2016年2月8日月曜日

戦慄の絆


DVD
戦慄の絆

1988年作品
監督デヴィッド・クローネンバーグ
ジェレミー・アイアンズ、ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド

あらすじ:実際にあった双子の産婦人科殺人事件をベースにした小説が元になっている、とのこと。

一卵性双生児の不妊治療医の元に、1人の患者が訪れた事から、二人の均衡が崩れていく。
派手好きな兄と、地味な弟。
兄は、遊びで女優と寝るが、弟は女優に兄のふりをして近づき、本気で愛するように。
初めての単独行動とも言えたが、それは決して自立への道ではなく、破滅への道だった・・・。




クローネンバーグ作品の中で、一番好き、と言える作品です。

とはいえ、繰り返し見るには、今ではもう大分気弱になってきているので、思い出の中の作品ではあります。

これも良く覚えているのですが、劇場で見て、最初は双子が「クローネンバーグ本人かな?」と思えたんです。
見ながらずっとそのことが気になって、「だとしたらやっぱりすごい人だな」って思っていましたw

もちろん、違うんですけどね。

かなり偏った題材から本人が演じるには、ちょうどよいのではないか、とちょっと希望も混ざって見ていたのかもしれません。

感想を書き残す事にして、つくづく露わになるのが、しょせんアホの子の「かっこいい」「萌えたわー」みたいな感想しかないのですが、本作もぶっちゃけ、そうです。

アホを隠そうとか、おりこうさんに見せようだなんて思っていないので、いいっちゃいいんですけど、いかにもいろんな人があれこれ議論をするような作品に対して、「昭和の少女まんがの世界でした~」等で済ませるのは、ひょっとしたら失礼にあたるかも・・・と、今更びびっていますw

でも、まあ、一個人の感想ですからね。
こういう感想もあるんだ、という感じで、穏便にお願いできましたら、ありがたいです。


というわけで、双子、医師、器具、そして赤というビジュアルなどなど、いかにも王道なフェチ要素満載の本作。
だけど、これが実際の事件がベースになっているとは、知りませんでした。
まさに、考えられた設定のようなのに、事実は小説より・・・、そのものですね。

もちろん、そんな事件に注目する監督は、やっぱりヘンだと思いますが。

双子をテーマにしたストーリーとしても、王道で、フェチ度は高いですが、そういう意味では、まとまりが良いと思います。

兄が光であれば弟は影、というような双子が、ある時、影が光に成りすまし、一人歩きをしようとする。

それは、ただ兄への反抗心というのではなくて、1人の人間としてのありきたりな欲求だったとは思います。
だからこそ、ついふらふら、と歩き出してしまった。

だけど、そこで初めて女性を愛し、兄の代わりのように依存をしてしまう事で、破滅に向かいます。

今度は女性で満たされない想いを薬に依存しだすんですね。

そして、どんどん妄想と現実の境目が曖昧になっていく。

で、これは弟だけの話ではなくて、弟を失った兄までもが同じ道をたどります。
とくに兄の堕落はすごくコントラストがあって、それまで光を浴びていた人が急に、陰るのですから、どれだけダメージを受けたか、という事がわかります。

結局、二人は鏡のように、映しあい、離れられないんですね。

この作品より少し前、1985年にピーター・グリナウェイの「ZOO」がありました。


ピーター・グリーナウェイ ZOO Blu-ray Disc

「ZOO」も双子と一人の女性を巡る物語でしたが、共存するんですよね。

こちらは、そういった試みは一切出ず、まるで異物を拒むかのように、最後は二人きりで閉じていく。

比べるのは意味がないですが、こちらのほうが「いっちゃってる!(コロチキ)」って感じですw


存在しながら、破滅にしか迎えないという、とても切ない兄弟。

ストーリーとして、最後に破滅で終るのって、あまり好きではないのですが、現実には多いんですよね。

起承転結のせいなんでしょうかね。
大人だから、かな?

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