2016年1月20日水曜日

神経衰弱ぎりぎりの女たち


1988年作品
監督ペドロ・アルモドバル
カルメン・マウラ、フェルナンド・ギリェン、アントニオ・バンデラス、フリエタ・セラーノ、ロシー・デ・パルマ

あらすじ:同棲していたカップルだが、男から別れを告げられる。
ところが、彼女は妊娠しており、それを告げようと、別れた彼を探す事に。

きっと、元カノと元さやになったのではないか、と元カノを訪ねると、元カノは元カノで未だ彼への愛情が冷めずに、彼女をうらんでいた。

ということは、誰が新しい彼女なのか?

そこへ、彼の息子とそのカップル、テロリストとつきあってしまい警察におびえる女友達、などが入り混じったドタバタ・ペドロ流コメディ。




多分、本作が初ペドロ・アルモドバル作品だったような気がします。

コメディという紹介と、カラフルなスクショに誘われて、興味を持った記憶があります。

ところが見てみると、いわゆる「コメディ」という言葉で想像するような、単純な笑いではなくって、だけど決してがっかりするのではなく、「こんなドラマがあるのか」と私にとっては、すごく新鮮でショッキングな出会いでした。

当時、外国といえばアメリカとフランスだけではない、という新しい文化を知ったような感覚もありました。

改めて考えてみると、80年代最後の作品なのですが、確かに80年代に精力的にいろんなことをやって、最終的に今現在の世界的な活躍に通じるような「洗練された感」がこの作品にはありますね。

もちろん、この作品の当時だって、ネットのない時代に、私がファッション誌で知るくらいですから、すでに成功はされていた方ですが。

映像的に過激な表現がなくても、十分ストーリーで魅せられるという事を証明しているような感じもしますね。

こうして改めてペドロ作品の事を考えてみると、つくづくテーマにブレがないんだな、という事がわかってくるのも、すごいな、と思っています。

本作も、たとえば80年代だけの作品で比べたら、ちょっと異質な気もします。

だけど、全体を見ると、まったく違和感はないんですよね。

すべての作品が、時代や年齢の影響を感じざるを得ませんが、まぎれもなく一人の人が撮った、と思えるような統一感があると思います。

それはやっぱり男性の監督でありながら、常に大きく存在している「女性」の扱いに感じます。

本作は、タイトルにも「女たち」とあるくらいですから、大小あれどいろんな事情を抱えた女性が登場します。
そして、「女性はいかなる時にも強い」というメッセージにもなっているような気がします。

「神経衰弱ぎりぎりの女たち」というのは原題のほぼ直訳らしいです。
それを前提にしても、「だから弱くて可哀想なんだよ」という事ではなくて、「それでも生きているんだからすごい!」という、やっぱり女性賛歌なような。

実際、このお話しは、「別れた彼の子供を身ごもっていることを、一度は彼に言おうとして、ドタバタの末、彼を見つけ出すが、そこまで行ったにもかかわらず、何も言わずに終わらせる」という落ちになっています。

揺れてこそ、女だし、揺れた末にやっぱり逃げていく男なんていらないわ、と気持ちを切り替える、なんて、超強い女性だと思います。

女性が安定していないという事を肯定した上で、さらにそれでもその波とつきあって生きていく女性をリスペクトしているような。

女性以上に女性の事を理解しているようなw

そして、だからこそ、作品としてはちょっと美化も入った終わり方になっているんでしょうね。

すべての女性がこう強くあって欲しい、とうような。


と、いうようなテーマに関しては正直、今だからこそ思う事ではあります。

見た当時はもちろん、そんなことまで考えが及ぶはずもなくw

それでも、凝ったストーリー、登場人物のつながりなどが純粋に楽しかったです。
おそらく、当時はそういった作品にまだそれ程であっていなかったというのもあったとは思います。

それと、ところどころにあるユーモアも。

若いカップルである、バンデラスが彼女連れなのにあっさり別の女性に一目ぼれして浮気してしまうエピソードは特に印象深いです。

これがラテンスタイルなのか、それともそれを笑いにしているのか、よくわかりませんが、いずれにせよ私にはコメディとして十分でした。

また、予算もどんどん充実していったんでしょうかね。

セットなども見応えがあって、過去の作品とはまた一味違う、ペドロ・スタイルの始まりになっているような気がします。

ある意味、初期作品と現在の作品をつなぐ架け橋的な作品かもしれませんね。

やや子供っぽいノリが強かった本作以前の作品と比べると、かなり大人になった感じがあります。

また見たい気もしますが、自分が大人になった分、ちょっと見るのが怖くもありますw

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