2015年12月16日水曜日

スルース 【探偵】

2007年作品
監督ケネス・ブラナー
マイケル・ケイン、ジュード・ロウ(ほぼ2人劇)
原作あり。リメイク。

あらすじ:成功した推理作家の家に、その妻の若い愛人が訪ねてくる。
離婚して欲しいという愛人に、「離婚はするが、その為に協力して欲しい」と宝石の保険金詐欺を持ちかけられて・・・。




ケネス・ブラナーって嫌いじゃないです。
独特の世界観ありますよね。

実はこの作品を見た時に、なんの前知識もなかったので、「すごいブラナーっぽいな」と思ったのですが、これ、原作もので、しかも映画としてもリメイクだったんですね。

まあ、(監督が)好きな感じだからリメイクしたんだろうけど。

ただ、リメイクという事も踏まえて改めて考えると、ヒッチ・コックっぽい感じもありますね。

リメイクを見る限りは、映像のスタイリッシュさとかで、ヒッチ・コックにたどり着く事はなかったですが、今では見るのも難しいような古い作品がオリジナルという事を踏まえると、なんだかヒッチ・コックの会話劇のような雰囲気だったのではないのかなーと、想像しちゃいます。
舞台も作家の家だけ、というシンプルさも、それっぽいですよね。

見どころは、いくつかあって、

まず、その舞台の家が、モダンでスタイリッシュでセレブな感じで見応えあります。
生活感のないオサレハウスなのですが、でもそこに住んでいるのは、妻に浮気をされている大御所作家で、まあ、おじいちゃん、なのです。
家はきれいでピカピカですが、その主は老いを感じているはず。
それが何の説明もなしに、浮かび上がるんですよね。

そして、「妻の愛人」だという若者。
若干、ジュード・ロウを若者、と表現してよいのかどうか悩みますが、あくまで作家と比べたら若い、という事で。

まあ、ジュード・ロウは人生のピーク、としましょう。

作家は老いてはいるけど、人生のパイセン的な知的さや成功で勝負。
ジュードロウは、ボンビーだろうし、ぱっとしないけどイケメンや体力で勝負。

それぞれのアピールポイントは同じなわけないです。

そんな二人が張り合うのですから、ちょっと滑稽なんですね。
そもそも勝負として成立してないような。
永遠の引き分けみたいな感じです。

この二人のかけひきが、見どころでもあり、ほぼそれしかない、ともいえる作品なんですけどね。

私は、純粋に、楽しく見れました。

どうなるんだろう、何が起きるんだろう。
と、二人芝居ですがずーっとフックを垂らされていました。

ただ、私は見終わって、「原作あり」という事を知らずに考えていたのは

「これ、愛人とかっていうのもウソなんじゃないか」
「大御所推理小説家に挑戦(ドロボウ)を挑む、詐欺師のお話しなんじゃないのかな?」

というような事でした。

まず、妻の存在ですが、女性がいることはいるのですが、顔は出てきませんし、妻が直接会話することもありません。
あくまで、二人の男性の口から話されるだけの存在です。

だから、「妻の浮気」は事実だろうけど、ジュード・ロウがその相手かどうかはわからない。
と思ってました。
何故、そう思ったかというと、二人の会話バトルの中で「ジュードロウが刑事に化けて小説家をだます」というターンがあるんですね。

ま、映画ならではの変装なのですけど、一般人には出来ないレベルの変装なんです。
作中では、ジュードは「売れない役者」とあるのですが、これも「そういってるだけ」なんじゃないのかな、と思ってました。
「そうです私、詐欺師です」とは言わないだけ、で。

だいたい、「離婚してくれ」の出だしから考えると、「何度も訪ねて会話バトル」する必要性、ないんですよね。

単純に「こいつなかなかカモれなかった。くやしい!」みたいなリベンジ精神を感じたんです。

で、作家もそもそもそれに気づいていて、のっているんじゃないか、と。

大御所とはいえ、おそらくピークは過ぎていて、レジェント化している存在。
印税は入るかもしれないけど、新作はどうでしょう?
もはや、書けないかもしれないし、書いても売れないかもしれません。

そこへ、自分がはつらつと出来る「バトル」を仕掛けてくる若者が現れたら、こんなにうれしいことはないですよね。
ウソでも詐欺でも、ウエルカムで、喜んでバトルを受けるのではないでしょうか?

なんて毎度の妄想が強いですが・・・。

ま、そんな感じであれこれ想像して楽しめる作品なんですよ。

そういう意味でラストは少し、あっけない感じはしました。

何が真実か、というのはすでにどうでもよくて、作品としても別にそれを価値あるものとはしていない気がします。
(妻の存在の曖昧さ、とか)

最後、勝ったり負けたりと、バトルを楽しんでいたのに、作家はジュードを結局殺してしまうんです。
(と思わせて生きてました、はない・・・はず)

そこに、このお話しの最初に感じた「もの悲しさ」をまた感じるんですよね。

せっかくよい遊び相手が出来たのに、負けず嫌いのせいで、圧倒的な勝利を手にしないといられなかった。
結果、また一人に戻ってしまった。

ただ、そこへ妻、と思われる女性が車で屋敷に向かっているシーンもあるんです。

これを、明るい発想で考えると、「おじいちゃんのお留守番 退屈しのぎ編」みたいな感じで、「妻のいない間、退屈しなかったよ」というブラックなオチ。

お話しを素直に受け取ると、「妻の愛人を殺してしまった。妻には正当な離婚の理由が出来てしまうし、殺人犯になる」というなんだかとってもつまらないオチ。

原作も知りませんし、オリジナルの映画も見てませんので、すっとんきょうな事を書いてるかもしれませんね(汗

でも、あれこれ考える事が楽しい作品であることには違いません。

見応えありました!

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