2016年3月2日水曜日
ホーリー・マウンテン
ホーリー・マウンテン HDリマスター版/アレハンドロ・ホドロフスキー[DVD]
1973年作品
監督アレハンドロ・ホドロフスキー
あらすじ:不老不死の秘密を手に入れる為、賢者を訪ねてホーリー・マウンテンを目指す9人の男女。
欲にまみれ、権力も手に入れた先に求めるのは永遠の命。
その為に、全員が賢者になるべくすべてを捨てて山を目指すが、その頂上で見たものは!?
これも、73年という古さにびっくりしました。
印象的にはちゃんと「エル・トポ」の次の作品、だったのですけど、どういう経緯で初見したのか、覚えていません。
ただ、当時は「エル・トポ」よりも好きかも、と思っていました。
でも、それから改めて見てみると、「エル・トポ」のわかりやすさと比べると、断然わかりにくいので、今となっては、「なぜこれをエル・トポより面白いと思ったんだろう」と、若い自分に聞きたいです。
ざっくり感じたのは、「ファンドとリス」のセルフ・リメイク的な感じです。
より旅の目的をわかりやすく具体的にした、という意味で。
なのですが、「エル・トポ」のわかりやすいドラマ性がないんですね。
特に、序盤、主人公・・・といってよいのかどうかわかりませんが、一人の男が錬金術師(ホドロフスキー)に出会うまでは、たしかセリフはなかったと思います。
それもあって、見ていて理解するのが困難なのです。
というか、そもそもセリフがあったからといって、理解できるものかどうかもわからない位、シュールの連発なんですけどね。
シュール具合が、「エル・トポ」の比じゃないんですよね。
そういう意味でも「ファンドとリス」のグループって感じがしました。
【7人の権力者】
錬金術師に「金(ゴールド)が欲しいのか」と聞かれ「うんうん」というと、錬金術を覚えるよう弟子になるのですが、それには、1人では無理で、しかも惑星でもっとも権力があるものと組め、と言われます。
それが、各惑星に属する7人の男女。
この1人1人の紹介は、各キャラクターの濃さはもちろん、ここから何が始まるんだろう、というワクワク感があります。
今思えば「ホドロフスキー的ヒーローズ」って感じで、特にたっぷりと濃い紹介の後に、ヘリコプターで全員が揃って登場した時には、「きたーーー!」って感じで盛り上がりました。
正直、7人のオムニバス未満な紹介では、尻切れトンボ的な部分もあって、ここから!! って期待をしてしまうんです。
1、金星 三重苦の父とミイラになった母を持つイケメン枠。
工場には女性しかいなくて、全員が嫁状態。
人は見た目に左右される、という事からとっても最先端なお面を作っている。
ほぼ整形と同じ感じ。
2、火星
薬や銃を扱っている女性。
しかも、銃とロンドンブーツが合体とか、サイケなショットガンに、手りゅう弾のネックレス。
ロックな銃。
などなど、お得意のおしゃれな一面も。
女性ならではの武器の扱いです。
3、木星
愛人を連れた芸術家。
ほぼシュルレアリストな感じ。
ラブマシーンという、機械的な作品も。
この機械、ミニクローンな機械の子供まで生んでました。
4、土星
ピエロとおもちゃ工場長の二つの顔を持つ女性。
ピエロでは子供を楽しませていたので、その延長でおもちゃ工場か、と思いきや、そこは子供たちを将来戦争に駆り立てる為の仕込みをしている。
5、天王星
大統領の財政顧問だというオカマちっくななよなよ君。
何故か、結構な熟女? 母親?? と一緒にいます。
大統領には財政難ということで、口減らしを進めます。
6、海王星
体育会系のドS警視総監。
肉体の一部を俺にささげろ、とわけのわからないパワハラをし続けて、記念すべき1000個目の肉体が揃いました。
7、冥王星
建築家男。
普通の家を作ってて、ふと「違う」と思って提案したのが
「シェルター」という名の棺桶。
家や家庭のない街を目指す。
って、この設定だけでお腹いっぱいなんですよ。
それぞれがそれぞれの手法で、強欲というか、権力の使い方、ちょっと間違ってませんか? みたいな。
【始まると思ったら終わりだった】
ところが、そこそこ時間をかけて7人を紹介してきたというのに、全員集合したところで、この7人の設定を捨て去る事になるのです。
こいつらのダークパワーを借りて、錬金術をやるのかと思いきや、むしろ「すべてを捨てろ!」と。
何のための権力者集合だったのだろう・・・。
7人は、ふらりとたどり着いた主人公? と何ら差はなく一緒に修行をするんですよね。
この辺も、見ながらにして「あれ? あれれ?」とついていけているのかどうかわからなくなるのでした。
ともかく、今まで稼いだお金や自分達の人形を燃やして、手に入れようとしたものは「不老不死」でした。
ホーリーマウンテンにいる賢者に近づくべく、賢者になる。
その為に、全員丸坊主になり、お揃いのトレーニングウエアみたいな格好になります。
またこれが、誰が誰だかわからない状態になるので、あの1人1人のエピソードはなんだったんだろう・・・?
まさに「無意味」って思えるのですよね~。
それと7人って多くない? みたいな。
まあ、これは何か意味があるのかもしれませんが。
ちなみに、実際旅するのは、7人+錬金術師とおつきの人で9人というなかなかの集団です。
【やっぱりホドロフスキー的RPG】
ホーリーマウンテンを目指すのですから、まさにここからは毎度のRPG色が色濃くなります。
というか、そのものです。
賢者に転職しますし。
でも、PT全員賢者。
まあ、ドラクエでも賢者は回復も攻撃も出来ますから、不自然ではないですね。
船に乗って海を渡り、たどり着くとそこは、結構な観光地状態。超にぎわっています。
ホドロフスキー的お茶目なのか、それとも「山のふもとの誘惑」なのか。
私は普通に笑っちゃいました。
でも一行は、ちゃんと登山をします。
その途中、死のイメージなのかな?
それぞれの悪夢、恐ろしい回想? が続きますが、それに耐えて頂上にたどり着くんです。
登山=試練、って感じ。
【シックスセンスもびっくりな落ち?】
そして、賛否両論ありそうな落ちが待ち構えているのですが、実はこの落ちそのものは、長い間覚えていませんでした。
個人的には、そんなに印象強くなかったんですね。
真面目に登山した結果、山頂には賢者のテーブルが見えたのですが、それは人形で・・・。
錬金術師(監督)がいいます。
「これは映画だ」
そして、カメラが引くと撮影クルーなどの様子も映し出されるのです。
で、おしまい。
これが言いたいが為にかなり引っ張りましたね~。
私だったら「あるある早く言いたい」的な感じで、我慢できないと思います。
この辺は、監督の茶目っ気も感じられて、驚きとかショックではなく、「うふふ」みたいな感じで軽く受け止めているのですが、それはもしかしたら私の中で「7人の権力者紹介」が一番のピークで、すでに物語に期待をしていなかったから、なのかもしれません。
【ホドロフスキーあるある】
男同士のダンス(しかも1人はガスマスクの兵士)
みにくい裸体
大道芸の次はサーカス団(ヒキガエルだけど)
品のないセレブ(リムジンから射殺を見学等)
コミカルシーン(セレブにカメラのシャッター押し頼まれる主人公)
シュールの連発(自分で型をとった等身大の人形に囲まれる主人公。少女に義眼をくりぬいて渡す老人、等々)
オール・ホワイト・コーデとオール・ブラック・コーデ(錬金術師)
などなど、今回はシュールがとにかくえげつないですが、毎度おなじみの要素も健在ではあります。
あと、あまり文字にするのを避けてしまうのですが、えげつないシーンもエル・トポより増量していると思われますので、気になる方はご注意を。
【かんそう】
これは、錬金術師の最大の錬金術だったのかなー、と今になって思います。
7人の権力者の紹介に熱が入っていたのは、それぞれがどれだけ俗悪な存在か、さらに権力持ってるからややこしいか、という事を伝える為。
でも、彼らはそれを捨て去り、そして旅に出ますが、最後は何も手に入れる事はありません。
そう、捨て損なのです。
でもそれは、ある意味邪悪な存在の彼らを平和的にひとまとめに片づけた=世界が少し平和になっているはず、なんです。
ホドロフスキー監督がそこまで意図しているのかどうかは知りませんが、私はそう自分の中で落としどころを見つけられました。
だって、これは映画、ですからねw
山を下りた彼らがどうなったのかというと、物語なんて存在しませんから、何も起きないのです。
ただ、それぞれの生活に戻るだけ。
物語で考えれば、「元の仕事に戻ったのかな」とか「このまま世捨て人のようになったのかな」とか「ホーリーマウンテンのふもとの住民になったのかな」なんて、考えちゃいますけどね。
そんなものはどーでもいいって、事なんでしょうね。
この、自虐ギャグみたいな事が出来るのも、憎めない所なのかな、と思います。
そして「どーでもいい」んだったら、好きに考えるのもいいよね、って事で、見てる方も気楽になれるので、やっぱり憎めない人なんだなーって感じました。
人を寄せ付けないのではなく、人懐っこさが感じられるのが、カルトと言われる中でも、残り続ける魅力になっているんでしょうね。
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