2017年2月21日火曜日

マップ・トゥ・ザ・スターズ



デヴィッド・クローネンバーグ マップ・トゥ・ザ・スターズ DVD

2014年作品
デヴィッド・クローネンバーグ監督作品




【おはなし】
アメリカ、ハリウッド。
カルト女優だった母親の呪縛から逃れられない年増の女優。
ドラック中毒の人気子役を子に持つ、有名セラピストの父親。
ハリウッドならではの、悩めるセレブ達。
だが、本当の悩みはある罪から始まっていた・・・。

【かんそう】

これはクローネンバーグらしいドラマでした。

見応えある作品を見たなーって感じでした。

私はクローネンバーグの初期作品はあまり見ていません。

多分、とっかかりになったのはフライ、裸のランチのような少し変わった映像からだったと思いますが、一番好きなのは「クラッシュ」だったりします。

凝った映像に興味を持った時代も、もちろんあったのですが、やっぱり普遍的なお話しという、ドラマ部分が最後に残るんですね。(決して話の内容が普遍的、というわけではないです><)

クローネンバーグのドラマにある、闇は、誰もが持つ闇。。。とまとめることは出来ない、
やっぱりある一線を隔てたところにある闇なんだと思います。

だからこそ、鬼才と言われてしまう隔離感が生まれるのではないかな、と。

なので、凡人にはシゲキが強いわけですが、意外とわかりやすく「伝えよう」という優しさも同時に感じていますw

なんだろう、「答えなんて簡単に教えない」という投げっぱなしのアート作品でもなく、
ちゃんとドラマしてるところも、私が好きな理由なのかな、と本作を見て改めて思いました。

特に、本作は題材が「ハリウッド・セレブ」ですから、誰にとっても最近ではある意味身近、
なんじゃないでしょうか?

朝のワイドショーでも「セレブ・ゴシップ」は取り上げてられますからね。


ここに登場する人達はある意味、ドラマのレギュラー的な、特別ではない存在です。


・売れなくなってきた女優
・ドラッグ中毒の元人気子役
・有名なセラピスト
・ハリウッドで夢見て運転手をする青年

こういった登場人物は、この映画だけではなくハリウッドを舞台にするならばあちこちで見かける存在ではないでしょうか?

ただ、ここにクローネンバーグならではの登場人物や設定が入ることで、
よくあるドラマが特別なものになってるんですよね。

それが、

「全身やけどを負ったちょっと危ない少女」

「近親相姦」
という存在。


ハリウッドという町を、広そうで狭いという見せ方をしているのですが、(登場人物はなんらかの関係でつながっている)
それら全員を結ぶ中心にもなっているのが、この女の子なんです。

女優の元へは、「火事で死んだカルト女優の母親とやけどをおっている少女の存在は何か意味があるのではないだろうか」というまじめなのか、ふざけてるのかわからない理由から、アシスタントとして紹介されてきます。

イケメン運転手は、偶然ハリウッドツアーの申し込みで、その車に乗り込んだことがきかっけで、ちょっとつきまとわれます。

セラピストと子役は、父親と息子という、セレブ一家なのですが、実はこのおかしな女の子は、隔離していた娘、子役の姉なのでした。

女優は彼女の存在を、「何かいいことがあるかも」と受け入れます。
実際、彼女のおかげではないのですが、カルトムービーのリメイク、死んだ母親の役に選ばれていた女優の息子が急死したことで、一度は落ちたその役が回ってきます。
(急死の直前、偶然ロデオドライブでその子供にあっていた。初対面。死んだ事から役が来るかも、とマネージャーから聞いた時には女の子の手をとって、喜びのダンスをした)

イケメン運転手は、ある意味影が薄いのですが、いわゆる観客と同じ視点を持っている存在。
この映画の世界と、現実を結ぶ存在に感じました。
ただし、ただのガキの使いではなくて、彼はバイトしながらハリウッドで成功する夢を持ってますから、女の子が使えそう? とわかったら急に受け入れたり(最初は気味悪がってた)
女優から誘惑されたら、きっちり乗るという、やっぱりそっち側に行きたい人です。
ただ、今回の一連の出来事から、彼なら「ハリウッドこえーやってけねーべ」とこっちに戻ってくる可能性もあるな、と思いました。
その辺が、観客の感情にも似ているのではないかと思います。
ある人は受け入れ、ある人は拒絶するでしょうしね。

お気に入りの俳優を出したかっただけの役ではなく、ちゃんと必要な役のように感じました。

子役とその家族に至っては、血のつながった家族ですから切っても切れないかかわりなのですが、その関係が切れているところから始まります。
過去、まだ小さい子役には記憶がなく、「姉の話はタブー」ということだけ知っています。

やけどのことを聞かれた時に、女の子は「プラネタリウムで火災があった時、倉庫に逃げちゃった。私ってばかよね」というような事をいいます。

でも本当は、弟には薬を飲ませ、家に火をつけて、無理心中しようとしていたのでした。

それが18歳になり、未成年ではなくなったので自分の意思でハリウッドに戻ってきた、と。

彼女はいやがる家族に「つぐないたいの」とあたかも、自分の病気が治ったように言い訳をして、近づいてきます。

だけど、結局彼女の目的は弟との心中、しかないのです。

それはなぜか??

それは、両親がそもそも近親相姦者だったのです。(ただ、結果的であって知らなかった、と母親は言っています)

「親の秘密をある時知った。でもそれは子供だったので、兄弟で結婚していいんだ、と解釈になった。いけないことだとは、しらなかった」

今なら、いけない事であり両親の大きな秘密であるとわかってるんでしょうけどね。

父親は、自分の罪をなかったもののようにして、それを知る娘を遠ざけ、何も知らない弟だけをかわいがります。

母親は少し違うようで、それでも娘は娘。
近づければ自分たちの秘密が暴かれるかもしれないし、弟がまた危ない目にあうかもしれない。
築きあげた家庭を壊されたくない一方で、娘が欠けている不完全な家庭にも、負い目を感じてる。
だから、最後、家に入れて話を聞いてしまいます。

そんな母親の弱さは最後、自分で自分に火をつけ焼身自殺となります。

父親はその母を助けられたのでしょうか?(劇中でははっきりとはしてない)
ボー然として、以降正常な生活が送れるのか、本人こそセラピーが必要としか思えない状態になります。

弟は、呪われた血のせいか、どんなに守られていても所詮、呪われた両親だった、というせいか、幻覚のせいで殺人未遂を起こしたり、友達の犬を撃ち殺してしまったり、とついていません。
こうなると、行くところは、同じように壊れた姉の所だけ。
呪われた血の事を知らずとも、自分に流れているのですから、どこかで気づいていたのかもしれません。
自分に危害を加えるかもしれない、という姉なのに、何事もなかったかのように接します。
そして、過去の結婚式を繰り返すのです。
元やけた家の跡で。
その時、スクリーンにはハリウッドサインを模した星のグラフィックが。

これが彼女の言う、プラネタリウムなんですよね。

本当のハリウッドの夜空でもあり、ウォークオブフェームの星でもある。

すべて、スターのいる、ハリウッドで起きたお話し、という事ですよね。


ハリウッドから追い出された、女の子。

これが実はむしろ、一番正常だったんじゃないか、と思います。

見た目は全身やけどを隠す為に、夏でもタイツと長手袋で異様です。
顔にもやけどですから、パっ見異質です。


だけど、セラピーにかよい、高級ブランドを身にまとっても、
他人の前で平気で用を足したり(おといれ><)
人間を人間と扱わずにいれたり、
子供がなくなったというのに喜んで踊ったり、
実の娘をおっぱらったり、
両親は近親相姦がばれたくないならおとなしく暮らしてればいいのに、セレブになりたい
顕示欲まんまんだし。。。
ドライバーだって、女優に頼まれたらどこでもやるんですか?
あんなにきも悪がってたのに、利用できそうと思ったら急に手が出せるんですか?

と、誰一人まともじゃない!!

まして、見た目がまともだから、余計にたちが悪い!!

そんな呪われた血なんだから、と消えていこうとする女の子のほうが、(自殺はだめだけど)
よっぽど正常な思考だと思います。

まあ、実際女の子は、女優も殺しちゃいましたから、やっぱり異常者ではあるんですけどね。

でも、殺されて当然、な流れもあったので、この辺がクローネンバーグならでは、なんだと思います。

結局、スターという名の星の元に集まる人間なんて、どいつもこいつも、ってことなのかな?

クローネンバーグの作品の中でもかなりお気に入りになりました。


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