1973年作品
監督ロバート・アルトマン
原作有り
あらすじ:ある探偵の元に、夜中に突然悪友が訪ねてくる。
メキシコへ行くのに送って欲しいと頼まれる。
友人という事であまり詮索せずに、言われた通りにするが、翌朝警察が探偵を待っていた。
その友人は妻殺しの容疑がかけられていたのだった・・・。
70年代のアメリカのおしゃれ感が詰まっていました。
いわゆるハードボイルドってやつなんでしょうかね。
一見ちゃらんぽらんに見え、大して仕事しなさそうな探偵ですが、実は飼い猫を愛し、夜中の3時に猫の餌を買うためにスーパーに行くような優しさがあり、隣のちゃらちゃらした女にも近寄らず、でも適度に近所付き合いをする。
友人の事は大事にし、実は仕事も出来る。
ネクタイの乱れを気にするスタイルへのこだわりもあり、女性には優しい。
「ロング・グッドバイ」というタイトルにある曲が作中で良くかかっているのですが、他にもムーディーな音楽が多く使われていて、とにかくおしゃれでした。
【おはなし】
私立探偵フィリップ・マーロウは、妻殺害容疑のかかった友人をかばって、取り調べを受けていたが、しばらくすると釈放される。
その理由は、容疑者である友人が自殺を図った事で事件が解決したから。
だが、その直前に顔を合わせていた事もあり、妻殺しをしたとは思えず、独自で調べる事に。
ちょうど、友人が住む住宅地から仕事の依頼があった事を利用した。
ある小説家の妻が、夫が失踪したから探して欲しいという依頼だった。
だが、友人夫妻の事を聞いても、あまり親しくはないというような感じだったが、それは嘘だった。
妻いわく、夫は殺された女性と浮気をしていて、暴力癖がある事から殺してしまったのではないか、と探偵にささやく。
同時に、チンピラからはその友人が金を横領していたと聞かされ、金を取り返せと付きまとわれるように。なんならグルなんじゃないかと疑りをかけられるが、実際、死んだはずの友人から5000ドル札が送られてくる。
偶然、その5000ドル札をチンピラに見られてしまい、「これは俺の金だ」と騒ぎになるが、途中で「金が戻ってきた」事で、探偵への疑いは晴れ解放される。
死んだとみせかけて生きている友人の居場所をつきとめた探偵は、自分が友人に利用されたことを知り、そして妻殺しは友人のしたことである事を確信すると、友人を殺す。
そして、帰り道、夫を容疑者にみせかけた小説家の妻とすれ違う。
友人は、小説家の妻と不倫していて、新たな人生を歩もうと企てていたのだった。
【見どころ】
冒頭、猫と探偵のシーンが結構長くあるのですが、こここそ、この探偵の人となりが自然に伝わってくるシーンですし、とにかく猫の演技? がすごくて、いきなり引き込まれました。
夜中にお腹を空かせて鳴くんですけど、お気に入りの猫缶が切れてしまって、探偵はお手製のごはんをつくります。
でも、ずーっと側で鳴いていたにもかかわらず、猫は食べないんです。
お気に入りのごはんじゃないから。
で、探偵は猫相手にずっと1人でしゃべっているのですが、この猫を上辺ではなく心底愛しているという一面などから、悪い人じゃないという本質が見えてきて、自然に探偵に興味が沸きます。
そして、しかたなくスーパーに猫缶を買いに行きますが、お気に入りのブランドが品切れで、店員に尋ねるも「なんでもいっしょだろ。お前猫かよ、おれは恋人と住んでるから」とボロくそに言われます。
それでもキレることなく、適当にやり過ごす冷静さ。
何より、常に咥えタバコなのですが、スーパーの入り口で壁でマッチをつける仕草が、芝居がかっていてカッコいい。
こういう格好良さがアリな雰囲気。
さらに、猫にばれないように缶を詰替えて、あたかも今買って来たよ、とお皿に移して出しますが、猫はちゃんと食べませんw
次に、女性陣のファッション。特に、小説家の妻はセレブ妻という事で、年齢こそ若くはないですけど、ファッションは素敵でした。
カジュアルな小花柄のコットンドレスから、おおきなフリルになっている白いコットン・ドレス等が特に印象的でした。
探偵の住居は、アーティストが住むようなおしゃれアパートで、アメリカの一番おしゃれな時代だったのかなーって思える感じでした。
セレブ住宅も、素敵ですけど。
いろんなインテリア、風景、建物、そこにいる人物の何気ないファッション。
何かすべて、おしゃれに見えました。
【まとめ】
探偵が主役で、事件に巻き込まれ、事件を追うという探偵小説が原作なのかもしれませんが、あまりその事件色は濃くない気がしました。
というか、そういう物として見るよりは、探偵のキャラクターであったり、おしゃれな雰囲気を楽しんだほうが、幸せな感じがしました。
ハードボイルドという言葉と、実はかけ離れているようで、そうでもないのかな、と思ったのが「脱力系」という言葉でした。
私はハードボイルドに馴染みがないせいか、見ていて思い浮かんだのは「脱力」という言葉でした。
探偵の雰囲気とか、キャラクターとか、全体の雰囲気とか。
あくまで狙っているというよりは、時代のムードでもあったんでしょうね。
だらだらなまけている、というよりは肩に力が入ってない、ある意味自然体というニュアンスです。
なんかこういう時代を生きてみたいなーと思いました。
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