2016年2月10日水曜日

クラッシュ(デヴィッド・クローネンバーグ)



1996年作品
監督デヴィッド・クローネンバーグ
ジェームズ・スペイダー、ホリー・ハンター、イライアス・コティーズ、ロザンナ・アークエット
原作あり

あらすじ:倦怠気味の夫婦。ある日夫が事故を起こしてしまう。
病院で出会ったのは、その事故の相手で、自分は負傷したが、未亡人となった女性とつきそいの男。
何故か、夫が死んだにも関わらず冷静な女性。

それもそのはず、その自動車事故は望まれた事故だったのだから・・・。




この映画を見た時、なんか「キタ!」という感じがありました。

大きな括りでは、「戦慄の絆」のラインかな、と思います。

1つのテーマにぎゅっとフォーカスを当てています。
そのテーマが、誰も取り上げないようなもの。
しかも、決してポルノではありません。

自動車事故に萌えるフェチの集まり。「クラッシュ・マニアの会」。
もともとは小説だそうですが、その小説もすごいですけど、それに目をつけて映像化しようと思って、やり遂げてしまうのは、さすがですね。
お目が高い。

かといって、何かすごいメッセージがあるわけでもなく。

まさに、誰にでも撮れるものではなく、クローネンバーグならでは、と言えるのではないかな、と思います。

私にとって、ジェームス・スペーダーといえば、この作品でしたが、今ではすっかり海外ドラマの「ブラックリスト」が代表作になっています。
年をとって、すごく格好いいです。
そしてダークヒーローが似合う。

それは、本作ともさほど遠くかけ離れてはいないイメージだと思います。

実は、そのせいでジェームス・スペーダーといえばなぜか悪役のイメージを持っていて、「なるべくしてなったブラックリスト」と思っていたのですが、改めてwikiを見てみると、私はほとんど彼の作品を見ていないのでしたw

余程、本作の印象が強かったようです。

あとこの作品で、印象が強いのはロザンナ・アークエットですね。
メジャー作から、本作のような偏った作品まで、あちこちで活躍されていて、この人が出てくると作品のグレードが上がるような印象があります。

ドラマなんかでも見かけると、うれしくなりますね。
姉妹合わせてですが、人間が好かれているのかな~と、思えるような幅広い活躍を長年されていると思います。

なので、この人はちょっと得があって、「この人があんな役を」というインパクトが与えられる。

そして、この映画で思い出すのが、写真家ヘルムート・ニュートンがヴォーグか何かで当時のスーパーモデル、ナジャ・アウマン(足の長さで有名)を撮影したファッション・ページ。

まさに、この映画さながらの、ギブスや松葉つえを小道具としている一連の作品なのでした。

ニュートンは、ファッションフォトでしか知りませんが、当時のスーパーモデルブームと相性が良く、彼女たちの人間離れしたスーパーなボディを、まるで一つの大きなオブジェのように映し出すというイメージがあります。

なので、オブジェの延長線上に器具が加わるのは、自然だったんでしょうかね。
皮膚感というよりは、モノ感が強く、ある意味洋服を魅せる写真として、演出が過剰かもしれませんし、素材感を引き立てるには、ぴったりだった、とも言える、アンビバレスな魅力がありました。

そういえば、少し前ですが、レディー・ガガが関節の手術をした際に、特注の車椅子でさっそうと登場したのが話題になっていましたが、あの車椅子を見た時にも本作を思い出しました。

まあ、今となっては少しは? 大人になって「この作品が好き!」と大声では言いにくいなぁ、と思っていますw

そして、怪我や事故そのものに私自身が萌える、という事はなくって、どっちかというと車という機械と人間、そして人間同士の信頼感に、通常の恋愛ストーリーでは描く事のできない、破滅的ではあるけど、愛情がある、という事が、すごいなぁ、と思うのです。

「君のためなら死ねる!」

そのものですから。


でも、人間死んだらおしまいなんです。

だから、これは映画という作品に相応しい。

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