいた事から、セレブな生活から一転、ある日一文無しになってしまった。
父を尊敬していた息子も家を飛び出し、そんな父ハル(ボールドウィン)は獄中で自殺していた。
NYでなんとか暮らそうとしたものの、学生時代にハルに見初められ、中退して結婚していた事から、ろくに働いた事もなく、プライドも邪魔して何事も続かないようだった。
また、ストレスから独り言を言うなど、精神を病んでもいた。
そして今、サンフランシスコに住む異母姉妹ジンジャーの家に居候する事になり、移動するのにリッチなファーストクラスを選んでしまうのだった。
ほぼ文無しだというのに、スーツケースはヴィトン、ジャケットはシャネル。
取り上げられずに済んだブランド品だけがジャスミンのすべてだった。
ジンジャーは、2人の騒がしい男の子のシングルマザーをしていたが、その離婚の原因はハルにあった。
ジンジャー達もハルの投資詐欺にあっていたのだった。
今はチリという、新たな恋人が出来、本当なら同棲を始めるつもりが、ジャスミンの為に延期していた。
一時でも成金生活の味を覚えたジャスミンは、元から上昇志向が強いのか、すべてを失ってもまだ這い上がろうという気持ちを持っていた。
だからこそ、1枚のシャネル・ジャケットやエルメスのバーキンが手放せずにいたのかもしれない。
そんなジャスミンにしてみると、妹ジンジャーの彼氏や生活は、「なぜこんなので満足なの?」と思えるものだった。
それを口に出して言う事もあったが、ジンジャーはジャスミンを半分病人だと思って聞き流していた。
確かにジャスミンは、美人で決して若くはないが、その気になれば恋人を作る事は難しくはなさそうだった。
だが、ジャスミンのお眼鏡にかなうかどうか、が重要だった。
誰でも良くはないのだ。
そんなある日、ジャスミンがやる気を出してパーティーで出会いを求める事に。
ジンジャーも付き添うが、2人にそれぞれ出会いが起きる。
ジンジャーは、それまでつきあっていた元夫やチリとは違う、優しい大人な対応に、「これがジャスミンの言う幸せなのか」と感化されていく。(だが実は相手にとっては不倫だった)
ジャスミンは、この町の一等地に家を建て、2年ほどスペインへ行き、戻ってきたら政治家になる、とまさにジャスミンの望むセレブな生活を提供してくれそうな男、ドワインと知り合う。
そこで、まるで用意していたかのように、自分はインテリア・デザイナーで夫は病死で子供はいない、とウソを並べてしまう。
疑う必要のないドワインは、ジャスミンを自分の生活水準と釣り合う女性だと気に入り、婚約を申し込む。
だが、指輪を買おうと出かけた先で、ジンジャーの元夫にバッタリ会い、ドワインの知らない過去の話を暴露されてしまう。
そしてその場で破断。
逆切れしたジャスミンは、バーキンと一緒に車から転がり降りる。
だが、1つだけ収穫もあって、元夫から事件後行方がわからなくなっていた息子の仕事先を知る。
彷徨いながら店をつきとめ尋ねると、息子は強い拒絶を見せる。
そして、その理由は、「父のしたこともショックだったが、それが母の通報だったという事も許せなかった」と初めてジャスミンに全てを知っていた事を告げる。
ジャスミンは、当時ハルに離婚をつきつけられて、それを阻止する為に衝動的に通報してしまったのだった。
もともと、美貌だけが財産とも言えるジャネット(ジャスミン)。
だまって離婚を受け入れていれば慰謝料などで今のようなどん底にまではなっていなかったかもしれない。少なくとも、息子を失う事はなかったはず。
だが、プライドの方がそれでは納得できなかったのか、それともすでに病んでいたのか。
やっと元の生活に戻れるはずだった婚約者も失い、何処かで自分が原因だとは思っていなかった息子は、永遠に失い、ボロボロになってジンジャーの家に戻る。
だが、「婚約するからこの家を出る」と言ってしまっているのだった。
そのつもりで、ジンジャーは浮気を反省し、その経験によって身の丈を知り、チリと仲直りして、同棲を始めるつもりになっている。
もちろん、ジャスミンは本当の事を言えない。
シャワーを浴びて、一張羅のシャネル・ジャケットに着替えて、家を出る。
行く先はどこにもないのに。
おしまい。
【かんそう】
ウディ・アレン作品が好きな理由は、もちろんニューヨークとそしてブランドがアイコンとして良く登場する所。
素敵な物は見ているだけでもテンション上がりますから。
だから、本作も予告などでエルメス、シャネルとかなり意味を持っているように使われているのが、気になっていました。
ところが、なるほどこういう使い方だったのかー、と見るとネガティブになってしまいますね。
でも、チョイスはさすが、ファッション・アイコンそのものなので、とてもわかりやすいです。
庶民、いえ庶民以下の私は、一張羅の〇〇、というかそれしかないので、むしろそれが日常ですから、別にそれをなんとも思う事はないのですけど、最初から開き直っているというか。
本当に、ハイソな世界を味わった人間が、そこから落ちてしまったら・・・と考えると、特に同じ女性としてゾっとしますね。
「独身の頃はブランド物買ってたけど、今はユニクロです」っていうレベルとは、まったく違う感じ。
ハイソな奥様が、突然財産を取られ、働かざるを得なくなりマンハッタンで靴を売ると、マダム友達が買い物に来て、相手が気を使って気が付かないふりをしていく、というような事を作中で言っているのですが、これ想像するだけでも、なかなかの苦行でしょうね。
もしも、自分の身に置き換えたら・・・。
ま、まずハイソな生活が想像出来なくもありますがw
そして、そんなジャスミンが生まれながらのお嬢様ではない、という所もまたリアルな感じ?
だから取りつく島もなく、文無しになってしまったのかもしれませんね。
そんな、華やかな過去と落ちぶれた現在がシームレスに混ざり合って、ストーリーが進む感じは、ウディ・アレンぽいなー、と思いました。
ただ、頻繁なので場合によってはちょっとバタバタして落ち着かないかもしれません。
ちょっと趣は違いますが、
過去記事:
を想い出しました。
どちらも、美しさで成り上がって一生懸命ハイソな世界に馴染もうとするけど、何処かで異分子である事が消えない・・・という女性。だからこそ執着するのかもしれませんね。
母親でありながら、自分の事しか考えられない、というのも同じですね。
息子との距離はそれぞれですが、ある意味どちらも、関係は最悪、という。
リアルに考えると、妹のジンジャーの方が幸せ度が高いと思います。
お金ではなくて、愛する家族と一緒の平凡な暮らしがあればいい。
というか、作中では豪邸から妹のアパートに移った時にこんな狭い所、ってノリになっていましたが、それが私の感覚では全然狭くないというw
日本は本当に狭いんだなーと思わされますね。
ともかく、良し悪しではなくてそれでは満足できないのがジャスミンで、その生き方はある意味耽美だなぁ、と思いました。
ハルとの生活、息子がいても、実はジャスミンにとってはそれさえも、自分を飾るパーツの1つなだけで、取り換えが効くものに見えました。
自分が調子の良い時は異母姉妹を遠ざけていたのも、ジャスミンの気に入るパーツではなかったから、でしょうね。
同じ女性としては、いろいろ考えさせられるお話しでした。
1つしかないバーキンとシャネル・ジャケットを身に着けているのを見ると、時には潔くてむしろカッコ良く見えたり、でもやっぱりアンバランスだよな~と悲しくなったり、感情が定まらず複雑な気分になりました。
でも、本作を見たからといって急にストイック? になる訳ではなく、私は一張羅を自己満足で、この先も大事に使って行きますけどw
最初から失うものなどないという事はなんて身軽なんだろうって、ある意味ホっとしたりして。
大好きなアレック・ボールドウィンは、胡散臭い浮気者の詐欺師役というこれまた、はまり役で何の文句もありませんでしたが、完全に過去の脇役状態なので、ファンとしてはちょっと残念でした。
あと全然関係ないのですが、シンプソンズのエピソード「シンプソン家の優雅な生活」でもシャネル・ジャケットが使われた回がありました。
マージがたまたまディスカウントでシャネル・ジャケットを手に入れ、着ていたらハイソな同級生に会い、シャネルを見て仲間だと思われ、クラブ・ハウスに出入りするようになる。
だけど、マージにはその1着しかないから「また同じ?」と言われないように、リメイクしてまでその世界にしがみつき出し、やがて家庭が崩壊する・・・という。
シャネル・ジャケットというアイテムだけで、何の説明もなく物語の一部になるのですから、本当凄いですよね。
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