2016年2月16日火曜日

建築家の腹


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1987年作品
監督ピーター・グリーナウェイ
ブライアン・デネヒー、クロエ・ウェブ、ランベール・ウィルソン、ヴァンニ・コルベリーニ

あらすじ:身体の不調は精神の不調なのか、それとも、精神が不安定だから身体も不安になるのか。
腹痛とともに、多忙による妻の浮気が気になる建築家。
やがて腹にとりつかれていく・・・。




グリーナウェイがイギリス人だとは思ってもいなかった原因にこの作品もありました。

舞台はイタリアですし、建築家といえば、イタリアの有名デザイナー、ジャン・フランコ・フェレが建築家の資格を持っていた、という事から、この映画の作品の主人公と少し被ったりもして、イタリアかなーっていう、イメージがついていたんですね。

実際はこの作品も、イタリアが舞台ではありますが、列車に乗ってローマにやってきたアメリカ人でした。

「ZOO」の次の作品という事で、正直おこちゃまには、大人のドラマ過ぎでした。

なので、最初に見た時の感想は、「なんかいまいち~」って感じでした。

ローマの景色や映像としては見応えありますが、「ZOO」の動物などの生物がたくさん出てくるポップさから、石中心の本作は大分渋くなっていますから。

ただ、改めてこうして考えてみると、グリーナウェイというのは映像だけではなく、作品の物語としてのテーマにもかなりこだわっているんだな、と気づきました。

自分であらすじを書いてみてわかったのですが、この映画のテーマはthe Smithsの「Still Ill」の

Does the body rule the mind
or does the mind rule the body?

と同じなんですね。

the Smithsは、私の中のいわゆる厨二時代って感じで、今でも好きで聞いていますが、当時はどんなこと歌ってるんだろうって気になって、歌詞集みたいなのを買ったりしてました。
で、この歌詞はもちろん曲が大好きで、自分なりに直訳してみたりして、まあだいたいがわからないから途中で放り投げるんですけど、この部分だけはちょっと衝撃的だったので、すごく覚えているんです。

自分の解釈ですが、「精神が肉体を支配しているのか、肉体が精神を支配しているのか?」。

こんな事を考えるのか、と驚きそして、「ほんとにどっちだろう?」と以来ずーっと、答えのない問いを持ち続けています。

ちなみにこの曲は1983年には存在していたようですが、私が知ったのはレコードになってからなので、多分84年とかじゃないでしょうかね。

という訳で、映画を見る時点で知っていましたが、それと本作の共通点なんて、まったく気づくわけないですね~。

そして、同時に「ZOO」にあった「カタツムリ」のぐるぐる、にも共通するんですね。

精神と肉体の関係というのも、どちらがどっちというものではなくて、実際は、メビウスの輪ですよね。

気分が悪い、と言ってると本当に具合が悪くなる事もあれば、体調が悪いことから、気が弱くなったりもします。

だけど、気をしっかり持っていれば、具合の悪いのが治まる時もあるし、気にしなければ痛みを忘れる事もあります。

お腹が痛いのと妻の浮気は、それだけを並べると何も関係ないように思えますが、本作はシンボルである「腹」を使って、精神と肉体の関係を描いているのと同時に、ZOOと同様に生と死のメビウス構造にもなっているんですね。

お腹は人間の赤ちゃんが生まれ、育つ場所ですよね。

本作のラストは、奥さんが出産すると、いろいろあって一人になった建築家が自殺をします。

ちょっと、ラストはペドロ・アルモドバルが得意な感じですかね?w

生と死はつながっているような。

そして人間のお腹というのは、誰もが柔らかいイメージを持つのではないでしょうか。
特に恰幅の良い、建築家の腹というのは、ぽわん、としたイメージが容易いです。

だけど、この建築家の周囲にとりまくのは、固く冷たい石像の腹ばかり。
(建築の一部として)

痛みのあるお腹と、一見冷たく永遠のように思える石像ですが、画面の中では、腹だけのパーツが残っている石像の破片があったりして、「永遠」なんてそのものが、ないんだ、というようなイメージもうかがえます。

やっぱり、「ZOO」同様。

精神と肉体どっちがどうとか、難しい事考えても、答えなんてないんだから、生を楽しもうYO!

って思える映画なんですね。


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