2016年5月26日木曜日
フォーリング・ダウン
映画 (Movie) / フォーリング・ダウン 〔DVD〕
1993年作品
マイケル・ダグラス、ロバート・デュヴァル
あらすじ:白いシャツにネクタイをした白人が、ストレスを募らせ、ある日暴走を始める・・・。
劇場で見ていた作品。
その時から面白いと思いましたが、今見ても面白かった!
【あらすじ】
失業、経済的な破たん、そして離婚で家族も失い、もう失うものは何もない主人公ウィリアム。
ある日の移動中、ロスのハイウェイは大渋滞で、1時間は動かないと言われる。
あまりの暑さと、車の中のハエ、目に入るナンバープレートのメッセージなど、何もかもがイラつかせる。
結果、ぷっつんときて、車を置いて「俺は家に帰る」と歩きだしてしまった。
それをたまたま見ていたのが、刑事プレンダガスト。
退職が決まっており、最終日だった彼は、強盗担当だった。
ウィリアムが置いて行った車の処置を手伝うが、その際に、なんとなくナンバープレートを見ていた。
ウィリアムは、電話を掛けようと、アジア人が営む小さなコンビニに入り、両替を求めるが、厳しい態度をされて、またキレる。
最初こそ、店主もバッドを持ち出して応じようとしたが、一見何もしなさそうなサラリーマンに見えるウィリアムが、バッドを奪い取り、店の中で容赦なく暴れるので、ビビッて金は持って行け、という。
だが、ウィリアムは強盗ではなく、ただ家に帰りたいだけの男なので、金を払いジュースを買って小銭を作って出る。
その後、穴の開いた靴に新聞紙を詰めてメンテナンスしていると、不法侵入だと、チンピラに脅される。
だが、これもまたウィリアムにとっては飛んで火に入る、のようなもので、怖くも何もなく、むしろ怒りのエネルギーを発散させるのに、大歓迎の相手だった。
最初こそ、穏やかに会話をしているが、バッドを持ち出して返り討ちにする。
家に帰るのを邪魔する奴には容赦ないのだ。
そこで、チンピラが落としていったナイフを手に入れる。
一方、コンビニの店員は、警察に駆け込むと、強盗という事なので、ブレンダガスト刑事が話を聞く事に。
だが、よくよく話を聞いていると、「店はめちゃくちゃにされたが、何も盗まれてはいない」とわかり、「担当が違う」と回される。
この時、「バッドを取られた」という事も聞く。
チンピラ達は、仲間を増やしてウィリアムに復讐する為、探し出す。
ウィリアムは、離婚した妻にやっと電話する事ができたが、もう電話しないで、と言われる。
だが、娘の誕生日なんだからそっちに行く、と言い張り、妻は警戒して警察に通報する。
こうして、娘のいる家に行く道中、ウィリアムは次々に偶然手に入れる武器を使い、障害となるものは、容赦なく、殺していく。
家との距離が縮まると同時に、ウィリアムの狂気が増すとも言えた。
ブレンダガストはあちこちで同日に発生する、「白人に襲われた事件」が、1人の男が犯人である事に気づく。
ブレンダガストは、署内では「妻の言うなりでデスクワークしかしない」事で、少しチキン扱いをされていた。
最終日も、大人しく定時に帰ればいいのに、と思われていたが、最後の最後に、小うるさく管理してくる妻にも逆らい、ウィリアムを追う事になる。
そして、事件の起きた地点をさらいながら、ある看板で気が付く。
ウィリアムが車を置いて行ったハイウェイ。
ブレンダガスト自身も渋滞にあっていた、止まっている車の中から見ていた看板だった。
そして、車を押した際に見たナンバープレートを想い出す。
ウィリアムは、あちこちで不法侵入やバイオレンスを起こしながら、別れた妻と娘の元にたどり着く。
だが、その手には銃が握られていた。
戸惑う元妻に、ウィリアム1人が、まだ離婚していないかのように振る舞う。
もはや、完全に正気ではない。
そして、その側には、ブレンダガストも間に合っていた。
なんとか最悪の事態を止めようと、話に割って入る。
だが、家族の時間を邪魔される事を歓迎しないウィリアムと、対峙する事に。
銃を向けられたと思い、発砲すると、ウィリアムが取り出したのは、水鉄砲だった。
ブレンダガストは、ウィリアムを仕留めていた。
そのまま海に落下するウィリアム。
事件は解決した。
手のひらを返し、手柄をドヤ顔で記者に話す、上司に、ブレンダガストはくそったれと言って去っていく。
おしまい。
【かんそう】
サラリーマン風情の男が、ただ家に帰るだけのお話し、というシンプルさが、好きですね。
だけど、内容は、バイオレンスで、それがまたサラリーマン風情である事のギャップで、通常のバイオレンス・アクションとは一味違う味わいがあります。
この作品を、単なるバイオレンス映画にしていないのは、もう1人のサブ主人公、ブレンダガスト刑事の物語のおかげ、です。
彼もまた、ウィリアムと同じく家族を愛しています。
だけど、子供を亡くしてしまった事から、たった1人の家族となった妻に逆らう事が出来ない。
妻は、病的にブレンダガストを管理し、警察という危険な仕事を良く思ってはいません。
だから、男社会な職場に馴染めず、嫌味を言われていた。
それでも甘んじて聞き流しているのは、家族(妻)への愛ゆえでしょうね。
それが、やっと退職する事で妻も喜んでいる。
だけど、最終日、何故か事件に巻き込まれ、それを拒否する事もできたのに、(誰も相手にしていなかった)、自分から率先して解決に絡んでいく。
妻が「早く帰ってこい」という、いつもなら聞いていた言う事に、反抗してまで。
これは、本当はデスクワークがしたかったわけではなく、本当に妻の事を想い、心配させないようにしていた、という愛の証明なんですよね。
正直、恋愛という、1人では出来ない事に対して、1人にかかる負担が多すぎないか? と疑問に感じますが、まあ、それも2人にしかわからない世界がある、という事なんですよね。
人の恋愛に口出しは出来ませんね。
ともあれ、このブレンダガストさんの存在のおかげで、単なるバイオレンス作品にちょっと厚味を持たせていると思います。
ウィリアムはマイケル・ダグラスが演じていますが、メガネをかけて、パっ見、バイオレンスとは遠く感じるキャラクターです。
それが面白味でもあるのですが、決して好き好んで暴れているのではなく、あくまで怒りの衝動なので、なんか凄味があるんですよね。
だから、なめてかかるチンピラもちょっと引き気味になってしまう。
そんな風貌だから、最初はなめられやすくもあって、割と皆強めに出る。
だけど、そのやりとりへの回答は、拾った銃を取り出して発砲する、というワイルドなものなので、ギャップで恐ろしさが増す。
淡々と、銃を撃ち、でも無差別というか、意味のない殺しはしていなくて、あくまでも自分の帰路を邪魔するもの、食べたいモーニングが食べられない時、など、彼なりの怒りの理由はある。
なんだか、筋が通っていそうでもあるのですが、でも結局の所、ぷっつんとキレちゃって、壊れてしまっているんですよね。
だから、暴れながらも、どこかもの悲しさも感じるんです。
もう失うものはない、というある意味、物事を分かって、捨て身になって暴れているのなら、まだ助けようがあったんでしょうけど、暴れれば暴れる程、怒りを解放すればしていくほど、彼は正気ではなくなっていっているようでした。
最後、ブレンダガストは、妻と娘と無理心中をするつもりだ、と思っていたようですが、行き着くところはそれしかないだろうな、と思えました。
この渋滞が娘の誕生日じゃなかったら。
ここまで、ぷっつんキレる事はなかったのかもしれません。
だけど、時間の問題だったとも言えますね。
失業、破産、離婚。
先は険しいです。
何故そうなってしまったのか、という経緯までは詳しくわかりませんが、確実に幸せな時はあった。
それは、ホームビデオに残っていて、彼自身も繰り返し見ていました。
それを失うだけの何か、意地悪く言えば素質があったんでしょうね。
だから、奥さんはただ失業したから離婚した、というよりは、電話を受けて怯えていました。
元から、DVしていたのかもしれませんし、過去にもおかしな行動があったのかもしれません。
でも、この日程暴れた日はないでしょうね。
最初で最後。
まさに、アメリカならではの作品だと思いますが、怒りと共に、「物価が高い」「ランチとかモーニングとか区切らずに食べたいもの食べさせろ」「ゴルフ場なんて作らずに子供の為の公園にしろ」とか、世直し的な? 発言もあって、どこか憎めないキャラクターなのでした。
もちろん、現実には暴力反対ですが、映画というファンタジーの中の存在としては、なかなか面白いな、と思います。
セットに凝ったり、ストーリーに凝ったり、という方向性ではなく、面白いと思える珍しい作品のようにも思いました。
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