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イースタン・プロミス DVD
2007年作品
監督デヴィッド・クローネンバーグ
ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ、ヴァンサン・カッセル
あらすじ:ある病院に1人の少女が運び込まれた事から、普通なら知りえないロシアン・マフィアと接触する事になる女性。
そこで暴力が支配する世界を垣間見るが・・・。
暴力ドラマシリーズ? としては、こちらのほうが好きです。
前作「ヒストリー・オブ・バイオレンス」は、暴力を封じて、平凡な男になりすます事で、暴力を呼び込んでしまう物語。
本作は、一応まっとうな人間でありながらも、マフィアに成りすまして暴力の中で生きる事を選んだ男の物語。
同じ暴力をテーマとしていても、趣が違います。
どっちが良し悪しではなく、まるっきり好みの世界ですね。
そして、両作品とも同じ俳優ヴィゴ・モーテンセンが演じている、というのが面白いです。
この映画は、なんといってもTATOOだらけのサウナシーンが有名なのではないでしょうかね。
私も、なんだかんだあのシーンのおかげで印象深い作品となっているのは確かです。
でも、いわゆるクローネンバーグ監督の虫っぽいビジュアル系の作品ではない、完全ドラマ作品なので、映像的には、テーマにしてみれば普通だと思います。
むしろ、様式美って言う感じですかね。
マフィアといえば、理髪店とかw
TATOOに、バカ息子、組織などなど・・・。
この手の裏社会ものというのは、映画の世界ではまったく珍しくはありませんし、マフィアをテーマにする作品は、ある意味男の人のファンタジーだと思うので、現実では決して受け入れがたい分、普遍的だと思います。
でも、クローネンバーグ作品という事で、深読みしてしまいたくなるのです。
ただ、怖いマフィアなのに、出会ったらいい人みたい。
それもそのはず、潜入捜査中だった。
その人のおかげで、一般女性の望みは叶えられた。(赤ん坊を無事保護できた)
その女性がこれから、一般的な生活を送ると同時に、
その男はこれからもマフィアに潜伏し続ける・・・。
一見、良いお話しのようにも思えます。
でも、そんな普通の話をクローネンバーグが描くかなぁ・・・、と。
なんとなくですが、やっぱり暴力に魅入られた男の話なのではないかな、と思います。
そもそも(あくまで映画の中の存在として)警察って、大義名分で暴力行為ができますよね。
でも、暴力というものについて、正義も悪もない、という事が考えられるお話しだったと思うんです。
本当に、嫌な人はまず暴力に関する仕事につかないし、潜入捜査とはいえ、そういった環境で生きていく事はできないはずです。
ミイラ取りがミイラ、じゃないですけど、その境界はあるようでなくて、あくまでも立場の違いなだけで、暴力に魅入られれば魅入られるほど、ダークサイド寄りになる可能性が高い。
だけど、実はその方が分かりやすくて、むしろダークサイドの人間です、というサインがTATOOなので、親切なシステムになっています。
普通は、そのサインを見たらあえて近寄る事はしないでしょうから。
この主人公も見た目にはTATOOを入れて、あたかも同じようなマフィアである事を主張していますが、むしろタチが悪いのは「俺は仕事で暴力してるだけだから」と、いさとなれば自分を正当化できるところです。
内側から崩すという、使命はあったとしても、崩し終わった後の事は考えていないんじゃないでしょうか。
このまま、マフィアの世界に居続けるような気がします。
そして、そうでもしないと彼自身が崩れてしまうような気がするんですよね。
それと、周囲をずっと騙している事。
マフィアの世界というのは、本作でも「仲間として認めるからTATOOを入れる」と一見、良さそうな事を言われますが、それは息子の代わりに標的になる目印をいれられていたのですから、騙し合いが日常だと考えられます。
なので、潜入捜査できるという面は、むしろマフィアとしての素質でもある。
すぐ顔に出たり、ウソがばれたりするような人間はマフィアとしても、出世できない。
ということは、あえて、真実を打ち明ける必要なんてなくて、むしろウソのまま生きている事のほうが、本質に近く、居心地が良いんじゃないか、と。
さらに、深く考えてみると、目的を達成した後は、さらっとマフィアを捨てて、「俺正義だし」とネタばらしする可能性もありますね。
それこそ鉄のハートというか、例えばなついているバカ息子の事とか、やる事終わったら用無しだ、とぽいっと出来る感じ。
というか、そんな選択をする余裕が感じられるのが、やっぱり悪人ちっくだなーと思えるんですね。
よほど、バカ息子のほうが人間ぽくって、たまたまマフィアの家に生まれただけで、それが一軒違っていたら、まったくマフィアなんて無縁な人間だったのではないか、と思えます。
なので、前作「ヒストリー・オブ・バイオレンス」では暴力と血の因果関係も描かれていたと思いますが、本作は、そういう意味では「血」よりも「その人間の性質」というような、少しまた違ったニュアンスが入っているような気がします。
ただ、マフィアのドンの血を引く赤ちゃんを引き取って育てる先には・・・。
何があるのかは、わかりませんよね。
タイトルの意味は、「人身売買」で、それは主に女性を対象としたもの、という事ですが、むしろこの主人公こそ、あえてそんな運命に身をゆだねているようにも思えますね。
でも、誰かに管理されているのではなく、自らを売り物として生きているような。
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